私たちの身の回りには読めそうで読めない漢字や、聞いたことはあっても書き方や使いどころのわからない言葉で溢れています。連載「言葉の森」では、日々言葉について思考を巡らせている書画家・夏生嵐彩が、“言葉の森”の探険途中で見つけた面白い要素をピックアップ。一緒に日本語の新しい側面を発見しながら、言葉の森を探険してみましょう。
十二支の漢字はなぜ難しい字が使われる?
12月も半ばを過ぎて慌ただしくなってきましたね。この時期になると年賀状の準備をしていて「来年の干支(えと)ってなんだっけ?」となる方も多いはず。ところで、十二支の動物は、いつも書いている動物の漢字と全く違っていてややこしいですよね? そこで今回はなぜあのような難しい字が使われているのか、漢字の由来や十二支の意味についてご紹介します。
後半には来年の干支の「丑(うし)」を、水墨画で簡単に描ける方法を紹介するので、いつもと違った年賀状を作りたい人はぜひ参考にしてくださいね。
干支の由来
干支(かんし えと)とは古代の中国で考えられた、暦や方角を表す方法です。
10の干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)と12の支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)を合わせた十干・十二支のことを干支といいます。
十干の甲乙・・・って契約書でしか見たことないですよね。これには訓読みがそれぞれにあって、たとえば「甲=きのえ」「乙=きのと」などと読みます。
毎年恵方巻きの時に「今年は【きのえね】の年なので〇〇の方向を見て食べましょう」とか聞いたことありますよね! この読み方は十干を陰陽五行説に基づいて振り分けられた訓読みで、「え」=兄(陽)、「と」=弟(隠)をあらわします。「えと」という読みはここから来ているのですね。
それぞれを一覧にするとこうなります。
今年大流行した『鬼滅の刃』で鬼殺隊たちの階級が手の甲に記されている描写がありますが、それはこの十干がもとになっています。鬼殺隊になったばかりの炭治郎は一番下の階級「癸(みずのと)」ですが、強くなるにしたがって庚(かのえ)、丙(ひのえ)・・・と上がっています。
ちなみに実際の五行説ではそれぞれが階級になっていることはなく、相関関係に円相がなされているので、自分の生まれ年が癸(みずのと)でもがっかりしないでくださいね!
十二支とは?
十二支は十干と同じく、暦や時間、方角を知るために古代時中国で考えられた記録方法です。
十二支はとくに、12年で太陽を一周する木星の位置を基準にして、天体を12に分けて名前を割り当てた方法です。
現在でも、地球の「子の方角(北)」と「午の方角(南)」を結んだ線を「子午線」といいますよね! また、午の刻(12時)の前後を「午前」「午後」と呼ぶ名残もありますね。
この十二支と十干とを合わせて順番に60の組み合わせができるので(10と12の最小公倍数が60で順番は常に一定)、暦が一周する60歳を「還暦」として新たに生まれ直すお祝いをするのです。
どうして動物の漢字がちがう?
十二支は、暦や方角、時間を表すのに必要だった表記ということを説明しましたね。
それを後漢の頃に、人々が覚えやすくするために動物を当てたとされていますが、諸説あるようです。いずれにしても元は動物とは関係なく表記していて、後から動物を当てたので漢字が異なるのです。
そのため、国によって、猪が豚だったりヒツジがヤギだったり、少しずつちがいます。
また、日本では「ね、うし、とら・・」と当てはめられた動物の読みを使うので十二支と分けられずに理解されていることが多いのですが、中国では「子zǐ、丑chǒu・・」と動物とは無関係な意味と音で呼ばれるので、十二支と12の動物とは明確に峻別されているようです。
当てはめられた12の動物のことは「十二生肖(せいしょう)」といい、中国語では十二生肖をイメージさせる場合には、漢字も「鼠年」「牛年」のように記すようです。
動物と十二支のイメージ
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