「料理を味わうだけでなく、その土地の酒や文化まで楽しめる」と評判の新潟県関川村に佇む温泉宿「高橋屋観山荘」。1953年(昭和28年)に創業し、今年「米と酒興と炉端の宿」というコンセプトを掲げて新たな歩みをスタート。主役は、岩船産コシヒカリ。料理を彩るのは、日本海の魚介や地元食材。そして、その味わいを完成させるのが、店主自ら選び抜いた地酒とのマリアージュ。新潟が大切に育んできた文化を五感で味わう一夜をご紹介。
新潟の山あいで見つけた、‟なにもない贅沢”

旅行先を選ぶ基準が変わりつつある。豪華な設備や派手なアクティビティではなく、その土地にしかない食、自然、人との出会いを求める旅へ。そんな時代に、静かに注目を集めている宿を発見!
新潟県北部、清流・荒川のほとりに広がる関川村。その地で長年愛されてきた温泉旅館「高橋屋観山荘」が、2026年2月に全館リニューアル。さらに4月には貸切サウナを新設し、新たな滞在価値を提案。
宿が掲げるコンセプトは、「米と酒興と炉端の宿」。新潟が誇る米、酒、温泉、そして囲炉裏文化を現代的に再解釈したこの宿には、派手さとは異なる深い豊かさがある。そこには、「ちょっといい」という言葉に込められた宿主の哲学が息づいていた。
米どころ新潟の本質を届けたい。リニューアルに込めた店主の想い

高橋屋観山荘がある関川村は、田園風景と山並みが広がる人口約5,000人ほどの小さな村。しかし、この土地には全国屈指の米どころ・新潟の原点ともいえる風景が残っている。
リニューアルではベッドタイプ客室を増設し、ライブカウンター形式の炉端レストランを新設。さらに屋上にはプライベートサウナを整備し、より快適で現代的な滞在を実現。
ただこれらは単なる設備投資ではない。宿が目指したのは、「新潟らしさ」をより深く体験できる場所になること。高橋屋観山荘の魅力は、豪華さを競うことではない。

炊きたてのごはんを食べる幸福。地酒を片手に語らう時間。炉端の炎を眺めるひととき。温泉に身を沈めて深呼吸する静けさ。
そんな当たり前でありながら失われつつある豊かさを、丁寧に磨き上げたのが今回のリニューアルになっている。
主役は‟米”。新米シーズンに味わう岩船産コシヒカリの衝撃的美味しさ

高橋屋観山荘を語るうえで外せないのが、「米」。
宿で提供されるのは、新潟県内でも特に評価の高い岩船産コシヒカリ。関川村を含む岩船地域は昼夜の寒暖差が大きく、清らかな水にも恵まれることから、甘みと粘りの強い良質な米が育つことで知られているそう。
宿ではその米を天然水で炊き上げて提供。特にリニューアル後初めて迎える新米シーズンは、高橋屋観山荘にとって特別な意味を持つ「新米×地酒×炉端焼き」が最大のテーマになっていて炊きたての香り。艶やかな粒立ち。ひと口目に広がる甘さ。そして後から訪れる豊かな旨み。精米のタイミングや水加減や炊き上げる時間にこだわっているから、どんなにお腹がいっぱいでもごはんだけで思わず箸が止まらなくなり、‟お代わり”は必然。米どころ新潟に泊まる意味を、あらためて気づかせてくれる一杯になっている。
夕食の炉端焼きと朝食がつなぐ、人と食の距離
そのお米が提供される新設された炉端レストラン「燦(SAN)」では、夕食に目の前で炭火がはぜ、魚が焼き上がっていく。
「新潟には素晴らしい食材がたくさんあります。でも、それをただ皿に盛るだけではもったいないと思うんです」そう語る料理長は、料理を‟完成品"として提供するのではなく、食材の背景や生産者の想いまで伝える体験として届けたいとか。
関川村周辺で採れる山菜をはじめ、日本海で水揚げされる旬の魚介や新発田牛。そして〆には岩船産コシヒカリ。どれも決して特別な高級食材ではないのかもしれない。でもその土地で育ち、その土地に暮らす人々が大切にしてきた味には、何よりも豊かな物語がある。
その背景を聞きやすくするため、この宿では炉端というスタイルを選択。客と料理人の距離が近く、焼き上がる過程も見える空間。「おいしいですね」で終わるのではなく、「これはどこで採れたんですか?」「どうしてこんなに甘いんですか?」という会話が自然に生まれる場所に。料理が、空腹を満たすためのものではなく土地の魅力を伝え、人と人をつなぐためのものになっている。
店主が届けたいのは、一杯の日本酒から始まる新潟の物語
忘れていけないのがこの宿のメイン体験ともいえる日本酒と料理のペアリング。新潟は全国有数の酒どころとしてご存じのとおり。
ただ店主は、「有名銘柄を並べること」が大事なのではなく「日本酒そのものを楽しむというより、その酒が生まれた土地や造り手の想いごと味わってほしいんです」という。

宿で提供する地酒は、すべて店主が試し、近隣地域の風土や個性が感じられる気に入ったものを中心に厳選。ひと口に新潟の酒と言っても、すっきりとした淡麗辛口だけではない。米の旨みをしっかり感じるもの。熟成による奥行きを楽しめるもの。食中酒として料理を引き立てるもの。蔵ごとに驚くほど表情が異なる。
店主はその一つひとつを実際に飲み比べ、料理との相性を確かめながらラインアップを組み立てているそう。
良い米があれば、良い酒が生まれる。雪解け水が磨いた清冽な仕込み水。良質な酒米。厳しい冬の寒さ。それらが織りなす新潟の酒は、驚くほど食事との相性が良い。宿が提案するのは単なる飲酒ではなく、「酒興」という文化。酒興とは、酒を介して生まれる楽しみや交流のこと。炉端で焼かれた魚をつまみながら、地酒を傾ける。気が付けば会話が弾み、時間がゆっくり流れていく。その体験そのものが、この宿の価値といえる。
「料理に酒を合わせる」のではなく「酒に料理を寄り添わせる」
そしてメニューは日本酒を中心に献立を考えることがある点だ。料理長と店主は日頃から意見を交わしながら、料理と酒の関係性を磨いている。例えば脂の乗った旬魚には、後味を引き締める辛口の純米酒を。炭火で香ばしく焼き上げた新発田牛には、旨みの強い生酛系の酒を。どちらが主役ということでなく、酒が料理を引き立て、料理が酒を引き立てている感覚は唯一無二。
とにかく両方を味わっていると、日本酒への深い愛情が伝わってくる。居酒屋の飲み比べでも、高級レストランのペアリングでもない。新潟という土地を、五感で味わう豊かな時間になっている。
肌にやさしく、身体を芯から温める高瀬温泉
食の楽しみを満喫した後は、温泉へ。高橋屋観山荘のある高瀬温泉は、源泉温度約70℃を誇ることから「熱の湯」とも呼ばれている。お湯は柔らかく、美肌効果が期待できて「美肌の湯」として親しまれているそう。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。切り傷ややけど、慢性皮膚病などに良いとされ、湯上がり後も身体がぽかぽか! ボディケアが必要ないくらい、しっとりツルツル肌に。
館内には大浴場のほか、庭園露天風呂「四季彩の湯」があり、春は桜。夏は深緑。秋は紅葉。冬は雪見風呂が楽しめて、これぞ都会では味わえない癒やしをもたらしてくれる。
屋上に誕生した貸切サウナで、‟ととのう”を独占する
そして新オープンのプライベート空間。貸切サウナが屋上に設けられ、バレルサウナと天然水の水風呂、さらに露天風呂を貸切で利用可能。
サウナブームが続くなか、多くの施設が「ととのう体験」を提供しますが、高橋屋観山荘が特別なのは、その背景にある自然環境。見渡す限りの山並み。澄んだ空気。静寂。都市型サウナでは決して得られない、自然と共鳴するような深いリラックス感に浸れる。汗を流し、水に身を沈め、風を感じる。その繰り返しのなかで、身体だけでなく思考までも解放されていくのがわかるはず。
「ちょっといい」が積み重なる宿へ
増設したベッドタイプの客室にはセミダブルのシモンズのベッドを、1室限定の無印ルームには無印良品の家具がコーディネートされていて、ゆったりした空間に誰もが落ち着くはず。
新米を味わい、地酒を酌み交わし、炉端の炎を囲み、温泉に浸かる。感動が積み重なっていくうちに気が付けば、肩の力が抜けている。――高橋屋観山荘は、そんな旅の本質を思い出させてくれる場所。新潟の豊かさを再発見できて、その魅力は、きっと一泊二日では語り尽くせない。
だから次はどんな日本酒と食との出会いが楽しめるのか考えて、また「帰ってきたい」と誰もが思ってしまう場所を、ぜひ訪れてみませんか。

高橋屋観山荘
新潟県岩船郡関川村湯沢228-4
kanzansou.net















