週末の過ごし方で、来週の気分はきっと変わる。だからこそ、観る映画はちょっとこだわりたい。気分転換にも、インスピレーションにもなる一本をピックアップ。今回は、4月24日(金)公開の『LOST LAND / ロストランド』をお届け!
約1ヵ月の希望への旅路

世界では今この瞬間も、国籍を持てず、故郷を追われた人々が生きている。そのなかでロヒンギャは、「世界でもっとも迫害されている民族のひとつ」と言われ続けてきた。けれど日本に暮らしていると、その現実はどうしても遠い国のニュースになってしまう。映画『LOST LAND/ロストランド』は、その距離を静かに、しかし確実に縮めてくる。
本作は、第82回ベネチア国際映画祭 オリゾンティ部門で審査員特別賞を受賞するなど、世界各地の映画祭で高く評価されてきた。一方で忘れてはならないのが、この物語を描いたのが日本人監督・藤元明緒であるという事実。ミャンマーや東南アジアを舞台に、移民や難民の現実を見つめ続けてきた監督のまなざしは本作でも一貫している。

物語の中心にいるのは、難民キャンプで暮らす幼い姉弟、ソミーラとシャフィ。家族との再会を信じ、命がけで国境を越える旅に出る。過酷な状況に置かれながらも、映画は彼らを過剰にドラマチックには描かない。ただ歩き、ふたりだけで遊び、時に立ち止まりながら前に進む、その姿を淡々と追い続ける。
特に心を奪われるのは、姉弟ふたりの自然な佇まいだ。演技未経験とは思えないほど、仕草やまなざしが生々しく、感情を大きく語らなくても不安や希望が伝わってくる。過剰な音楽や説明がないからこそ、私たちは彼らと同じ速度で旅を体験することになる。

ロヒンギャという名前は、私たち日本人にとって決して身近ではない。それでもこの映画は、「遠い世界の問題」として突き放すことを許さない。家族と生きたい、帰る場所がほしいという願いは、あまりにも普遍的だから——。観終えた後も、スクリーンを離れたはずの姉弟の姿が心に残り続ける。それは、この問題が過去の出来事ではなく、今も現実として進行していることを、静かに突きつけてくるからだろう。
【4月24日(金)公開】『LOST LAND/ロストランド』

脚本・監督・編集/藤元明緒
予告編ナレーション/河合優実
出演/ムハマド・ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディン 他
lostland-movie.com
※ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma 新宿、ポレポレ東中野ほか全国ロードショー!

