美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。読者の皆さまからの質問も随時受け付けています! 今回は、富山県の美術館をナビゲート。
こんばんは。アートテラーのとに~です。先日、今年で開館5周年を迎えた富山県美術館に仕事で行ってきました。仕事の内容は、とある人物の富山県美術館デビューのアテンドをするというもの。その人物とは、富山県出身の人気動画クリエイター・はじめしゃちょー。まさか自分が、はじめしゃちょーと共演する日が来ようとは! アートテラーを長く続けるものですね。ちなみに、その様子をまとめたYouTube動画は、富山県美術館の公式チャンネルで観ることができます。
さて、富山県美術館の魅力はその動画を観ていただくとしまして。金沢21世紀美術館のあるお隣の石川県の影に隠れがち(?)ですが、実は富山県にはほかにも魅力的な美術館がいろいろあります。本日はそんな富山県の美術館を紹介したいと思います。
ガラスの美術館
富山と言えば、薬売り。その300年におよぶ歴史のなかで、薬とともに盛んに製造されたのがガラスの薬瓶でした。その生産は全国トップシェアを誇っていたそうです。戦後、プラスチック製へと取って変わられてからも、多くのガラス職人が住んでいたのだそう。そんな「ガラスの街とやま」に、2015年に誕生したのが、富山市ガラス美術館。日本を代表する建築家・隈研吾さんが設計した複合施設TOYAMAキラリ内にある美術館です。
常設展示室では、30年にわたり富山市が収集してきた現代ガラス作品を紹介。6階展示室には、現代ガラス美術の第一人者であるデイル・チフーリによるインスタレーション空間「グラス・アート・ガーデン」が広がっています。まさにガラス尽くしの美術館。
なお、現在は、オーストラリアのガラス作家カースティ・レイ(1955~)の40年におよぶ芸術家人生を辿る日本では初となる大々的な回顧展も開催されています。
一言でガラスといってもその表情は多彩。その奥深い世界に、「おそろしい美術…!」と白目をむいてしまうかもしれません。
富山市ガラス美術館
https://toyama-glass-art-museum.jp/
歴史ある和風建築と現代アートのコラボ
富山駅から10分ほどに位置する樂翠亭美術館。昭和初期の邸宅をリノベーションおよび増築し、2011年に開館した美術館です。
贅を凝らして建てられた日本家屋の中で、現代アーティストの作品を展示する。ユニークなスタイルの美術館です。
2022年5月10日まで開催される『現代に煌めく ガラス造形とコンテンポラリーアート』では、新たに収蔵したというガラス作品を中心に紹介。草間彌生さんや名和晃平さん、KAWSらの平面作品と取り合わせる形で展示しています。それらの作品が不思議なほど違和感なく、和の空間とマッチング。さらには900坪を誇る日本庭園ともマッチングしていました。いわゆるホワイトキューブの空間で観るのとはまた違った印象を覚えることでしょう。
ちなみに。作品だけでなく、建物自体も見どころがたっぷり。個人的にもっとも目を奪われたのが、富山県の伝統工芸「井波彫刻」の名工とされる南部白雲(二代目/1912~1997)が手掛けた欄間の数々。
何をどうやったら、一枚の板からこんな複雑な形を彫り抜くことができるのか。まさに超絶技巧! 南部白雲が型抜きをしたら、余裕で成功することでしょう。
樂翠亭美術館
http://www.rakusuitei.jp/
自称かわいい?
富山駅周辺の美術館を探していたら、“世界一かわいい美術館”という名前の美術館を発見しました。日本一どころか世界一。そのパワーワードに惹かれ、足を運んだら、まさかの臨時休館でした…。HPには何のアナウンスもなかったのに。でも、かわいいから許す! 再び訪れる機会があれば、また報告したいと思います。
世界一かわいい美術館
https://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=101827
皆さまからの質問大募集!
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