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LIVING趣味

2022.04.03

祝リニューアル!今訪れたい都内の美術館【水曜夜はアートの話を】

美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。読者の皆さまからの質問も随時受け付けています! 今回は、リニューアルオープンしたばかりの都内の美術館をご紹介!

松岡美術館

松岡美術館 外観

こんばんは。アートテラーのとに~です。すっかり春ですね。気温は申し分なく心地よいのですが、花粉には困ったものです。止まらないくしゃみや涙のせいで、美術鑑賞にはもっとも不向きなシーズンといっても過言ではありません。そろそろ国を挙げて、花粉に対するワクチンも開発してもらいたいものです。

と、それはさておき。春は別れと出逢いのシーズン。おかげさまで(?)、この春、都内で閉館する美術館はありませんでしたが、リニューアルオープンする美術館が2館あります。リニューアル前に訪れたことがある人も、未訪の人も、これを機に訪れてみてはいかがでしょうか?

白金台の隠れ家系美術館

松岡美術館エントランス

松岡美術館 エントランス

2019年より長期休館していた白金台の松岡美術館が、今年1月、約2年8ヵ月ぶりに無事に再オープンを果たしました! 外観や内観はほとんど変化がありませんが、これまでの館の雰囲気をなるべくそのままに保ちつつ、空調や天井、壁などの設備をクリーニングしたとのこと。さらに、館内照明もすべてLED化! 展示室内が、リニューアル前よりもぐんと明るい印象に様変わりしています。

松岡美術館展示室

松岡美術館 展示室

そんな新生・松岡美術館の開幕を飾るのが、4月17日まで開催中の『再開記念展 松岡コレクションの真髄』。古代エジプト美術から西洋絵画、日本画まで幅広く取り揃えた松岡コレクション約1800件の中から、創設者である松岡清次郎が特に愛した屈指の名品ばかりを紹介する展覧会です。

ハイライトともいうべきは、松岡清次郎が特に力を入れて蒐集した東洋陶磁のコレクション。なかでも《青花龍唐草文天球瓶》と《青花双鳳草虫図八角瓶》は見逃せません。漢字ばかりで一発で覚えられる気はしませんが、松岡美術館設立のきっかけとなった記念碑的な作品です。

青花龍唐草文天球瓶

《青花龍唐草文天球瓶》

時は1974年。サザビーズでのオークションに出品された《青花龍唐草文天球瓶》を、どうしても落札したかった清次郎。果敢に攻めるも、競りの相手はポルトガルの銀行王。金に糸目を付けぬ人物が相手では、さすがに勝ち目がありませんでした。

同年、別のオークションにて、清次郎は《青花双鳳草虫図八角瓶》を落札。さらにその数ヵ月後のこと、《青花龍唐草文天球瓶》を落札した銀行王が政変により逮捕。それゆえ、購入する権利が清次郎に移ったことを伝える電報がサザビーズより届きました。その提示金額に手数料が上乗せされていることを見抜いた清次郎は、商人の技を駆使して値下げ交渉し、希望額で購入することに見事成功。

とはいえ、それでもその購入額は、中国美術の落札価格としては当時の歴代1位。世界各国で話題となったそうです。ちなみに同じく当時の歴代2位は、先に落札した《青花双鳳草虫図八角瓶》。そんな名品を2点も手に入れたからには、一人でも多くの人に観てもらいたいと設立されたのが松岡美術館なのです。

青花双鳳草虫図八角瓶

《青花双鳳草虫図八角瓶》

ちなみに、この2つの中国陶磁の名品が同時に展示されるのは、実に7年ぶりとのこと。中国の2大スター、奇跡の競演です。

松岡美術館
https://www.matsuoka-museum.jp/

20年目の大々的リニューアル

泉屋博古館東京 外観

泉屋博古館東京 外観

住友家が収集した美術品、工芸品を収蔵展示するミュージアム。それが、泉屋博古館。「泉屋」と書いて、「せんおく」と読みます。しかも、博物館ではなく「博古館」。初見では一発で読めないミュージアムです。1960年に京都・鹿ケ谷に開館しましたが、2002年には六本木一丁目に泉屋博古館分館も開館。その泉屋博古館分館が20周年を機に、名前も新たに「泉屋博古館東京」としてリニューアルオープンしました。

外観こそ大きな変化はないですが、内部は劇的ビフォーアフターばりに、劇的変化! 2室だった展示室は4室に! 照明や展示ケースは最新のものへとアップグレードされています。

そんな泉屋博古館東京のリニューアルオープン一発目の展覧会が『日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京』。泉屋博古館の日本画コレクションを、東京・京都・大阪の3都に分けて紹介するものです。

上島鳳山《十二ヶ月美人》のうち《七月 七夕》1909年_泉屋博古館東京

〈大阪〉より 上島鳳山《十二ヶ月美人》の内《七月 七夕》1909年 泉屋博古館東京

橋本雅邦《深山猛虎図》new 泉屋博古館東京

〈東京〉より 橋本雅邦《深山猛虎図》1890年頃 泉屋博古館東京

見どころの一つは、ここ数年、日本美術ファンの中で人気急上昇中の京都の画家・木島櫻谷(1877~1938)の《柳桜図》。住友家15代当主・住友吉左衞門 (春翠)が、自邸の大広間を飾るために、木島櫻谷に制作を依頼したという「四季連作屏風」の「春」にあたる作品です。

木島櫻谷《柳桜図》泉屋博古館東京

〈京都〉より 木島櫻谷《柳桜図》1917年 泉屋博古館東京 ※前期(~4月10日)のみの展示

桜のピンクと柳のグリーン、金屏風のゴールドの対比が鮮やか、かつゴージャス。目に飛び込んできた瞬間に、気分もパッと満開になること請け合いです。

また、今回のリニューアルによって、ミュージアムカフェ「HARIO CAFE」も誕生。こちらは、創業100年を迎えた耐熱ガラスメーカーHARIOが直営するカフェです。HARIOの器具で淹れたスペシャリティコーヒーや紅茶を楽しめるのはもちろん、それらの器具を実際に触って購入することもできます。
HARIO CAFE
ちなみに、メニューには通常のコーヒーもありますが、おそらく国内のミュージアムカフェ史上最も高価なコーヒーも! ドリップコーヒー ワールドチャンピオンレシピ。お値段なんと2,000円也。珈琲豆はは、バリスタ世界チャンピオンの粕谷哲氏が焙煎したスペシャリティを使用。HARIO製のドリッパーを用いた、チャンピオン直伝の方法で淹れられる珠玉の一杯。もはや飲むアート作品です。
ドリップコーヒー ワールドチャンピオンレシピ

泉屋博古館東京
https://sen-oku.or.jp/tokyo/

皆さまからの質問大募集!

「デートにピッタリの美術館は?」「カフェがオススメの美術館って?」という具体的な質問から、「現代アートって、何が面白いの?」「何であんなに美術品って高いの?」「ピカソってすごいの?」という誰にも聞けなかった質問まで。
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TEXT=アートテラー・とに〜

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