壇蜜より「あれこれ工夫してやっとこさ日々を過ごしている」

日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載。 『今更言葉で、イマをサラッと』というテーマについて、ご本人いわく 「今更考察するのも恥ずかしい・・・でも、考察の後に見える何かを共有しませんか。あ、あくまで私見です」とのこと。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!   

その28 『 何とか 』

近況を聞かれることが増えたなと思う。意識しているだけだろうか、それとも、誰でもよその近況は気になるのだろうか。確かに会話のとっかかりになるとは思う。天気の話が当たり障りなき会話の基本だとすると、近況は基本を少しそれた基礎練習的な存在だろうか。
近況を聞かれる流れになる前には「元気にしている?」「忙しくない?」「仕事は上手くいってる?」などの「出だし」が投げられる。親しい間柄なら本音で話してもいいだろう。働けど働けど事務所に吸い上げられて…とか、打ち合わせと違う質問をされて参った・・・とか。誰の話ってわけではないのだが。

しかし、世の中には「そこまで親しくはないが会話はする」カテゴリーの面々もいる。顔見知り程度の関係とでもいおうか。顔見知りにはこんな愚痴っぽいネタを披露したり正直な気持ちを打ち明ける必要はない。むしろ変な噂をされて巡りめぐって損をする可能性もある。面倒な世の中だが、隠れた噂好き&詮索好きは一定数いる。顔見知りがその隠れパンドラ(ギリシャ神話中で開けちゃいけない神様の作った箱を好奇心に負けて開け、世の中に大惨事を引き起こした女性の名前)かもしれないと疑って生きるのはなかなかしんどいが、防衛方法のひとつとして聞いてほしい。

何か聞かれて「大変」「辛い」「楽しい」などの決めつけた答えは出来るだけ避けたい。決めつけたような答えは「どうして?」と更なる説明を求められやすいし、仕事を軽んじているような印象を持たれるからだ。「大変でしょう」と言われても「キツくないですか?」と聞かれても「何とかやってます」と微笑みで返すのがいいと考える。完璧ではないし、余裕があるわけでもない・・・しかし、とんでもなくしんどいわけでもない。あれこれ工夫してやっとこさ日々を過ごしている・・・という意味の「何とか」。謙虚であり柔和な表現だと思う。曖昧な言葉なので、それ以上の情報を詮索されないような突き放しの効果もあると信じている。

無駄な話も時には息抜きのために必要だが、自分の情報は守りながらというのを大前提にしたい。

文/壇蜜

壇蜜
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壇蜜
タレント。さまざまな職業経験を経てグラビアデビューし、バラエティやトーク番組、ドラマ、映画でも活躍。独特の感性と表現力にも注目が集まり、執筆活動も多い。初の連作短編小説『はんぶんのユウジと』(文藝春秋)が絶賛発売中。最新刊は『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』(文藝春秋)。
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