“素敵な大人”になるために!誰かを「ディスってしまう」前に考えるべきこと

10月23日公開予定の映画『朝が来る』で主人公夫婦の夫を演じた俳優の井浦新さん。非常に繊細な問題を扱ったこの作品から、家族や人への優しさを改めて感じたといいます。SNSなどで自分の意見を気軽に投稿できて、人への攻撃なども目立つ昨今。今もう一度考えたい、「優しさ」や「気遣い」とは!? 


今どきの「気遣い」事情について、井浦さんにじっくりとお話を伺いました。

表面的な気遣いよりも、人にはさまざまな事情やいろんな思いがある。このことを理解すると、人は優しくなれる



誰かの失敗や、自分と違う考えや行動を背景も考えずに軽蔑したり、批判したり、ディスってしまうことは、ないだろうか?

もしかしたら、その人がそうなった背景には、こちらが見えないさまざまな事情ややむを得ない状況があったのかもしれない。そんな物事の裏側にも真実があることを教えてくれるのが、映画『朝が来る』だ。人気作家・辻村深月さんの小説を河瀨直美監督が映像化し、10月23日に公開が予定されている。

物語は、“特別養子縁組”という制度を通して、夫婦や家族、さまざまな立場の人の思いが描かれる。まるでリアルなドキュメンタリーでも見ているような構成にたちまち引き込まれてしまう。特別養子縁組をする夫婦の夫役に抜擢されたのは、人気俳優の井浦新さんだ。

「僕が演じた清和という男性は、たぶん世にいう“勝ち組”と呼ばれてきた側の人だと思うんです。一流大学を出て、大手ゼネコンに勤め、美しい女性と結婚をし、順風満帆に過ごしてきた。そして、結婚すれば子供は授かるものだと思っていたはずです。ところが、現実は違った。“無精子症”と診断されてしまったんです。

彼は自分の不妊を知ったとき、人生で初めて“負け”を味わってしまった。彼のなかで、今までの価値観が崩れてしまうようなそんな瞬間だと思い、病院で告知されたときのシーンは丁寧に考えて挑みました。そうしないと、実際に治療をされている方にも失礼になってしまう。また、河瀨直美監督率いる河瀨組では、そういう形で作品に向き合う作業がとても重要なんです」

実際に、井浦さんと妻役の永作博美さんと病院で不妊治療の問診を受け、無精子症と診断された男性や家族にも直接会って、リアルな体験や思いもいろいろ伺ったのだという。

「不妊症と文字にするとそれだけで終わってしまいますが、そこにはさまざまな思いや背景がある。今回の映画では、実際に特別養子縁組をされた方も登場していて、そういった場面を通して、今まで知らなかった立場の方々に、さらにいろんな思いがあることをリアルに知ることができました。夫も現実を受け入れるのがつらいですが、夫婦ですから、妻にもつらい思いがある。そして、そのつらい思いの奥には、それぞれの優しさがあることも知りました」

コロナ禍の今こそ、さまざまな人の背景を知るためにも「映画」が役に立つ

さらに、この映画は特別養子縁組をした夫婦以外の視点も同じだけ描かれる。そう、養子に出した側。赤ちゃんを育てられなかった女性がなぜそうなったのかも丁寧に描かれているのだ。

「不妊症だった夫婦は特別養子縁組を得て、子供という幸せを手に入れました。でも、その幸せの背景には、子供を手放すという選択をした女性が必ず存在するわけです。劇中で描かれる彼女の人生は、本当にいたたまれない。負の連鎖があります。一生懸命生きているのに、社会のなかで居場所がなくなってしまう。表面だけ見たら、彼女のことを馬鹿だとか、愚かだと思う人も多いかもしれない。でも、誰もが彼女になりうる可能性もあると思うんです。また、そんな彼女に対して、若いのに子供を作るなんて、と誰が罰することができるんだろうと・・・。

人は、どうしても自分が想像できるなかで物事を考えがちです。そこでダメとかいいとか判断し、決めつけてしまう。自分と違うものだと排除したり、無視することもある。でも、自分と違う立場の人も、実はたくさん存在して、懸命に生きているんですよね。自分はそのことに気付けているだろうか、と。そして、そんな人が目の前にいたら、手を差し伸べられるような優しさを持っているだろうか、と、作品を通して、自分を戒めることも増えました」

井浦さんが言うように、人はどうしても物事を決めつけて考えがちだ。特に、コロナ禍の今、みな気持ちの余裕がなくなり、人に対して必要以上に厳しくなってしまう。その尖った心が、気遣いや思いやりといった気持ちを失わせてしまうことも・・・。

「こんなときだからこそ、映画を観てほしいと思います。この作品はもちろんですが、いろんな作品を観てほしいです。僕らは映画のなかで演じてさまざまな体験をしますが、観ることでも自分の知らない世界を十分、体感することができます。知らないことを知ることで、視野が広がり、そこに優しい気持ちが生まれることもあると思います。

自粛が解けた今、改めて映画館で映画を観てほしいです。特に、ミニシアターは今回のコロナ禍で大きな打撃を受けています。ミニシアター支援の『ミニシアター・エイド基金』といった活動をしているのですが、ぜひ応援していただければと思います。僕も映画館がオープンしている今、映画館へ足を運び、観て、そのあとはお酒を飲み、煙草を吸いながら映画について語り合いたいですね。あ、もちろん煙草は人の迷惑にならない場所で、健康も考えながら楽しむ程度にと思っています(笑)。どんなときも優しい配慮は考えたいですね」

インタビュー/伊藤まなび
イラスト/須山奈津季

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