慌てて読まず、じっくりと!~多部未華子の読書案内

小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。アラサーの“多部ちゃん”が、同世代女子からの本選びの相談に応えて、オススメ本を紹介します。

Q アラサー女子からのリクエスト
「時間をかけて、
長編小説を読みたいです。

作品の世界にゆっくり浸れる本を
教えてください」

慌ただしい毎日、アウトプットばかりで、きちんとインプットができていないなと感じています。ゴールデンウィーク、そのあとの夏休みなど、旅の道中や旅先でじっくりと読書したいな・・・と思っています。オススメの本はありますか?

東京會舘を舞台に繰り広げられる
温かい物語と歴史をゆっくり味わう

 
ゴールデンウィークの暖かくなってくる季節に、読むにふさわしい小説を見つけました。辻村深月さんの『東京會舘とわたし』。東京・丸の内にある東京會舘をオープン当初から平成27年までの約90年にわたる歴史とともに、東京會舘に訪れるお客様の心温まるエピソードが綴られています。

特に私がお気に入りなのは、第5章の“しあわせな味の記憶”。東京會舘のお土産用のデザートをつくるお話なのですが、クッキーやケーキに対するこだわりや情熱を持った製菓部長の勝目清鷹と、箱菓子の製造を依頼した事業部長の田中康二のやりとりなど、箱菓子が出来上がるまでの両者の熱い気持ちはとても読み応えがあり、そして最後はぐっときてしまいました。

東京會舘という歴史ある建物を通し、人と人とのつながり、家族や愛する人との思い出、従業員たちの丁寧で洗練されたお客様に対する温かいおもてなし
や心構え・・・・・・不思議と私も東京會舘の中にあるレストランかどこかでこの本を読んでいるような気持ちになり、各エピソードの登場人物に不思議と寄り添いながら読んでいて、どのエピソードも最後は胸がいっぱいになりました。

この本を読んだら、東京會舘に出向いてしまう人が多くなりそう・・・・・・と思ってしまいますし、もちろん私も行きたくなったうちの1人。

私自身は、東京會舘には行ったことがなく、マロンシャンテリーも食べたことがなければ、レストランでフレンチをいただいたこともなくて・・・・・・でももう今は東京會舘に対して興味津々です!!

この本を読みながら何度、東京會舘について調べたことか! 行きたい!! だれか近々、東京會舘で結婚式をあげて、私のことを招待してくれないかなぁ・・・・・・とそんなセコいことまで思った次第です。

小説の登場人物に共感したり、感情移入したりすることは多々ありますが、建物自体に共感や思い入れを持ったり興味を持ったりすることは、後にも先にもこの作品しかないのではないでしょうか。

そう思うとこの小説は、慌てて読むのではなくじっくりと読むべき作だと改めて思います。

ゆったり流れる時間の中で、味わいながら読む、温かい小説に巡り合えました。

文/多部未華子

今回のオススメ本はこちら!

『東京會舘とわたし』(上/旧館・下/新館)辻村深月 著
各¥1,500(税別)  毎日新聞出版 

大正11年、丸の内に落成した国際社交場・東京會舘。大正から昭和、平成と変わりゆく激動の時代のなか、“ 會舘の人々”が織り成すドラマが、心に火を灯す。直木賞作家が贈る、一つの〈建物の記憶〉をたどる傑作長編小説。

多部未華子
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多部未華子
1989年東京都生まれ。女優。2005年に映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど、10代から存在感のある演技で幅広く活躍。その後、NHK連続テレビ小説「つばさ」主演をはじめ、さまざまな作品に主演。主演映画『空に住む』が10月23日より公開予定。
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