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TIMELESSPERSON

2025.06.26

バチェラーを初めて観た話【妹尾ユウカ】

妹尾ユウカさんの連載エッセイ『マテリアルガールは休暇中』。初めて『バチェラー・ジャパン』を観たという体験を、持ち前の鋭さとユーモアで綴ってくださいました。初視聴者ならではの視点で描かれる『バチェラー観察記』を、どうぞお楽しみください。

『バチェラー』という番組が映し出しているのは…

シーズン6になって、ようやく『バチェラー・ジャパン』を見始めた。これまでもXで切り抜き動画を目にしたり、女性誌で過去のバチェラーと対談したりと、視聴のきっかけはあったのだが、本編を通して観たのはこれが初めてだった。

その理由は、おそらくバチェラーの“質”と、当時の私の生活環境にある。港区を主戦場にしていた20代前半の女から見れば、これまで登場してきたバチェラーたちは、パッと見で「エビ横ならモテそうなオジ」や「有象無象の小金持ち」といった印象でしかなかった。
それゆえに「この人を? みんなで? 本気で? 取り合うの?」という疑問符がどうしても拭えず、本編に進めなかったのだ。

けれど、シーズン6のバチェラーはこれまでとは明らかに違っていた。
オジでもなければ、どこにでもいそうな小金持ち系でもない。大手美容外科クリニックの御曹司。
おまけにそのルックスは、私が子どもの頃に集めていたハッピーセットの景品『THE DOG』そっくりで、なんとも愛らしい。
「どんな女性を選ぶのだろう?」と興味をそそられるには、十分すぎる肩書きだった。

しかし、数日前の私のように『バチェラー・ジャパン』を軽い興味本位で観はじめるのは、きわめて危険な行為である。
普通のバラエティ番組を観る感覚で油断していれば、「寝耳に水」どころか、「寝耳に滝」を食らう羽目になるだろう。
というわけで今回は、シーズン6を観るにあたっての注意点と、本作から得た教訓をいくつか綴ってみようと思う。

最初の関門は、バチェラーと参加女性たちが一対一で初対面を迎える冒頭のシーン。完全に油断していた私は、この時点で寝耳に滝を食らってしまった。
なぜなら、衣装もセットも煌びやかに飾られ、まるで社交界での出会いを思わせるような演出がされているにもかかわらず、そんな完璧な舞台に、魑魅魍魎たちが次々と現れては、挨拶がてら意味不明な一芸や自己PRを繰り広げはじめたからだ。

しかも、それらはどれも「ああ、売名を狙ったパフォーマンスね(笑)」という感じではなく、本気のやつ。
エピソード開始早々、視聴者は共感性羞恥のような小っ恥ずかしさに苛まれる。4DXさながらの臨場感。いわゆる“素人モノ”のような生々しさや艶めかしさに、すぐにゾクゾクさせられることは間違いない。

この最初の関門を突破したところで、この先も細々とした難所がある。
しかし、それらにいちいち触れていてはシーズン7が始まりかねない。これは比喩ではない。
そのくらい、小さな違和感が山ほどある。

たとえば、「なぜこの女医は落とされて驚いているの?」「圧がすごいな……」「マレーシア感ないな……」「知り合いは無しだろ!」「この女の人よく見たらトム・ブラウンのみちおに似てるな」など、本当にキリがない。

だから今回は、なんとか2つに絞って話そうと思うのだが、そのどちらを語るにしても、まずは“バチェラーの女の趣味の悪さ”について触れる必要がある。
女の趣味が悪いというより、視聴者側のバチェラーへの期待値が高すぎた、そう言った方が正確かもしれない。
最終的に彼が選んだ女性3人の顔ぶれを見た瞬間、「アンタ、意外と自信ないの?」と思わずにはいられなかった。

見るからに恋愛経験が乏しそうで、女友達が少ないタイプの女性ばかりなので、本当に誰を応援して視聴を続けたらいいのか分からない。
一応、ネタバレを考慮してこれ以上の詳細は控えるが、私がエピソード6で落とされた女性なら、最後に「お前、意外と低所得会社員みたいな趣味してるね」と捨て台詞を吐きかねないほどの人選である。

女選びだけで、ここまで評価を落とした男を他に見たことがない。
きっとメインの視聴者層が女性であることも大きな要因だが、一緒に観ていた私の彼氏も「意外と!?」と慎んだ言葉で驚いていた。

彼の女選びのセンスはもちろん、過ごす相手によって変化する微妙な態度から、私は支配欲やコンプレックスのようなものを感じてしまった。
端的に言うと、彼は自分よりも下の立場に置けそうな女性を好んでいるし、そういった女性と接しているときだけ、少し大胆になり自信が滲む。
つまり彼は、入れ物を間違えただけで、中身は弱者男性なのかもしれない。そうでなければ、あの手の女性たちには惹かれないし、あんな幼稚な恋愛観やテクニックにはなびかないはずだ。

中でも驚かされたのは、毒親育ちとか家庭環境が悪かったとか、そういう話をコミュニケーションの切り札として使う女性を前にして、彼が違和感を覚えなかったこと。
自分より年下といえど、当該女性は大人である。
もし、そういった幼稚さに「守ってあげたい」と心を動かされたのであれば、やはり中身はコンカフェの客や頂き女子の被害者と大差ない。

彼女の過去の話が、今のあなたとの関係における“優先席”を確保するためのパスのように使われていることに、こうも気づかないものなのか。
もちろん、過去の経験を共有すること自体は悪くない。
けれど、あれは打ち明け話に見せかけて、「だから特別扱いして」「可愛がってね」というメッセージを含んでいた。

人は、自分を否定しない相手、優越感を持てる相手、自分に都合のいい物語を成立させてくれる相手を好みやすい。それは弱さでありながら、ごく自然な心理でもある。
ただ、その選んだ動機に無自覚なまま「これが愛だ」と信じてしまうようでは、本質的にいい恋愛などできるはずがない。

『バチェラー』という番組が映し出しているのは、恋の美しさではない。
選ぶという行為を通して浮かび上がる、バチェラー自身の価値観や自己認識といった、飾りのない姿である。
つまり、最終話であらわになるのは、輝かしいボンボンの一輝ではなく、スッポンポンの一輝なのだ。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:マテリアルガールは休暇中
妹尾ユウカ

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