鍛えよう唾液力!唾液の質でウイルスや細菌などの感染症リスクが上がる!?

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるう中、免疫力を高め、病気を未然に防ぎ、健やかな心と体で毎日をタフに生き抜きたい! 自らを助ける智慧を少しでも多く持っておきたい! 
そんななか、今、さまざまな研究によって、急速に唾液の力が解明されてきています。感染症予防にも関係する唾液力について、神奈川歯科大学大学院口腔科学講座教授、槻木恵一先生に聞きました。

ウイルスや細菌の繁殖を防ぐIgAが唾液中に!

唾液力とは、唾液の量だけでなく、質も含めた唾液の総合的な健康具合のことと考えます。

「唾液中には、健康に大切な成分がわかっているだけで100種類以上あります。その代表的なものは、ウイルスや細菌の繁殖を防ぐIgA(免疫グロブリンA)と呼ばれる免疫物質、それに細胞老化を防ぐラクトフェリンなどは、その代表格です」と槻木恵一先生。

ほかにも、唾液中には、粘膜保護成分ムチン、脳や体の細胞の栄養源となるグロースファクター、メラトニン、コラーゲン、ヒアルロン酸など多くの物質が含まれています。私たちの想像以上に、機能性の高い液体なのです。

唾液中のさまざまな成分には、インフルエンザなどの感染症、歯周病、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病、がん、大腸炎、視力低下、肌老化など、さまざまな病気予防の成分が含まれていることがわかってきました。    

抗菌物質IgAがウイルスを撃退!

「口の中の唾液には、細菌やウィルスを撃退するさまざまな抗菌・抗ウイルス物質が含まれています。人間の体には、免疫系という機能があります。そこでは、さまざまな抗体が働いていて、細菌やウィルスなどの異物を見つけると、ただちに排除し、私たちが病気にかかるのを防いでくれます」(槻木先生)

唾液中には、IgA(免疫グロブリンA)、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリンなど、さまざまな抗菌・抗ウイルス物質が含まれています。    

「これらの物質は、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎や風邪、インフルエンザなどの感染症の予防に重要な役割を担っています。 これらの抗菌・抗ウイルス物質が唾液中に高い濃度で存在するほど、ウイルスなどの働きが抑止されて、感染するリスクが減ります。

なかでも、最も多く唾液に含まれているのがIgAです。IgAは、私たちがもっている自然免疫として機能し、体の免疫力向上のためのとても重要な物質です」(槻木先生)

ウイルスが入ってくる口の中で唾液がブロック!

口の中には、1日50~100㎎のIgAが唾液腺を通して分泌されています。IgAが持つ抗菌・抗ウイルス作用の免疫効果は、次のようなメカニズムによって発揮されます。

まず、異物を発見すると、いくつものIgAがそれらにくっついて、口内の粘膜に付着しないようにさせます。

そして、IgAがくっついた異物は、唾液の自浄作用によって、ほとんどが洗い流されてしまいます。体内のさまざまな器官に侵入する前に、口の中でブロック! ウイルスの水際対策をしてくれるのが、唾液中のIgAなのです。

「実際に、IgAのこうした抗菌・抗ウイルス作用がインフルエンザウイルスに反応することが明らかになっており、高い予防効果を生む可能性があることは、私自身が行った高齢者施設での実証試験でも証明されています。
また、IgAは、腸の分泌物にも含まれていて、腸内で悪い細菌を除去する作用があり、腸内環境の改善を促して、体全体の免疫力を高める手助けもしているのです」(槻木先生)

よく風邪をひく人は、IgAの減少が原因?

IgAを作る力を持っていない人もいて、IgA欠損症という病名がついています。欧米では200~2000人に1人いると言われていますが、日本人は3000~19,000人に1人と言われ、患者数もあまり多くはありません。

しかし、IgA欠損症だと、上気道感染症にかかりやすくなることがわかっています。侵入したウイルスや細菌が上気道(鼻か咽頭までの気道)の粘膜に付着することで、鼻炎、扁桃炎、咽頭炎などを発症。感染症の約7割が上気道感染症で、風邪もそのひとつなのです。    

「よく風邪にかかりやすい人は、IgA欠損症とまではいかないまでも、唾液中のIgAの量が減少している可能性があります。

IgAは、粘膜からの感染を予防するために、極めて重要な役割を果たしているのです。IgAは、軽い運動や食生活の改善で、分泌量を意識的に増やすことができます。免疫力を上げるには、唾液中のIgA濃度を高めることが第一歩になるのです」(槻木先生)

唾液の「質」が低下していませんか?

「唾液の“質”が低下している可能性がある内容をあげました。上記の4項目は、唾液の質を低下させやすい食行動。次の3項目は日常生活の活動性が低く、唾液力の低下につながりやすい状態や習慣を指しています」(槻木先生)

□        朝食を食べないことが多い  1点
□        ヨーグルトはほとんど食べない    3点
□        野菜やイモなどはほとんど食べない    3点
□        脂っこい食べ物が好き             2点
□        買い物など外出することが億劫になってきた   1点
□        家にいることが多く歩くことが少ない         1点
□        よく便秘になる                  2点

合計点が3点以上の人は、唾液の「質」が落ちている可能性があります!    

IgAを増やすには毎日の牛乳やヨーグルト

女性は、年齢を重ねるほど唾液力が低下します。唾液力をできるだけ維持する方法はないのでしょうか?

「唾液力を高める方法はいくつもあります。日常生活でできることを紹介します」と槻木先生。

有効なのは、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を毎日継続して食べること。特にヨーグルトが効果的。唾液中に含まれる抗菌物質IgAの濃度を高める作用があるからです。根菜類、海藻などの食物繊維や、ぬるめのお湯で抽出した緑茶にも、唾液中のIgAを増やす作用が確認されています。

また、活性酸素は、唾液力低下に影響するため、いわし、さばなどの青魚、玉ねぎ、長ネギ、もずく、めかぶ、大豆、トマト、レモン、イチゴなどの抗酸化作用のある食事を摂ることも大切です。

一方で、脂質の多すぎる食事やアルコールは、唾液力を低下させるので要注意です。    

健康な成人の唾液量は、1日1000~1500㎖。人間が1日にかく汗の量が500~1500㎖とされていますから、唾液は平常時でも酷暑の中で汗だくになったときの汗と同じ位の量が出ています。そのため、水分をこまめに摂ることも大切で、1日1~1.5ℓの水分補給が目安です。ドライマウスや喉が渇くのは、唾液力低下の危険信号です。

マッサージ&体操で唾液の量+質を上げる!

ほかにもストレッチやウォーキングなどの軽い運動もIgAの増加につながります。嚥下体操も唾液力がアップしますので試してみてください。

●唾液の「量」を促す耳下腺マッサージ
耳下腺のマッサージで、唾液量を増やしましょう。毎日継続することが大事です。耳の下より少し前、エラのあたりに3本の指を当て、そこを中心に円を描くように指を回します。強く押さずにゆっくりと回すのがポイントです。これを2分ほど、10回以上繰り返します。

●唾液の「質」を上げる舌の体操
舌の体操も毎日の継続が大事です。リラックスした姿勢で、舌を前に出したり、喉の奥へ引いたりする動作を繰り返します。次に、口の両端に舌を動かし、最後に鼻の下、あごの先に向けて動かします。朝晩2~3回ずつ繰り返すといいでしょう。

文/増田美加
参考資料/『唾液サラネバ健康法』槻木恵一 著(主婦と生活社)

増田美加/女性医療ジャーナリスト
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増田美加/女性医療ジャーナリスト
NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。本誌「30歳美容委員会・女性ホルモン整え塾」でもお馴染み。エビデンスに基づいた健康情報、予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書は『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人「みんなの漢方R」理事長、NPO法人「乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)」副理事、NPO法人「女性医療ネットワーク」理事、CNJ認定「乳がん体験者コーデイネーター」ほかを務める。
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