11月1日(土)に第38回東京国際映画祭 ガラ・セレクション公式出品 映画『栄光のバックホーム』のワールド・プレミア上映が行われた。上映後にはスタッフ・キャストによる舞台挨拶を実施され、W主演を務めた松谷鷹也さん、鈴木京香さん、そして高橋克典さん、前田拳太郎さん、山崎紘菜さん、加藤雅也さん、製作総指揮を務めた見城徹さん、監督を務めた秋山純さんが登壇した。
その生き様に涙が止まらない

阪神タイガースにドラフト2位で指名され、将来を嘱望された横田慎太郎選手。21歳で脳腫瘍を発症し、引退を余儀なくされながらも、最後の試合で見せた“奇跡のバックホーム”は、今も多くの人の心に深く刻まれている。そんな彼の闘病と家族との絆を描いたノンフィクション『栄光のバックホーム』(幻冬舎文庫) が映画化され、2025年11月28日(金)に全国ロードショー。命を燃やし続けたその姿は観るものの心を震わせる。
豪華キャスト・スタッフが上映直後の会場

およそ2時間にわたる作品上映中は、会場のいたるところからすすり泣く声が漏れ聞こえ、ハンカチで涙を拭う人が続出。そんな感動冷めやらぬなか、上映終了後にキャストとスタッフが登壇し舞台挨拶が行われた。
本作の制作総指揮を務めた見城徹(幻冬舎社長)は「74歳になります。『僕の人生の最後のバックホームは栄光で飾れるだろうか』と『栄光の思い出で終われるだろうか』と思いながらこの映画を作ってきました。映画を作ろうというふうに思ったのは3年ぐらい前です。横田慎太郎が栄光のバックホームで帰ってきたように、それを秋山監督がどう描くか。そして彼を支えた人たちを、役者たちがどう演じるか。毎日、人々の胸に届くだろうか。客は入るだろうか。横田慎太郎は頷いてくれるだろうか。そんな不安と恐怖で眠れぬ夜を過ごしてきました。完成を何回観ても、涙が止まりません。いい映画ができたなというふうに思っています。もし皆さんの胸に少しでもこの映画が届いたら、他の人に『あれはよかったよ』と言ってください」と感慨深い様子で挨拶。

奇跡の連続だったという本作について秋山純監督は「今日はたくさんの皆さんに観ていただいて、本当に感無量です。慎太郎くんの人生をこうしてスクリーンに遺せたこと、実現したこと、これが奇跡だと思います。元気なうちに彼は映画館に来るのを楽しみにしてると言ってくださっていたので、その約束は果たせなかったことがすごく悔いが残りますが、こうして、松谷鷹也という新人に慎太郎さんの役をやってもらって、スゴい俳優が集まって、見城さんと毎日電話して、一喜一憂をしながら、この場に立てていることがいちばんの奇跡です」と喜びを噛み締めた。

生前の横田さんと交流があったという本作の主演・松谷鷹也さんは、横田さんにどんな言葉を贈りたいかと聞かれると「慎太郎さんと出会って4年くらいになるんですけど、慎太郎さんと一緒に歩んできたこの4年間っていうのは、僕にとって宝物のような時間でした。こうして映画が完成して、1人でも多くの方に慎太郎さんのことを知っていただけるように、公開まで自分にできることを全力でやっていきたいと思いますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです、というふうに伝えたいです」と涙ながらに語った。続けて、「本当に真っ直ぐな人で、でも天然というか、少し抜けているようなところもあったんですけど、目の前のことに一生懸命で、1日1日大切に生きていくような方でした」と横田さんの人柄に想いを馳せた。

松谷さんとダブル主演を務める鈴木京香さんは、横田さんを見守る母まなみ役のオファーを受けたことを「野球一筋に一生懸命打ち込んできた青年のお母さん、志半ばで病と戦わざるを得なくなった慎太郎くんのお母さん。『私に務まるのだろうか』と考えたこともあったんですが、慎太郎くんの素晴らしく清らかで一生懸命な生き方に感動して、『ぜひやらせていただきたい』とお返事しました」と語り、「現場では、鷹也くんが慎太郎くんのままでいてくれたので、私たち家族は、役を考えるとかお芝居に悩むということよりも、『慎太郎くんってこういう子だったんだ』『こんな素敵な男の子だったんだ』『頼もしい青年だったんだ』と、誇らしい気持ちになって現場にいることができました。それは、鷹也くんも一生懸命やってくれたおかげだと思います。みんなで大好きになった慎太郎さんにも、この映画が届いていることを祈りつつ、たくさんの方に劇場にいらしていただきたいと思いますので、今日の感想を皆さんにどうぞお伝えくださいませ」と会場に呼びかけた。

息子を一歩引いたところで見守っていた父であり元プロ野球選手の真之を演じた高橋克典さんは役柄について「実力はあったものの、いまひとつ抜けたところまではいけなかった。野球界の日の当たる部分、日の当たらない部分、悩みも故障も、いろんなことを知りすぎているわけですね。だから子供の頃から慎太郎には野球を教えなかった。どうしてもやりたければ、やってもいいという姿勢で、葛藤と混沌と、もしかしたら嫉妬もあったかもしれない。もちろん、嬉しい気持ちも人一倍あったと思います。そういういろんな気持ちがないまぜになっている。一歩引いたところで家族を守る、自分が一生懸命稼いで家族を食べさせていくっていう、そういうふうに人生をスイッチした人でした」。そして「鷹也くんと現場で会っても、僕はできるだけ喋らないで、距離感のある親子を作ろうと思いました。劇中では妻に『何をやってもあんたは中途半端だ』と叱咤されるわけですが、非常に男としても自身としても突き刺さりました(笑)。本当に家族が家族でいられたので、みんなで現場を乗り越えて、最後のシーンまで行った気がします。横田選手のエピソードは本当に胸を打つ話で、『関心を寄せてくださった方がこんなにいたよ』というのが彼に届いてるといいなと思います」と想いを言葉にした。

横田さんの先輩で親友でもある北條史也選手を演じた前田拳太郎さんは、実のところ野球経験がなかったという。「バットを振ったのは小学校以来で、野球をやったことがなかったんですが、撮影が始まる前からずっと鷹也さんが一緒に練習してくれました。撮影の休憩時間だったり、お休みの日に早起きして練習場に行って一緒に練習してくれたり。野球経験がないという不安で自信がなかったんですが、鷹也さんの作品にかける思いや僕を引っ張ってくれる背中を見て、僕もしっかりそこに向き合っていかないとなという思いでやらせていただきました」。

また、スクリーンいっぱいに広がる横田家のあたたかさについて姉の真子を演じた山崎紘菜さんは「実は家族が揃うシーンが意外と少なくて、撮影期間も短かったので、どうやって家族の空気感を出したらいいんだろうと考えたときに、物理的な距離を近くしようと思ったんです。グイグイ近づいたり、ハグしたりしていたので『グイグイいっちゃって本当に申し訳ございません』と言ったら『全然いいから、どんどん来て』と京香さんがおっしゃってくださって。すごく懐の深い家族の元でお芝居できて嬉しかったですし、それが映像でも表現できていたらいいなと思います。短い時間でしたが、おふたりの娘で慎太郎くんのお姉ちゃんになることができて、とても幸せな期間でした」と撮影裏を語った。

さらに阪神の金本知憲監督を演じた加藤雅也さんも野球経験が少なかったことを監督に相談したら「兄貴でいてください」と言われたそう。それを受けて「現場では、皆さんとちょっとコミュニケーションを取るようにしていました。金本選手のことはテレビで観ていたので、勝手に阪神の選手だと思い込んでいたんですね。僕が関西の人間なので、関西弁でいけるなと思っていたら、金本さんは広島の人で、関西弁はほとんど封印されてしまいました(笑)」と笑いを交えながら振り返った。
キャスト&スタッフ陣の熱い想いが会場中にインフルエンスしていった上映後舞台挨拶。最後に見城社長は「何も言うことはないです。とにかく、この映画でちょっと人生が変わったとか、動いたとかって思ってくれたら嬉しいです」、秋山監督は「100年後の名前も知らない誰かにちゃんと届く映画であると信じています。最後に『全ての横田慎太郎に捧ぐ』という見城さんのコピーがあるんですが、僕もまた1人の横田慎太郎だと思いますし、観てくださった皆さんの心に、人生に、何か響いてくださったら、それだけで幸せです」、松谷さんは「1人でも多くの方にこの作品と慎太郎さんのことを知っていただきたいので、ぜひ皆さんのお力も貸していただけたら嬉しいです」、鈴木さんは「素晴らしく清らかに生きた横田慎太郎選手のことと、彼を大切に思った周りの人たちの素敵な実話ですので、どうぞ多くの人に広がりますように祈っています」とメッセージを送った。横田さんが紡いだ奇跡、そしてその生き様はぜひ劇場で見届けて。
【11月28日(金)全国公開!】『栄光のバックホーム』

製作総指揮/見城 徹 / 依田 巽
原作/「奇跡のバックホーム」横田慎太郎(幻冬舎文庫)
「栄光のバックホーム」中井由梨子(幻冬舎文庫)
脚本/中井由梨子
企画・監督・プロデュース/秋山 純
出演/松谷鷹也 鈴木京香
前田拳太郎 伊原六花 ・ 山崎紘菜 草川拓弥
萩原聖人 上地雄輔
古田新太 加藤雅也 小澤征悦
嘉島 陸 小貫莉奈 長内映里香 長江健次 ふとがね金太
平泉 成 田中 健
佐藤浩市 大森南朋
柄本 明 / 高橋克典
配給/ギャガ
©2025「栄光のバックホーム」製作委員会
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