モネ、セザンヌ、ピカソ、草間彌生、藤田嗣治など、コレクション作品144点を「空間」をテーマに紹介する「空間と作品」展が、東京・京橋にあるアーティゾン美術館にて開催中。美術品がどのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継がれてきたのか、新たな視点から作品と向き合える展覧会。美術館でぜひ体感してみて。
インテリアスタイリストと照明家も監修の夢想空間を体感
本展覧会は「空間」という視点から、6階〜4階までフロアごとにテーマが分かれて展示されています。まず最初に足を踏み入れる6階は、作品の展示空間を体感できるようになっています。
先の写真は、さまざまな美術品を現代のインテリアとともに組み合わせて演出した空間風景。6階展示室の一角はインテリアスタイリストの石井佳苗さんが監修しています。自分の部屋に作品があったらこんな感じ?と想像が膨らみます。
他にも、パブロ・ピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》という作品は、ピアニストのウラジーミル・ホロヴィッツも一時期所有をしていたということで、彼が自邸の居間に飾っていたことが想像できるよう作品の前には革のソファーが配置されていて、実際にそこに座って鑑賞することができます。
円山応挙の《竹に狗子波に鴨図襖》は、畳の小上がりに靴を脱いであがって鑑賞ができます。襖絵が製作された当時は、天井照明ではなく横方向からの外光に照らされていたことをイメージし、展示室がある場所の太陽の動きに合わせて明るさが変わるような特殊な照明が設置されています。
普段、美術館で観るような作品の展示方法とは異なっているため、アーティゾン美術館で過去に観たことがあるという作品でも、また新鮮な気持ちで鑑賞することができますよ。
5階は作品の持ち主に、4階は作品の額縁に注目
今回の展覧会では作品そのものの説明は最小限で、作品の「まわり」に注目したコメントが添えられています。5階では、作品の持ち主にまつわるストーリーに、4階は絵画と空間とを視覚的に繋ぐ役割を果たす額縁に目を向けています。
たとえば、マイクロソフト共同創業者ポール・アレンが所蔵していたジョージア・オキーフの絵画であったり、「松方コレクション」を築いた松方幸次郎旧蔵のマネの自画像が、かつての持ち主や関係した人物の情報とともに展示されているので、人物を思い浮かべながら鑑賞するとまた趣も変わってきます。
次に紹介する写真は4階の展示室にずらりと並ぶマティスの作品。ひとつひとつ額縁が違っています。
額縁のことにだけ触れる作品説明はなんとも斬新! でも、館内のWi-Fiに接続して作品の横にあるQRコードを読み込めば、詳しい作品の情報を知ることもできますし、アーティゾン美術館の公式アプリでは無料で音声ガイドを聴くこともできます。ゆっくりじっくり作品を楽しむ環境が整っています。
涼しい美術館は、暑い夏の休日の過ごし方としてもおすすめです。作品のまわりに想像を膨らませて、少しいつもよりゆっくりと鑑賞してみてはいかが?