スタイリスト青木貴子さんによる、素敵な人に一歩近づく生き方指南。こんな時代だからこそ、前を向いて歩いていくためのヒントをお届けします。
窮地に現れるヒーローとは…
突然ですが映画や小説に登場するヒーローやヒロインって当然のように格好良かったり素敵な場合が多いですよね。ヒーローは“勇敢だし、困難に立ち向かうし、正義の味方”といったキャラクター。誰かの窮地を救うために戦ったり力を尽くします。だから最終的には敬慕の対象になったり、英雄として讃えられます。映画や小説の世界のヒーローやヒロインは人並み外れた能力や優れた容姿の持ち主って設定が多く、それがヒーロー、ヒロインの条件みたいにちょっと勘違いされそうですが、肝心要なのはそんな要素ではなく、やっぱり「窮地を救う行為や困っているひとへの心配りがささっと自然に出来ること」なのではないかと思います。その行為が結果、ヒーローやヒロインを生むきっかけとなる。苦しかったり困った時に助けてくれたひとってすっごく素敵に思えますものね!
実は先日、とっても大切な時計をなくしてしまうという大ピンチな経験をしました。それは私が生まれた時に父が母に贈った、私と同じ時を刻み続けていた時計。成人になった時、母が私にと託してくれたプレシャスピースだったのです。しかも父はとっくの前に逝ってしまっているので、どこかで落とした!と気付いた時の「取り返しのつかない気持ち」は半端なかったです…。
時系列でその日の行動を追って電話をしたり、落としたかもということろを見に行ったり悔いのないよう全てやりました。警察には当日の夜に届け出をし、落とし物検索をしてもらったのですが該当はなく、しゅんとして家路に着きました。ああ、なんでだったんだろうって、もう自問自答の応酬。着けて出なきゃよかったなとか、どのタイミング? なんで? どうしてー!?ってぐるぐる。あまりにもショックが大きく誰かに聞いてほしいという気持ちと、藁をもすがる思いでSNSにそのことを投稿しました。
すると多くの人から心配や励ましの言葉、対処法やアドバイス、体験談、大切なものを無くした時の心持ちや意味など、さまざまなメッセージを頂きました。これが本当に嬉しかった、心が救われました。暖かい気持ちが身に染みるってこういうことねー! 優しい心配りが人を助けるってことを心底体感しました。多くの思いやりを頂き感謝するとともに、困っているひとや辛い思いをしているひとに寄り添うことは大事なんだなって改めて感じ入りました。時計をなくしたことはとっても悲しいショッキングな出来事だったのですが、厚意の威力を感じることが出来たことは素晴らしい経験になりました。
「心配り」がピンチを救う
翌々日、警察から「届出の時計に該当するかもしれない時計が上がった来ました」と連絡が。急いで警察署に向かい運命の対面! わぁーーーーーっ! 戻ってきたっ!! 嬉しくて思わず涙。親切な方が拾って届けてくれていました。本当に本当に有り難く、感謝です! 良い人ってちゃんといる!という現実を知ることができて嬉しかった。御礼をしたいと思ったのですが匿名希望の方だったので、直接気持ちを伝えることは残念ながら叶わず。神社にお詣りして御礼とその方のご多幸をお祈りしました(これしか思いつかなかった)。
無事発見の旨もSNSに投稿。心配してくれたみなさんも、とても喜んでくれました。日本はまだまだ良い国だ! それがわかって良かった嬉しい!というコメントも多々頂きました。時計紛失騒動はハッピーエンディングでめでたし、という結果になりました。
今回の経験で強く思ったことがあります。窮地に陥ったときは、まずは自分で出来ることを懸命にやってみる。今回のケースではダメもとと思いながらも警察に届出して良かったです(落とし物の場合は警察に届けましょう。時計を2回落として2回とも警察から戻って来たという人がいました!)。そして一人で抱え込まずに周りに頼ったり聞いてもらったりしましょう! 心持ちが全然変わります。
窮地に陥っているひとがいたら、思いやりの言葉やアドバイスなんでも良いです、心を配ってあげましょう。それが直接的な解決に結び付かなくても、必ずや相手の力になります。心配してる、大丈夫?の一言でもピンチの時は助けになります。
今回の件、時計を拾ってくれた人、励ましや喜びのメッセージをくれた人、私にとってはみんなヒーローやヒロインだ!って思いました。「強いからヒーローなんじゃない 喜ばせるからヒーローなんだ」。これはアンパンマン作者やなせたかしさんの名言だそうです。とっても良い言葉ですよね。アンパンマン的ヒーローやヒロインがいっぱいの社会、素敵です。「相手を思う心持ちとそれを実行すること」が誰かのピンチを救います!