暮らしを豊かにする情報には常にアンテナを張っておきたいもの。フリーライターの和多亜希さんが、取材から得た今知っておきたい情報をご紹介。
現代アートとは?
現代アートといっても、何のことだか分からない人も多いのでは?
定義はまちまちとはいえ、一般的には第2次世界大戦後の1950年代以降から21世紀にかけて制作された美術作品のこと。そもそも新しい表現に挑戦する芸術活動で、絵画や彫刻だけでなく、映像や空間芸術まで幅広いのだとか。
身近なところではTシャツなどのデザインでもよく見かけるポップアートも現代アートのひとつ。現代アートが社会に対する問題提起でもあるように、ポップアートはより身近なものを題材にして表現しているため、華やかさが目立つ作風のせいか、私たちにもとっつきやすいのかもしれない。
そして、近頃は現代アートが花盛り。
2022年はバンクシーやアンディ・ウォホール、岡本太郎などの展覧会や、3年に1度のアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」も開催。直島のシンボルである草間彌生さんの「南瓜(かぼちゃ)」はあまりにも有名だ。見る人にインパクトを与え、インスタ映えにももってこい。社会風刺を描き、考えさせられるテーマが多いのも現代アートの魅力かもしれない。
現代アートといえば、国内での認知度はまだ低いかもしれないが、欧米では圧倒的な人気を誇る「具体」は知っているだろうか? 海外のオークションでは億の値がつけられるほど人気があり、戦後に活躍した日本発のアーティスト軍団のこと。今年は解散後50年という節目を迎え、大規模な展覧会が大阪で開催される。現代アートに触れることは感性のストレッチにもなるというから、「具体」アーティストたちの型破りな作品を肌で感じてみるのもいいかもしれない。圧倒される作品群に、マンネリな発想からの脱却を図れるかも?
日本の現代アートの先駆的存在。「具体」とは?
「具体(具体美術協会)」は、1954年に画家の吉原治良が兵庫県の芦屋で立ち上げ、1972年に解散するまでの18年間、多様な活動を行った芸術集団。機関誌を発行し、野外や集団で作品を見せ、大阪や東京だけでなく、NYやパリなど海外でも展示を行い、大阪万博にも参加。結成メンバーは17名で、最終的には約60名が参加。具体という名は、「精神が自由であることを具体的に提示する」という理念から命名されたという。
「人のまねをするな、今までにないものをつくれ」をコンセプトに、足で描いた白髪一雄、絵の具を詰めた瓶を投げつけた嶋本昭三、電気バルブによるドレスをまとった田中敦子など、誰しもが奇抜でユニーク。大阪の中之島に「グタイピナコテカ(展示施設)」を開設した後は、パフォーマンスやインスタレーションから平面作品へと移行。1950年代後半より西洋のアートシーンで広く認識されるようになり、21世紀に入って欧米での展示をきっかけに再評価が高まっている。
アーティスト集団「具体」の大規模な展覧が大阪で開催
具体の活動拠点である「グタイピナコテカ」が建設された大阪・中之島の2つの美術館で、具体の展覧会が同時に開催(2022年10月22日~2023年1月9日)。「すべて未知の世界へ」をテーマに、まさしく戦後突き進んでいった具体メンバーの歩みが公開される。出品点数は約170点。
「分化」(大阪中之島美術館)と「統合」(国立国際美術館)という2テーマに基づき、新たな具体像を提示するとともに、大阪中之島美術館では具体の空中展覧会「インターナショナル スカイ フェスティバル」の再現も実施(2022年11月15日~20日)。大空での展覧会もぜひ体感したい。
今注目の「アート思考」で自身の感度を高めよう!
近年、ビジネスにおいても自由な発想が得られるとして「アート思考」が注目されている。アーティストが持つ創造性に着目し、アートを鑑賞して常識にとらわれない発想をつかむというもの。そのアート思考を養うのに有効なのが、現代アートだといわれている。アートを通して自分の中でどう感じるか咀嚼することで、常識化したものの見方を変えて、問い直していく。そうすることが、思考や発想の飛躍のヒントにつながるらしい。早速、具体の展覧会に足を運ぶことからトライしてみては?
大阪中之島美術館
https://nakka-art.jp/exhibition-post/gutai-2022/
国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/events/event/gutai_2022_nakanoshima/
参考
2019 STUDY HACKER 「アート」に興味のない人は“2つの大きな損”をしている。一流が美術館通いを好むのも当然だった!
2021 Whitestone Gallery MAIL MAGAZINE 「GUTAI」
2012 artscape アクションなき「具体」―世界美術史の中の「ニッポンの前衛」(「『具体』―ニッポンの前衛18年の軌跡」展レビュー)