映画ライター渥美志保さんによる連載。ジャンル問わず、ほぼすべての映画をチェックしているという渥美さんイチオシの新作『プアン/友だちと呼ばせて』をご紹介。
やり残したことは、恋人の後始末?
親友ウードから「ガンになって余命3か月」という連絡を受け、NYから生まれ故郷のタイに帰国したボス。ウードに「元恋人に“忘れ物”を届ける旅に同行してほしい」と頼まれたボスは、ウードが拒絶している化学療法を受けることを条件に、一緒に行くことにします。2人はかつてNYで一緒に暮らしていて、お坊ちゃまであるボスはウードを誘ってバーを経営するつもりだったのですが、ウードだけが先にタイに戻ってしまったのです。そのきっかけとなったのが、今回尋ねた恋人アリスの存在です。
永遠のプアン(友)でいるために…。後半の展開が見どころ
ところがアリスに“忘れ物”を届けて任務完了!と思ったら、ウードは「元恋人が1人とは言ってない」とのたまい、さらに別の恋人、さらに別の恋人という感じで、2人の旅は続くことに。「つまりこれは『死ぬ前にしたい10のこと』的なロードムービーだな」と思いながら見ていくと、物語はある瞬間からまったく別の方向へと向かってゆきます。つまり2人はいったい何者で、なぜNYにいたのか。そして2人はなぜ出会ったのか。さらに私が個人的に付け加えるなら、NY時代のウードの女性関係は、なぜこんなにも長続きしなかったのか。
そこにはウードだけが知る秘密があり、この旅の最中にボスはその真実を知ることになります。ウードの死ぬ前の本当の心残りは、ボスにそれを隠してきたこと。やがて見えてくる旅の目的は、自分が死んだ後もボスに「友達」として記憶してもらうための罪滅ぼしだということがわかってきます。
タイを代表するイケメンコンビにも注目!
最近ではBLドラマなどで人気のタイですが、映画でもめきめきとその頭角を現しています。その筆頭が、数年前に国際的な大ヒットを飛ばした『バッドジーニアス 危険な天才たち』のバズ・ブーンピリヤ監督。バズ監督の作品は、物語のみでも楽しめるのですが、例えば2人が乗る車が古いタイプのBMW、カセットテープで流れるレトロなBGM、各エピソードの「章立て」のようにクレジットされる町の名前など、語り口や映像がいちいちおしゃれ。ロケ地も、コラートのレトロな街並み、サムット・ソンクラームの聖母生誕大聖堂、チェンマイの並木道、パタヤの豪華ホテルなどなど、そのままタイの旅行ガイドになりそうな風景が満載です。
タイを代表する2人のイケメン俳優ももちろん見どころ。ラストもすごく優しくロマンティックで、爽やかな物語です。
『プアン/友だちと呼ばせて』
監督/バズ・プーンピリヤ
脚本/バズ・プーンピリヤ、ノタポン・ブンプラコープ、ブァンソイ・アックソーンサワーン
出演/トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア AND オークベープ・チュティモン
https://gaga.ne.jp/puan/
2022年8月5日(金)全国ロードショー
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