暮らしを豊かにする情報には常にアンテナを張っておきたいもの。フリーライターの和多亜希さんが、取材から得た今知っておきたい情報をご紹介。
世界初公開作と代表作が一同に
ヴィジュアル・アートのパイオニアであり、アンビエント・ミュージック(環境音楽)の創始者として世界的にも名高いブライアン・イーノ。コロナ禍以降、初となる展覧会『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』が京都で開催(2022年6月3日~8月21日)。場所は京都駅に程近い「京都信用金庫 旧厚生センター」。
世界初公開作品とイーノの代表的な3作品すべてに加え、展示室を持たない日本初公開のオーディオ作品を、築90年の歴史ある建物全体で体感できる。趣向を凝らしたイーノの作品に、何を感じ、何を思うかは観客次第。音と映像の世界に身を委ね、心静かに瞑想にふけってみては?
ヴィジュアル・アートを代表する作品からスタート
会場で手渡されるリーフレットを見れば、巡る順路が一目瞭然。3階建ての建物内をI~Vの順序に、行ったり来たりしながら巡る仕掛けに。
イーノの演出は、音と映像が絶え間なく変化し続けるヴィジュアル・アート。その代表作ともいえる《77 Million Paintings》は、イーノがVisual Music(視覚的音楽)として着想し、7700万通りに変化する音×映像の空間芸術。2006年に東京で世界初公開され、その後アップデートを繰り返しながら世界各地を巡回し、16年ぶりに帰還した。 展示室内へはリラックスできるように靴を脱いで入り、気の赴くまま好きな場所へ。視覚的には絶えず変わりゆく13枚のパネルが印象的とはいえ、会場の奥に設えられた何本もの木の柱や砂山が自然界を思わせ、イーノのアンビエント・ミュージックと調和する。
音のインスタレーションに身を委ねる
《The Ship》は、イーノの特徴的なサウンドそのものを体感できる空間。薄暗い会場内には多数のスピーカーが点在し、それぞれ個別の音が鳴るため、ゲストのいる位置によって聞こえ方が異なる。ソファに座ってじっくり耳を傾けるのもいいけれど、会場内をゆっくり歩きながら音の変化を楽しんでみても。また、スピーカーが視覚的特徴となるよう照明などで空間演出している。
光の変化に、色彩の組み合わせの妙を見る
光りながら常に新たな色彩の組み合わせへと変化していく《Light Boxes》は、LED技術を駆使した光の作品。3つの半透明のボックスの区分けされた各部分の色彩がゆっくり変わりながら、色彩の組み合わせを変えていく。色の濃淡、明暗、色彩などが規則的に移りゆくさまを正面の椅子に腰かけ、じっくり眺めてみたい。光の魅惑的な世界に引き込まれそう。
世界初公開作品は人の顔がテーマ
スクリーンには3人の顔が映し出され、それぞれが別の人物へと移り変わっていく新作《Face to Face》。ランダムなパターンとその組み合わせによって、予期せぬアート作品を生み出す可能性を追求した作品だという。実在する21人の人物の顔が、特殊なソフトウェアを使ってゆっくり変化していく。人種や性別、年齢、目の色、肌の色など関係なく変わりゆく人の顔。本物のひとつの顔から別の顔へと移りゆく過程で、実在しない人や中間的な人の顔など、毎秒30人ずつ、36,000人以上の新しい顔が誕生する。
会場全体を包む「音」を体感して
日本初公開となる《The Lighthouse》は、会場内の廊下や階段、化粧室などどこにいても流れるオーディオ作品。《Light Boxes》や《Face to Face》の展示空間にも流れ、会場内をシームレスに結びあわせている。会場全体がイーノの作品であり、建物を退場するまでその世界観に浸ることができる。最後は「ENO SHOP」で図録や限定アイテムをチェックしてみては?
BRIAN ENO AMBIENT KYOTO(ブライアン・イーノ アンビエント キョウト)
京都中央信用金庫 旧厚生センター
京都市下京区中居町七条通烏丸西入113
http://ambientkyoto.com
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