スタイリスト青木貴子さんによる、素敵な人に一歩近づく生き方指南。こんな時代だからこそ、前を向いて歩いていくためのヒントをお届けします。
“マモル”ことの大切さと難しさ
均衡が保たれているように思われていた世界情勢は、いま起こっている軍事侵攻によってあっという間に形を変えました。日常って脆いなぁというのを実感する日々です。大きな争いが起きると火種はあっという間に全世界へ。世界はつながっているという事実を皮肉なことにある地域の分断によってまざまざと感じさせられました。そして、いまマモルことの大切さと難しさについて考える機会がとっても多い気がしています。
私は「守る」という字を見ると、約束を守るとかルールを守るとか、「決め事や規則などに従う」という意味を最初に思い浮かべます。でも辞書を見ると「侵されたり、害が及ばないよう防ぐ」という意味が1番目に書かれています。
みんながルールを守っていれば何かを侵したり、害を与えたりしないだろうから“何かを守らなきゃいけない”っていうシチュエーションは減りますよね? だから個々が決め事や規則などを遵守することが何よりも先ずは大事なんじゃないかと思います。でも守らないひとや事例が多いから辞書で「守る」を調べると最初に書いてあるのはこっち(害が及ばないようにすること)なんだろうなぁ。
「守る」と「護る」
今回のロシアの軍事侵攻でウクライナの人々は自国を侵されることのないよう、守るために抗戦しています。たとえ命を落とすことになっても国を守る決意をしている人がいる。時として命が代償になる。そんな重い「守る」もあるのだと、平和な毎日では思いも至らなかったことです。侵攻が収まれば命を呈して国を守る必要もなくなります。1日でも早くいまの状況からウクライナの人々が解放されることを願って止みません。
そして誰かをマモルというような意味合いのとき、個人的には「護る」という字が浮かびます。この字は常用漢字には含まれないので、使わないひともいるかもしれませんね(微妙なニュアンスの違いを表現出来るのが漢字の素敵なところ。伝えたい思いによって字を使い分けるとより深く感情を表すことが出来ると思います)。この「護る」は「助ける、かばう、大切にする」といった意味合いが強くなります。神様からのご加護といったときに使う字です。
マモリたいものをマモレていますか?
先日のアカデミー賞授賞式で、俳優のウィル・スミスさんが彼の妻を揶揄したクリス・ロックさんを平手打ちしてしまうという事件が起こり大きく報じられましたよね。このことで大切なひとを「護る」ことの尊さと難しさを感じました。妻を「護ろう」としたウィル・スミスさんの気持ちは心からの家族愛で溢れていたと思います。侮辱されたことに怒りを感じるのは当然のことで、でも殴るという暴挙に出てしまったのは残念なところでした。妻を護ろうとして逆に混乱に巻き込み、たぶん彼女を苦しめたり悲しませたりする結果となってしまったのですから。やられたらやり返すは解決にはならない、それは「護る」ことにはならない。誰かや何かを護るには冷静でいなくってはいけないんだなと感じました。
「守る」にしても「護る」にしても、誰かや何かをマモルには感情と理性をコントロールできる大きな心と正しい行動と揺るがぬ決意が必要。人として器が大きくならないと何もマモレない、そんなことをリアルに考えるきっかけが多い今日この頃。あなたはマモリたいものをマモレル自分でいますか? 多くのひとが、大切な何かを平和的にマモレルといいなぁと思います。
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