映画ライター渥美志保さんによる連載。ジャンル問わず、ほぼすべての映画をチェックしているという渥美さんイチオシの新作『キングスマン:ファースト・エージェント』をご紹介。作品の見どころについてたっぷりと語っていただきました!
キャスト一新で前作以上に面白い!「キングスマン」最新作
ロンドンのテーラーに本部を置く、どこの国にも属さないスパイ組織の活躍を描いた『キングスマン』。英国紳士のファッションに身を包み、アッと驚くガジェットを武器に、世界征服みたいなことをたくらむヘンな敵とド派手に戦う大人気のスパイもの。前作までの3本で、とりあえずの決着を見たシリーズですが、本作では時代を遡り、その始まりを描きます。
時代は20世紀初頭。主人公の英国紳士で平和主義者のオックスフォード公は、南アフリカを巡りイギリスとオランダが戦ったボーア戦争で妻を失っています。彼はあらゆる戦争を回避するために独自の諜報活動をしているのですが、「息子を守って」という妻の遺言に従い、息子コンラッドをあらゆる危険から遠ざけながら生きています。でも若くて血気盛んなコンラッドは、戦争が起これば戦地に赴きたいし、父の活動も手伝いたい。そんな中、ひたひたと第一次大戦の足音が近づいてくるのです。
映画の見どころは、当然ながらアクションです。実は私はこれまでの3本の「キングスマン」は、あまりにも「何でもありすぎ」なところと、主演のタロン・エガートンの可愛さがあんまり理解できず、いまひとつ乗れなかったのですが、今回はすごーく楽しみました。
ひとつは、時代が昔なので「最新の秘密兵器」がアナログだったところ。当時の「最新」は「これをつければ飛行機から飛び降りても大丈夫(→パラシュート)」とかだったりするのですが、実物を知っているものだけに、「え、それで本当に大丈夫?」なんて思わせるブツだったりするのが笑えます。主人公が他人に結構な“無茶ぶり”をして、結局は自分がやるハメになることが何回かあるのですが、そのボケキャラぶりにもどこか育ちの良さが漂って、オジサンなのにすごくキュートです。
そしてもうひとつは、英国人俳優のニューカマー、コンラッド役のハリス・ディキンソン。前作までのタロン・エガートンのファンにはごめんなさいですが、私の個人的な好みは断然ハリスです。「キングスマン」の見どころは登場人物のスーツ姿だと思うのですが、ハリスのスーツ姿のカッコよさったら。背が高いし胸板が厚いし、さらにめちゃめちゃ首が長い!(どうでもいいですね、すみませんw) そしてこのコンラッドが、父親の組織設立の理由に、深くかかわっています。ネタバレなんで言えませんが!
まぁ、とはいえ、映画のぶっ飛んだエンタメぶりは相変わらず。オックスフォード公の前に立ちはだかる悪の組織には、20世紀の悪役が勢揃い。特に怪僧ラスプーチンとのバトルは、イギリスのコメディらしいネタ満載でめちゃめちゃ笑いました。日頃の憂さをスカッと晴らしてくれる1本です。
『キングスマン:ファースト・エージェント』
監督/マシュー・ヴォーン
出演/レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソンほか
(c)2020 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingsman_fa
※12月24日(金)全国公開
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