プロ棋士を目指す者は、幼い頃から独自の育成システム「奨励会」に所属し、21歳までに初段にならなければいけない。それが叶わず燃え殻になった主人公は、AI(人工知能)将棋ソフトの開発という新たな道を見つけ、プロになったライバルと再び戦う機会を得るが・・・。
将棋を知らなくても面白いという、この映画の見どころを、映画ライター渥美志保さんにたっぷりと語っていただきました!(編集部)
吉沢亮×若葉達也、話題の俳優のガチな対決
来年の大河ドラマの主演俳優、吉沢亮の主演最新作は、将棋の世界を舞台に描く青春モノ。最近では藤井聡太プロの活躍で注目の将棋ですが、吉沢さんが演じるのは、その藤井プロも使っている「AI将棋(人工知能)」のソフト開発者です。
将棋の世界で藤井さんのようにプロになるためには、小学生くらいの頃から「奨励会」という独自の育成組織に所属して昇給試験を受けて一歩一歩階段を登っていかなければならず、さらに、21歳の時点で初段になっていなければ、そこでおしまい。藤井さんのように高校生のプロ棋士がいるのはそういう理由からです。
吉沢さん演じる主人公・清田は、小学生の頃からその奨励会に所属しプロ棋士を目指していたのですが、結局は夢叶わず普通の大学生に。そこで出会ったのが「AI将棋」です。プログラマーになった彼は、プロに慣れなかった敗北感と、極められなかった「自分の将棋」のすべてをそれに注ぎ込みます。やがて評判となった彼の「AI将棋」は、プロ棋士との対決することに。その相手が、若葉竜也さん演じる浅川——清田が幼い頃から、暗い闘志を燃やし続けてきたライバルです。
映画は将棋の話ではあるのですが、将棋のルールを知らなくてもぜんぜんOK。というのも二人の対決は、相反する価値観の対決でもあるから。人間と人工知能の対決であることはもちろんですが、正統派として組織を背負う浅川と獣道をゆく一匹狼の清田は、管理と自由の象徴で対照的です。その一方で、なにが何でも勝とうとする二人の姿と、えええ!!!という結末には、逆に「ゲームは楽しむものなのでは?」というアンチテーゼが浮き彫りに。
吉沢さんはもとより、浅川演じる若葉竜也さんがすごくいい。胸に響くのはふたりが抱え続けた「青春の鬱屈」。まあでもそういうのって「中二病」みたいなもので、過ぎてしまえば気恥ずかしいような感じがありますよね。作品はそれを乗り越えたところから振り返って描き、清々しくもあります。
『AWAKE』
監督・脚本/山田篤宏
出演/吉沢亮、若葉竜也、落合モトキ、寛一郎ほか
(c)2019「AWAKE」フィルムパートナーズ
https://awake-film.com/
※12月25日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー