長年の夢だった洋菓子店の開店を目前に、共同経営者でパティシエの友人サラを事故で失ったイザベル。だが、訪ねてきたサラの娘クラリッサに説得された彼女は、娘と絶縁状態だったサラの母ミミ、そして20年ぶりに何故か現れたサラの元恋人でスターシェフのマシューとともに、店をオープンさせるが・・・。
ロンドンの人気デリが監修した世界各国のスイーツも眼福だという、この映画の見どころを、映画ライター渥美志保さんにたっぷりと語っていただきました!(編集部)
イマイチな洋菓子店を繁盛させる秘策とは?
長年の夢だった洋菓子店の開店を前に、共同経営者で天才パティシエの友人サラを事故で失ったイザベラ。いい感じの物件をやっと見つけて、いよいよ店の改装を!と思ったタイミングで、投資家は一斉に手を引いてしまい、サラを失った悲しみも併せて、完全な八方塞がりに。
そこに現れたのは、サラの娘のクラリッサ。母の死の悲しみで生活の軌道を失った彼女は、イザベラと、さらにサラと不仲だった祖母ミミを引っ張り出して、「店をやろう」と説得。さらにそこにサラのかつての恋人で、イケメンのスターシェフとして名が知られているマシュー(この人には、実は別の目的があるのですが・・・)が加わり、いよいよ店はオープンします!
普通のドラマなら、4人が奮闘してオープンした店が大繁盛、「サラ、あなたの遺志を継いだわ」みたいな感じで、気づけば全員が抱えていた喪失感が消えて・・・みたいなところですが、この映画の面白さは、オープンした店が全然流行らないところ。
4人はどうにか店の経営を軌道に乗せようと、知恵を絞り、悪戦苦闘し始めます。メディアに売り込んだり、どうにか知ってもらうために残ったケーキを配ったり、数少ないお客さんに「どんなスイーツが食べたい?」と取材したり。そこからだんだんと見えてきた、ロンドンという町の多様性に着目したアイデアが、店のあり方を変えてゆきます。そしてそれは「多様な生き方の受容こそが大切なんだ」という概念として、特に母親のミミの娘サラへのわだかまりをといてゆきます。
彼女を中心に集まった4人が、血縁を含む「家族的な集団」になってゆくのも、家族の多様性という意味では象徴的です。
映画の冒頭では、イザベラがサラがどれだけ才能があるシェフなのかを「オットレンギの弟子なのよ」と説明します。名前が出たのは、ロンドンで今最も人気の高いデリ「オットレンギ」のシェフ、イスラエル系のヨタム・オットレンギのこと。
この作品のスイーツを監修していて、これがまた可愛くて、美味しそうで眼福です。彼のインスタグラム(https://www.instagram.com/ottolenghi/)ではレシピも公開されていて、ホームパーティーのちょっとしたおもてなし料理などにぴったり。
年末のこの時期、ぜひぜひおうちでお楽しみください。
『ノッティングヒルの洋菓子店』
監督/エリザ・シュローダー
出演/セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コンほか
(c)FEMME FILMS 2019
https://nottinghill-movie.com/
※12月4日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中