どんな服をどんなふうに着るか、それこそ楽しみながら臨みたい自己表現。働く日々のファッションをフィーチャーしたMiu Miu(ミュウミュウ)の2026年春夏コレクションには、心躍るヒントと刺激的なプレゼンテーションが満載。【連載「青木貴子のラグジュアリー案内」】
「生きること」と「仕事すること」、そしてファッションのパワー


デザイナーの交代劇によってメゾンにフレッシュな新しい一面が加えられたり、様々な心踊る素敵なショーが見受けられた2026年春夏コレクション。そのなかで心に深く残ったショーがあります。ミウッチャ・プラダによるミュウミュウの春夏コレクション、テーマは『AT WORK』。
働くということの意味、価値、本質をファッション=装いで表現することに臨んだショーです。労働は挑戦であり、困難に遭遇することでもあり、経験という確かな実を手にする側面も持つ。労働は努力の表現であり、思いやりと愛情の表現でもある。その努力に光を当て、尊さを認識し、讃える。これがミウッチャが今コレクションで選んだテーマ。

「生きること」と「仕事すること」は切っても切り離せないものですよね。だからこそ密接というか。ミウッチャは働くことの意義や意味を投げかけるアイテムとして、労働の普遍的な象徴としての衣服・エプロンに着目。確かにエプロンは家庭でも登場すれば、肉体労働、介護、医療、産業、幅広い働く場所で着用されています。ショーに登場したあるエプロンは世の母親が家庭で身に着けていそうな花柄の優しい感じのもの、あるエプロンは職人が使うような実用的な素材と形…多種多様な素材や装飾使いでバリエーション豊かなエプロンを登場させることで様々なレイヤーの働く人々を表現しました。

働き方も働く内容も多種多様、でも働くって堂々と歩くことよ。仕事に対する「誇りと尊厳」そして「矜持」を持ちましょう、といったメッセージのようなものを感じました。ファッションショーを見るというより、「働くこと」という本を一冊読んだような感覚に。それなのに説明的では一切なく、ファッションとして完成された美しくときめく要素が詰まっています。さすがミウッチャ、知性的なファッションのあり方をいつも提示してくれます。
ファッションは思想を体現し、見えざる言葉を発することができるツールなんだなと改めて思いました。装うことは自らを表現する重要なファクター、そのこともミウッチャは私たちに教えてくれているように思います。つまり誰もが表現者足りうるということ。そしてそれは毎日できることだと思うと、日々の装いにも張り合いや素敵な意味を持たせることができるのではないでしょうか。

たとえそれを他人が見てわからなくても、今日の自分の心持ちを表現できているという感覚を持つことはとても心地の良いものだと思います。仕事が平和的にうまくいって欲しいから今日はグリーンの服で行こうとか、クライアントにプレゼンする日だから奮起の意味で赤いものを身に付けてみるとか。そんなことも自己表現です。装いは自分で決めることができる、ファッションはいつでも味方になってくれる心強い相棒みたいなものですね。
話は戻りますがそんな思いにさせてくれるミュウミュウの春夏コレクション。見応えありますのでぜひチェックしてみてくださいませ。
Miu Miu
www.miumiu.com

