伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、への手紙。【連載「〒ののポスト」】
私を怖がらせた暗闇へ

私には、「怖かったこと」があります。あまりに怖くて、普通にしていられず、人とまともに会話もできないかもしれないなんて本気で思った瞬間もありました。
自分のなかにある「怖い」という感情が、どこまでも私を怖がらせてくるのでした。それは、出口のないトンネルに似ていたかもしれません。
呼吸が落ち着かなくなったとき、それは現れるのでした。
たとえば、ただの暗闇。狭い空間は特にでしたが、明かりがついていないときによくありました。自室のベッドで眠りにつく前も、怖かった。
それから大きな音や大勢の人の気配や、自由に身動きができない状況でも同じような感覚に陥ることが多くありました。
条件が揃うとあっという間に私はその状態になりました。
誰か他の人といるから大丈夫。大好きな友達といるから大丈夫。ということでもなく、誰といてもダメなものはダメでした。でも、ひとりきりでも怖くてたまらないのです。冷や汗をかきながら、どうしたものかと悩んでいました。
このままじゃ、仕事中に迷惑をかける日が絶対にやってくる。こんな私がずっと続くのならば、全部を諦めなくちゃいけないかもしれない。と病院に行っても、なかなか良くならなかったときは思いました。
でも、だんだんと、ゆっくりでしたが怖さに飲み込まれていく回数が減っていきました。
それは何がきっかけだったのかは良くわかりません。開き直って人に話しまくったこともよかったのかもしれません。それから先生が仕事は絶対に辞めちゃいけないよと言って、私の背中を押してくれたのも大きかったと思います。
長い長いトンネルのようでした。走り続けていればだんだんと出口に近づける。少しずつだったけれど暗闇も怖くなくなってきました。まぁ全く怖くないといえば嘘になるけれど、暗闇に怯えながらでも歩いていれば、多少は慣れてくるのです。
私が怖いと怯えていたのは、今までできていた普通のことを全くわからなくさせる暗闇です。どんどん吸い込まれていくことで、自信を無くしていく、あの暗闇に沈む時間たちが怖かった。『当たり前の私』なんてあっという間に崩れる。それが長らく私にくっついている不安感なのでしょう。
それでも私は、応援してくれる人の存在や、逃げないことで得られる自信を守りたい。
そんな失いたくないものを抱きしめていたいから、これからも走り続けたいです。
山口乃々華より
山口乃々華(やまぐちののか)
3月8日生まれ、埼玉県出身。2020年末までE-girlsとして活動後、2021年より女優として本格的にキャリアをスタートさせる。映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズ、Hulu版『崖っぷちホテル!』などに出演し、映画『私がモテてどうすんだ』ではヒロイン役を務めた。2022年にはミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』で初主演を果たし、以降「SPY×FAMILY」、a new musical『ヴァグラント』、『ラフへスト~残されたもの』、『ピーター・パン』と、ミュージカル作品を中心に舞台での評価を着実に高めている。2026年2月にはミュージカル『SERI~ひとつのいのち』2026では再び主演を務め、7月からは昨年に引き続き、
ミュージカル『ピーター・パン』でウェンディ役として出演予定。近年は舞台に加え、縦型ショートドラマへの出演や、音楽ライブ「ヤマグチ春の初祭り」を5月16日(土)に羽田で開催するなど、表現のフィールドをさらに広げている。
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