さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
第44回「なまけもの妖怪」

この連載をとても楽しみにしてくれている知人が何人かいる。
新エピソードがアップされるや否や「今月も面白かったです。小竹さん、いろんなところに行っていろんな人に会って、毎日充実している様子が伝わってきてうらやましいです」的な感想を送ってくれる。特に毎年恒例(勝手に私が恒例化した)の「夏の絵日記」がアップされたあとは、「私も小竹さんのような歳の取り方をしたいです」などと何人かにいわれたりもする。
そういう感想を見聞きするたびに、嬉しい反面、「すまない…」とヘビー級罪悪感にさいなまれる私。
なぜなら、この連載で私が書いたり載せたりしていることのほとんどが私の非日常的な部分を切り取ったものだから。
言い換えると、私の毎日の生活での特別な出来事や、誰かに会ったこと、どこかに行ったことなんかは、ほぼほぼこの連載であらわにしている。
執筆業をなりわいとしている私は、仕事は完全に自宅でやる。しかも趣味が読書と料理と韓国ドラマで、これまた家の中で楽しめる。よって、私は家から1歩も出ない日がびっくりする位しょっちゅうあるし、何日も連続で外出しないことだって多々ある。
例えば、昨日の私の1日を振り返ってみよう。
前日の夜遅くまでNetflixで韓国ドラマ「コネクション」を見ていたので、8時半まで寝てしまった(普段は7時頃起床)。
洗顔して、コーヒー(冬でもアイス)を飲んで、この連載の原稿を書こうと書き始めるが、「なんかこれ違うな」とヤル気が失せ、途中まで書いたものを全て消去。
ここ数ヶ月、体調を崩しがちで通院を繰り返している私は、今日も偏頭痛をやり過ごしながら渋々シャワーを浴びて、渋々風呂掃除をして、渋々洗濯をする。
それだけでもう本日分のエネルギーを全て使い果たしたかのようにヘトヘト。
シャワーを浴びたら気分が一新されてすらすら原稿が書けるはず!という目論見(もくろみ)は無惨にも砕け散る。
何をするよりも面倒くささが勝って、朝食も昼食も作る気がしない。だから食べない。で、昨夜の韓国ドラマの続きをダラダラと見る。
ドラマを見続けていた午後3時、ピコが下校。今日はパパもママも朝から仕事なので、我が家にやってきた。
本当にいつも不思議になるのだが、ピコの顔を見た途端、頭痛が軽減され、気持ちがシャキッとする。ついでにお腹がすごく減る。この子は、私のエネルギー源。
起きてから7時間後、今日初めて、「なまけもの妖怪」から「まともな人間」に変身する私。
ピコが「学校で必要な文房具がある」というので、100円ショップに行きがてらすぐ近くのパン屋にも行く。
外出時間30分で帰宅して、ピコはおやつ、私はパンを食べ、ピコはすぐに習い事へ。
最近の小学生はみんな本当に忙しい。間違いなく私より忙しい。
ピコがいなくなった途端、あら不思議、一瞬にして私は再びなまけもの妖怪に戻り、当然のように韓国ドラマを見る。
眠くなってきたので昼寝をしようかと思った矢先、インターホンが鳴る。植栽業者のTさんだった。
我が家のベランダに植えてあるオリーブの木の葉が先月すべて散り、木肌の色も変わってしまい、もしかして蘇生不可能かも…と思ったので、昔からお世話になっているTさんに見てもらおうと「いつでもいいので、近くに来た際に寄ってください」と連絡していたのであった。
自分でお願いしたのにもかかわらず、人に会うのが面倒で、ほんの一瞬「居留守をつかおうかな」などと人間失格なことを思う私。ただのクズ。
Tさんを迎え入れ、オリーブの木を見てもらう。やはり、今年の酷暑が主な原因で枯れてしまったとのこと。10年くらい元気に育っていたのに。夏のヤロウめ。だから夏は嫌なのだ。
後日新しい木を植えることに。
キビキビとした動きで、我が家のベランダにある他の植物の状態も観察してくれているTさん。絶対に私より歳下だと思っていたらまさかの私より歳上だった。
元気で精悍なTさんと、覇気のない自分のあまりもの違いに、いい得ぬ敗北感を抱く。
もしかしたら枯れてしまっている私の根性も植えかえてほしい。
Tさんが帰る頃には外はすっかり暗くなっていた。
もう冬だから日没が早いなぁ、今年は私には秋なんて来なかったよなぁ、一番好きな季節なのに秋ってもはや絶滅危惧種だよなぁ、などと思いながら、性懲りもなく再び韓国ドラマに寄生。
夜8時くらいに無性に空腹になったので、大量の蕎麦を茹で、流水で冷やし、山ほどの千切り大根と釜揚げしらすをのせて食べる(マイブーム)。
料理が趣味といいながら、蕎麦を茹でて大根を千切りにしただけ。
そしてまた、煎餅やらチョコやら食べながら寝るまで韓国ドラマを見る。まさかのたった2日間で全28話の「コネクション」を完走。
0時過ぎに寝室に行き、敬愛する桜木紫乃さんの小説『情熱』を読みながらいつの間にか寝落ち。
私の日常のほとんどがこんなもんである。
私をリア充みたいに思っているみなさん、すいません。実際の私は絵に描いたようなものぐさで、1年の半分くらいは不健康ななまけもの妖怪として在宅しております。
そんな私も、執筆するときだけは、まるで鶴の恩返しの鶴がはたを織っているがごとく、「決して書いている姿は見ないでください」といいたいくらい真剣にがむしゃらに集中してやっているので、ご容赦ください。
What I saw~今月のオフショット

石井杏奈とランチ。すごく久しぶりに会ったので、話が止まらず。昔から私と彼女と彼女のお母さんとの3人グループラインがあるくらい家族ぐるみの仲。女優として大活躍してくれていて、我が娘ながら(1ミリも血はつながってないが)誇らしく思います。

いつの間にかプロレスデビューをはたし、いつの間にか「ダンサー、プロレスラー」の肩書になっていた武知海青(THE RAMPAGE)。プロレスの試合が決まるたびに、愛する我が子(1ミリも血はつながってないが)が怪我をしませんようにと、本気で祈る私であります。

YOUと2人で、今日子出演の舞台「私を探さないで」(作・演出 岩松了)を観劇。岩松さんの作品は常に考察しがいがあり、私的に「決して裏切らない信用できる舞台」。全てのキャストのお芝居も素晴らしく、「いいものを見せてもらった」とYOUといい合う。
小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、中島美嘉、小泉今日子など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。

