4月25日(金)より全国公開される映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、お笑い芸人の福徳秀介さん(ジャルジャル)が作家デビューを飾った同名作品を実写映画化。思いがけない出来事が運命を変える、恋しくて切ないラブストーリーで冴えない大学生活をおくる主人公・小西徹を演じた萩原利久さんにインタビュー!
“セレンディピティ”がもたらす最高純度のラブストーリー

ドラマ「美しい彼」で大ブレイクを果たした萩原利久さんは、以降も話題作に絶えず出演している演劇界の若き才能。最新作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』では、本来の輝きと爽やかさを封印し、うっそうとした影のある主人公・小西を怪演する。
「彼の先を僕は応援したいです。小西はすごく一生懸命生きているんです。周りの人から見たら変に映っているかもしれないけれど、至って真面目に生きているし、彼のなかで考えて考えて悶えている。感受性が豊かだから生きづらさを感じているのかもしれないです」
「人として好きなところはたくさんある」と語りながらも、「自分のなかには落とし込まずに別軸に小西を作った」という萩原さん。シンプルすぎて複雑なのか、シンプルに複雑なのか。小西というキャラクターは痛々しくも愛らしい、人間らしい人物だ。
「小西を演じるうえでは、僕の要素は削ぎ落としました。それは、僕がめちゃくちゃポジティブだから。小西のように『誰々にこう思われているかもしれない…』と、僕は悩めないタイプです。そう思ってしまう気持ちもすごく分かるんですけど、『自分でどうしようもないじゃん』と割り切れるんです。僕自身、合理的な部分があるしすぐに行動しないと気が済まない性格なので、冷たい言い方をしてしまうと小西の“痛み”を分かりきれていない側面があるのかもしれません。だから、演じた後の今も、小西のことを簡潔に説明しようとしても難しいのだと思います」

そんな小西という役柄に対して萩原さんはこれまでにない新しいアプローチで挑んだのだそう。
「今までは、現場に入る前に役としての軸を自分のなかに作っていくスタイルでした。自分のなかだけなので、現場で変わることは多々あるんですが、軸をあらかじめ準備していればどんなことがあったとしても、役として大きくブレることはない。でも小西は軸を作るのが難しくて、今までのやり方ではダメだと思ったんです。事前にイメージできることは考え尽くして、あとは現場でキャッチできるものを全部キャッチして、演じながら整理していくスタイルにしました。アプローチを変えてみたことで学びが多かった役柄でしたし、今後のお芝居に活かせるなと発見もありました」
“現場でキャッチできるもの”、それは大九明子監督であったり原作者の福徳さんの母校・関西大学や実在する銭湯&飲食店でのロケーションであったり。アンテナの量を増やして小西を作り上げた。
「事前に準備をするいつものスタイルは、自信をつけるためというよりかは不安を消すためにやっているんです。でも今回はそれができなかったから、キャッチできるものを探し続けた日々でした。いちばん力になったのは関西大学での撮影。あの空気感は作ろうと思っても再現できるものではないです。普通に授業をしている大学にお邪魔して、リアルな学生から吸収できたことがたくさんありました」

小西を取り巻くのは、恋のお相手・桜田花(河合優実さん)、バイト仲間のさっちゃん(伊東蒼さん)、大学で唯一の友人・山根(黒崎煌代さん)の3人。ほぼ同世代が揃ったフレッシュなキャスト陣による恋愛模様が繊細に描かれる。
「河合さんは言葉を届けるのがお上手な方だと思いました。河合さんの発する言葉がスッと体に入ってくるのを体感したんです。極論、お芝居はセリフがあるので向こうの言葉を聞かなくても形としては成立するじゃないですか。でも河合さんの言葉は僕の芯に届きましたし、極めて日常会話に近い状態を作ってくださいました。黒崎くんは、観ていただくと分かるとおり、難役です。文字を読んだだけでは音声が再生されない独特のセリフを自分のものにしていて、初日の日に『うわ! 山根じゃん』って驚きました。伊東さんは本当に素晴らしかったです。小西とさっちゃんのシーンは、小西の評判が最悪。いろんな人に『何やってんだよ、小西』って言われたシーンは、伊東さんの10分ほどの独白で、伊東さんの力でできた良いシーンです。皆さんステキな役者さんで、僕は信頼していたので思い切ってできましたし、すごく楽しかったです」
今作はユニークな表現や言葉遊びが効いているのが魅力のひとつ。言葉の端々から、唯一無二のコント師・福徳さんらしさやシュールかつ情熱的な作品を手がける大九監督らしさを感じる人もいるのではないだろうか。
「幸せと書いて“さちせ”と読むセリフがあるんですが、すごく良いですよね。字面も言葉も知っているけれど、読み方が違うだけで特別な言葉に聞こえるような感じがします。本来の言葉以上に、言葉の意味を知った気がして好きでした。この映画の言葉のチョイスには『確かに』と思うことが多くて、独特な着眼点に面白さを感じていました。原作が福徳さんということもあって、一見『ちょっとコントチックなのかな』と思ってしまうけど、むしろ人情味あふれたステキなお話で、良い意味で裏切られたなという印象でした」

言葉の表現が印象的な映画にちなんで、大事にしている言葉を聞いてみると、大のバスケファンとしても知られる萩原さんらしい回答が。
「『Mamba Mentality(マンバメンタリティ)』という、バスケットボール選手のコービー・ブライアントの言葉です。ご自身のバスケへの向き合い方を表した言葉なんですが、僕なりに噛み砕くと『明日が今日より良い自分になるように、日々努力しようよ』という言葉だと思っていて。すごくシンプルだけれど、継続し続けることって簡単なことではないじゃないですか。彼が伝説のスーパースターだからこそ、この言葉に説得力があるし、マネしてみたくなる。ダラダラしてしまいそうになるときは、この言葉に励まされています」
運命を変える出会い、思いどおりにいかない現実。リアルな感情を生々しく切り取った本作は、全世代に響くボーイミーツガール的ストーリー。登場人物たちが「今日の空が一番好き」だと言える日は来るのか、物語の世界に足を踏み入れてその恋路に注目してほしい。
「小西と桜田を観て、懐かしいと感じる方もいらっしゃると思いますし、今の自分と重なる方、はたまたちょっと先の未来の話に感じる方もいらっしゃると思います。ご覧になる方の環境や経験で、刺さる言葉やシーンが違うと思うので、いま感じたことを純粋に楽しんでいただきたいですね。そして、何年後かにもう一度観ていただけると、当時とまた違う感情になって面白いかもしれません」
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

出演/萩原利久 河合優実 伊東蒼 黒崎煌代 安齋肇 浅香航大 松本穂香/古田新太
監督・脚本/大九明子
原作/福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
配給/日活
※4月25日(金)より全国公開!
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萩原利久(はぎわらりく)
1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。2008年にデビュー。ドラマ「美しい彼」(21/MBS)で注目を浴び、以降、映画・ドラマに多数出演。近年の主な出演作に、映画『劇場版美しい彼〜eternal〜』(23)、『ミステリと言う勿れ』(23)、『朽ちないサクラ』(24)、『キングダム大将軍の帰還』(24)、『世界征服やめた』(25)、ドラマ「月読くんの禁断お夜食」(23/EX)、「真夏のシンデレラ」(23/CX)、「たとえあなたを忘れても」(23/ABC)、「めぐる未来」(24/YTV)、「降り積もれ孤独な死よ」(24/NTV)、「リラの花咲くけものみち」(25/NHK)など。また、映画『花緑青が明ける日に』の公開を控えている。
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