仕事はもちろんプライベートで日頃感じたこと、体験したことをGINGERだけに本音で綴る田中みな実さんの貴重な連載。今回は、女友達のお話。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今月のテーマ:愛すべき同期
産休、育休をとっていた会社員時代の同期がそろそろ復職するとのことで、忙しくなる前に一泊で温泉にでも行こうかという話に。最後に行ったのが産前ギリギリだったから、1年ちょっとぶり。
14年前、新入社員研修で荷物が増えて困っていた私に彼女がエコバッグを貸してくれたのをきっかけに仲良くなり、以来、現在に至るまで頻繁に連絡を取り合っては馴染みのごはん屋さんへ足を運んだり、互いの家を行き来したり、旅行へ出かけたりしている。
私にとって一緒に旅ができる女友達は希少で、今となっては彼女だけかもしれない。気心知れて、気楽で、良い意味で“適当”な私たちの関係。いっつもふたりして好き勝手に話をしてスッキリしているけど、解決法を見出したいわけでも、説教されたいわけでもないから、内容は聞いているようで聞いていない。深刻な議題についてはとことん真剣に付き合うけどね。そんなスタンスが心地よい。
これだけ長く一緒にいるから、喧嘩みたいなことも幾度かあった。言い合いになって、距離を置いて、暫くすると、どちらからともなく歩み寄っては仲を深めていった。
初めて彼女と気まずくなったのは、忘れもしない、新入社員研修が休みの週末の、旅先でのことだった。福利厚生についての座学で会社の保養所の存在を知った私たちは、「温泉ついてるよ! 行っちゃう?」と盛り上がり、学生気分のまま旅行感覚で会社が所有する箱根の施設の予約をとった。入社して間もない身分で保養所を利用するだなんて随分調子に乗った新入社員だけど、そんなことにも気付けないほど若くて無知だった。
行きのロマンスカーで周辺の人気スポットをリサーチしていると、早朝からやっているパン屋さんが有名らしいとの情報が。「じゃあさ、朝3時に起きて、3時半に出て、30分くらい歩くとして、4時には着くね! 早起きしよう!」と、はしゃいだ。
しかし、列車でビール、夕飯に日本酒やらワイン、食後に缶チューハイをあけてすっかり気持ちよくなった彼女は案の定、起きられない。何度も「その辺にしておいたら?」「あした起きられる?」と声をかけたのに、言わんこっちゃない。
「いいよ、私ひとりで行ってくる。欲しいパンある?」と聞くと「いらないー。てゆか、朝ごはんもいらないくらいだわ」…って。今となっては笑い話だけど、あのときは 二度と一緒に旅なんかするものかと腹を立て、帰りのロマンスカーではほとんど口をきかなかった気がする(笑)。
でも、年月が経ち、彼女のそうした部分にも実は救われていたと気付かされる。私はあらゆることに気付きすぎるし、細かいことが気になってしまう。彼女のおおらかで、少しいい加減で、臨機応変なところが実は心地よい。こんなに長い間、何かと面倒な私と一緒にいてくれるのは、いられるのは、彼女だからだろうと感謝している。
私の大ファンでいてくれるのも内定中の学生の頃から変わらない。雑誌で特集があれば自分のことのように喜んで、買い逃すまいと、予約注文までして、隅々まで読んで感想をくれる。
「田中さん、表紙をやることが増えたから雑誌が増えちゃって大変だよ〜」と笑ってくれる彼女に、長年支えられてきた。
今回の温泉旅行も、行きの列車で彼女は缶チューハイを3本もあけている。最初の1本は私がCMをしているものだった。まったく憎めない、愛すべき同期。
今月のみな実さん
ひと口いただきました!
列車に乗り込んで座席に着くと、彼女の姿はなく、代わりに缶のお酒が数本きれいに鎮座していて大笑い。「あ、トイレ行ってた〜」って戻ってきて、席に着くなり缶を開けてグビグビ。あまりに美味しそうに飲むから私もひと口いただいちゃいました!
田中みな実(たなかみなみ)
1986年11月23日生まれ。埼玉県出身。近年の出演作に「悪女について」(NHK)、「あなたがしてくれなくても」(CX)など。ラジオ番組「田中みな実 あったかタイム」(TBSラジオ)毎週土曜18時30分〜では、12年以上パーソナリティを務める。2023年12月27日よりAudibleで「生きるとか死ぬとか父親とか」の朗読が配信。