圧倒的な輝きを自らの努力で実現し、そして放ち続け、自身が“うつくしい”と称されることも多い田中みな実さん。彼女が今感じている「うつくしきもの」「心が磨かれるもの」について伺ったインタビュー。記憶に残る風景について語ってくれた。
静まり返った朝の湖
「撮影続きで、さまざまなノイズに、視覚的にも聴覚的にも少しだけ疲弊していたある日の早朝。ロケ先は信州の湖畔で、目の前には、怖いくらいに静まり返った湖が広がっていた。
シンと凪いでいて、音もなく人もいない。その場所に暮らす人たちにとってはごく当たり前の風景かもしれないけど、日頃たくさんの音や人に囲まれている私にとっては、特別だった。音のない壮大な景色にグッと引き込まれ、強張った心が少しずつ解れていくよう。
都会の喧騒も嫌いじゃない。ただ、凪いだ景色がこんなにも心を穏やかにしてくれるなんて、こんなにも欲していたなんて…。と気付かされ、時に身を委ねたくなった」
ピンク色に染まった朝焼けの空
「写真集の撮影でスペイン・バルセロナを旅したときのこと。まだ早い朝の海の浅瀬にひとり、ポツンと立つシーンは、何度思い返しても、現実とは思えない。朝日が昇ると、周りがふわーっとピンク色に染まって、まるでピンクの靄に抱きしめられているような、幻想的な体験だった。
もっと強く、力強い光を放つ朝陽しか知らなかったから、豊かな包容力が意外で、あたたかくて、身動きがとれなくなった。あの包み込まれるような感覚を私は一生忘れない」