自宅で観葉植物を育てている田中みな実さん。すくすくと成長していく植物を見て、自分のこれからを考えたそう。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今月のテーマ:エリック、がじゅくん、ポトス先輩
うちには愛犬の他に観葉植物がいて、その子たちを愛でるのも幸福なとき。
小さな葉っぱが生い茂る、立派なフィカス・ストリクタの“エリック”は、我が家のリビングに悠然と佇み、空間をふくよかなものにしてくれる。
『グータンヌーボ2』のレギュラー放送が終わる際に共演者の満島真之介くんがくれたガジュマルの木“がじゅくん”は、やわらかな陽が差し込むキッチンにちょこんと鎮座する癒し系。
一番の古株で3度の引っ越しにお付き合いいただいている“ポトス先輩”は定位置の空気清浄機の隣でオシャレなスツールに腰かけ、モリモリ逞しく成長を続けている。アラフォー独身女が植物に名前なんかつけて声掛けをしているのは想像するだけでギョッとするけど、ネタでもなんでもなく至って正気。だからイタイと言われるのか…(笑)。
何も昔から植物愛が強いわけではない。ひとり暮らしを始めたころ、友人の家を訪ねると、観葉植物の葉っぱの裏側にびっちりと小さな虫が寄生しているのをみて青ざめた。何があっても家にそんなものは置かないと心に決めていたのに、何年かすると、居住空間に緑がないのに息苦しさをおぼえた。
聞けば、室内で育てる分には虫がわかない種類もあるというので思い切って一鉢迎えた。それが件のポトス先輩。そのすぐあとにご縁があって、背の高いスラっとしたゴムの木を迎えたこともあったけど、冬になると見事に葉を落とし、みるみる生気を失っていくのがいたたまれなかった。引っ越しが決まり、その子を連れていくか迷っていた矢先に植物のプロフェッショナルと出会う。
藁にも縋る思いで家に来ていただくと、じっくり自宅の様子を観察したのち、「みな実さんの育て方が悪かったんじゃなくて、この子はこのお部屋の環境に合わなかったんです。こちらでお引き取りして元気にするので、新居には新しい子をお迎えしましょうか」との温かな提案に安堵した。実際、彼女に見立ててもらったフィカス・ストリクタのエリックは、今も気持ちよさそうに伸びやかに育ってくれている。
ちなみに、年に一度、梅雨前にメンテナンスをしてもらうのだけど、そのときの衝撃たるや! 手塩にかけて育てた我が子が容赦なく丸刈りにされ、外の厳しい環境に晒されるのである(といっても、ベランダだけど)。驚きを隠せず「本当に本当に、大丈夫でしょうか」と狼狽える私に、「心配ですよね~、大丈夫。どんどん葉をつけて元気いっぱいになりますから」と、おおらかに彼女は笑う。その言葉通り夏頃には黄緑色の赤ちゃんの葉っぱは鮮やかな緑色に変わり、エリックはひと回りも二回りも大きくなって温室育ちの王子様からワイルド系のイケメンへと姿を変えた。大きく成長するには一度、打ちのめされるのが必須なのか。
自分でいうのもおかしいけど、私は大きな挫折を経験することなく育った。正確には、挫折しないように生きてきた。たとえば受験だって、記念受験でも合格圏外の国立の名門校を受けることがなかったのは、シンプルに“落ちる”のが嫌だったから。そうして、身の丈に合った安全な道を選択してきたはずなのに、どういう訳か今、まったく先の見えない俳優の道を歩み始めている。毎日これでよかったのか不安で、自信なんて微塵もなくて、落ち込むことばかり。
インタビューでは「この歳で新たな挑戦ができることを喜ばしく思う」なんてカッコつけているけど、押し潰されそうなときの方が多いに決まっている。その上、見ず知らずの他人に無責任で心ない言葉を浴びせられるのだから、たまったものではない。でも、何もかもきっと成長に必要な過程。今年もザクザク切られてやけにこぢんまりしたエリックがベランダに出されて強風に煽られている。このままなぎ倒されてしまわないかと、毎年のことながら不安に駆られるけど、そんな心配をよそにエリックは変わらず、毎日どんと構えている。私も、このまま暫く踏ん張ってみるか。何年、何十年か後の成長を信じて。
田中家の観葉植物全員集合!
エリック王子期。まだお外を知らない箱入り息子。ポトス先輩は、母が度々下の方をカットして実家で育てているから分身多数。かじゅくんがうちに来たばかりの頃。今は見違えるようなので、いつかまたお披露目を。
田中みな実(たなかみなみ)
1986年11月23日生まれ。埼玉県出身。「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)にレギュラー出演。2023年4月期のドラマ「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系)ではGINGER副編集長 新名楓役を演じて話題に。