学生時代から何かと誤解を受けてきたという田中みな実さん。今月は、まさにここだけの“変な話”を書いてスッキリ。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今月のテーマ:浅く、狭い人間関係
人はいくつになっても噂話が好きだし、言っていいことといけないことの区別さえつかない者が世の中にはいるらしい。何気ない会話を面白おかしく変換して評判を落とされること、身勝手な解釈でありもしない話を作り上げられること、そんなのしょっちゅう。
遡れば学生時代からそうだったし、言われやすいタイプであることも自覚している。だから、大人になって、特にこういう仕事を始めてからは慎重すぎるくらい慎重に生きてきた。会社員の頃にこんな経験をした。私が番組プロデューサーと親しい仲になって仕事をもらっていると、ほとんど話をしたこともない一期下の男性社員に言いふらされた。それも、その年の新入社員との交流会だかなんだかで得意げに話をしていたらしく、噂は瞬く間に広まった。確かにそのプロデューサーには入社当時から可愛がってもらっていたし、複数人で食事をしたこともある。特番に起用してもらったことも何度かあったけど、断じて男女のカンケイになどなったことはない。
少し経って、ひょんなことから噂の発信元を知ることになった私は、真相を確かめたくなった。だって同じ会社に悪意を持った人がいて、ありもしないことをベラベラ喋っているなんて気持ちが悪いじゃない? 彼の元を訪ねると、どことなくバツが悪そうで、その態度がすべてを物語っていたけど、念のためお灸をすえる。「私が〇〇さんと親しい仲になって仕事をもらっていると吹聴しているようだけど、事実ではないので、もしあなたがそんなことを言いふらしているようならやめていただけますか」。そう伝えると、謝罪の言葉もなく「いや、オレはそう聞いてたんで言っただけですよ」と悪びれる様子がない。埒が明かない。彼の所属長に事の経緯を話し、上司からきちんと指導をしてほしいとお願いしに行った。そう、私も私で面倒くさい。そして、この一連の出来事もまた尾ひれがついて社内中を駆け巡った。
友人関係においても、「言った」「言わない」で生じる亀裂には嫌気がさす。「えー、嫌だね」「わかる!」と、話に同調しただけで、田中みな実が〇〇ちゃんのことを悪く言っていたらしいと騒ぎ立てられ、その子(と、その仲間たち)の恨みをかったりね。もう、こんなくだらないことですり減るのにくたびれて、人とかかわらなくなった。あの頃のように誤解を解こうとすることも無意味に思えた。
きっと、言われる方にも原因があるんだ。言いそうな私が言っているから面白おかしく噂されるし、皆一様に信じ切ってしまうんだと合点がいった。そう思われない生き方をすることでしか、煩わしさからは解放されない。「みな実ちゃんがそんなこと言うはずないよ!」と、大半の人が思うようでなければならない。しかし、勝ち気で妥協のないこの性格は簡単に変えられそうにない。嘘もつけない。誤解を生む。ならばと、人間関係を排除した。SNSもやらないし、食事会にも行かなくなった。もう、6~7年になるかしら。ようやく変なことに巻き込まれなくなってきて、少し気が緩んだのか、最近また外の世界ににょきっと顔を出してみたら、それ見たことか。「田中みな実が言ってたよ〜」「田中みな実には気を付けて」が始まった。
あーあ、やんなっちゃう。あーあ、めんどくさーい。誰かに話したかったけど、またその誰かが誰かに何かを言うかもしれない。文字にできてスッキリした。変な話でごめんなさいね。来月はもっとポジティブなお話を!
ちなみに、私は愛犬との平穏な暮らしを愛しているから、人とかかわることをしなくても心は健康。たま〜に気心の知れた人たちと、美味しいものを食べてざっくばらんに話ができれば幸せ。
不用意な発言で誰かを傷つけないように、自分の尺度で歪んだ解釈をしないように、不確かな噂話に惑わされないように、肝に銘じて生きていこう。
今月のみな実さん
グータンの衣装が可愛くてキュンだった日。ボッテガ様、お貸し出しありがとうございました! ちなみに、トップスは色違いを個人的に春過ぎに購入していて絶賛ヘビロテ中。靴もアクセも可愛い〜♡
田中みな実(たなかみなみ)
1986年11月23日生まれ。埼玉県出身。「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)にレギュラー出演。7月12日スタートの「ばらかもん」(毎週水曜22時〜フジテレビ系)では、初のシングルマザー役に挑戦。