映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で共演した高橋一生さん、飯豊まりえさん。この作品で、生涯忘れられないであろう“永久保存”な経験をしたというおふたりに、今回は「心のなかにずっとある、幼い日の記憶」を教えてもらいました。
私をつくった“永久保存の記憶”
飯豊さんの記憶
中学生のころ、初めてひとりで電車に乗った日のことをよく覚えています。
子供のころからこのお仕事をさせてもらっていた私は、それまでずっと仕事に行くにも、学校に行くにも、母についてきてもらっていました。
けれど中学生になったとき、「これからはひとりで行きなさい」と母に言われたのです。駅のホームまで母が送ってくれて、その日初めてひとりで電車に乗って、千葉から東京の仕事場へ行きました。心細くて泣いてしまったのですが、ホームにいる母に悟られないように必死でした。
たった1時間の距離がとっても長く感じたのも、はっきり覚えています。「これからは、ずっとひとりでやっていくんだ」と大袈裟ですが思いましたし、その日を境に自主的に行動できるようになりました。寂しくて怖かったけど、その日から強くなった。大切な記憶です。
高橋さんの記憶
僕の場合は「初めて電車を乗り過ごした日の記憶」を強烈に覚えています。
小学1年生のころ、実家から少し離れた祖母の家にひとりで行ったんです。
その帰りに電車の中で寝てしまい、気が付いたら終点の駅。あたりは暗くなっていて、ホーム横のビルには、巨大で不気味なイカの看板が光っていました。怖くて不安で、財布に入っていた30円で祖母に電話をしたけれど、駅名の漢字も読めなかった僕は、何も伝えられないまま料金不足になってしまった。そのときに、恐怖がだんだん怒りに変わっていく感覚を初めて体験しました。
その後、「ああ、反対方面に行く電車に乗ればいいんだ」と気が付いて帰りましたが、恐怖と対峙する自分を生まれて初めて客観視できた記憶です。
ちなみに、あとからどんなに調べても、当時その駅に大きなイカの看板があった事実は見当たらないんです…。
映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
原作/荒木飛呂彦
監督/渡辺一貴
出演/高橋一生、飯豊まりえ、木村文乃ほか
https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/
高橋一生(たかはしいっせい)
1980年12月9日生まれ、東京都出身。数々の映画・ドラマ・舞台で活躍。6月17日より舞台 NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』が東京芸術劇場プレイハウスほかで上演。
飯豊まりえ(いいとよまりえ)
1998年1月5日生まれ、千葉県出身。2012年の女優デビュー後、数多くのドラマ・映画に出演。雑誌『Oggi』専属モデル、『MORE』レギュラーモデルとしても活躍中。