数々の名作に出演してきた生田斗真さん、磯村勇斗さん。6月2日公開の映画『渇水』が、意外にも初めての共演に。仕事を極めたふたりだからこそ、自然と芽生えた絆とは?
演技が好きでたまらない、生田斗真はそれが滲み出ている
――1997年の役者デビューから、18本もの映画に主演してきた生田さん、そして現在「どの作品を観ても磯村勇斗がいる」とまでいわれるほど、多くのヒット作に出演し続けている磯村さん。まさに今、日本映画界になくてはならないふたりが、意外にも初めて出会ったのが、映画『渇水』での共演だった。
磯村勇斗さん(以下、敬称略) 「はじめまして」で始まった現場でしたが、生田さんはお兄さんのようにフランクに優しく接してくださり、それが役柄のふたりの距離感を自然とつくっていってくれたように思います。生田さんは、芝居が好きでたまらない、ということが立っているだけで滲み出ている方だなと思いましたね。
生田斗真さん(以下、敬称略) 僕だって磯村くんを見て、映画を愛し、映画に愛されている男の佇まいっていうのはこういうものなんだなって感じてましたよ。非常に気持ちの良い青年なんですよ、彼は(笑)。
――その生田さんの言葉を聞いて、少し照れたように磯村さんは笑う。お互いを「無類の演技好き・仕事好き」と評価し合うふたりは、今作で水道局員の先輩後輩を演じた。ライフラインである水道の料金徴収、そして支払いを滞納する家には容赦なく水道停止を執行していくなかで、感情を押し殺していくふたり。スクリーンに大きく映し出され続ける生田さんの苦悩に澱んだ目が強烈だ。
生田 世の中にはルールとか規制とかモラルとか、いろんなことがあって、でもそれを当たり前のように生活の一部としています。その途中で、ふと「あれ、なんでこうなっているんだっけ?」と疑問に思うこともある。何かを変えようと思って行動しても、日常にのみ込まれて結局変えられない。誰もが感じたことがあるその胸のざわめきを表現したかったんです。例えば僕の場合は、毎日朝起きて、シャワーを浴びて、現場に行って仕事をして、お昼ごはんを機械的に食べていると「あれ? 僕はこの唐揚げを食べたいんだったっけ? そもそもなぜ僕はここで唐揚げを?」と思う瞬間がふとあるんです。そういう思いを織り交ぜて表現していきました。
磯村 生田さんの目は凄まじかったですね。一方で僕が演じた役は、生田さんの役ほど振り切っていなくて、保守的なんです。常に揺れ動いている人だと思ったので、現場で生田さんとしっかり会話しながら、役の温度感をじっくり調節していきました。
生田 撮影中は基本的にずっと一緒にいたもんね。
磯村 この作品『渇水』というタイトルなのに、撮影日はずっと雨だったんです。雨が上がるまで待つ時間がけっこうあって、その間も一緒でしたね。生田さんと一緒にお芝居できるだけでもうれしいのに、そんな素敵な時間まで与えてもらった。ちなみに待ち時間が長いとイライラする人もいますが、生田さんは穏やかに「待とうか〜」と笑っていらして、いいなぁと思いました。
磯村くんといるとすごくいい空気が空間に充満してくるんです
――撮影を重ねるなかで、生田さんと磯村さんはどんどん距離を縮めていったそう。
生田 カメラや観葉植物など、共通の趣味の話をたくさんしましたね。磯村くんはたくさんの植物を育てているので、「長期ロケで家にいないとき、水やりどうしてるの?」と聞いたら、部屋の写真を見せてくれたんです。管がたくさんあって、水を自動で配給するシステムになっていて、すごく驚きました(笑)。
磯村 そうそう、設備を整えていて、もはや植物を載せている台が手術台みたいになっているんですよ。ちなみに僕は今作の撮影中に誕生日を迎えたのですが、なんと生田さんがハンディタイプのマッサージ機をプレゼントしてくださったんです。「これから舞台があるでしょ、持っていくといいよ」って。そんなふうに気を遣ってくださることがすごくうれしかったし、使い勝手も最高で、永久保存しようと思っています!
生田 ちょっとでも磯村くんに気に入られようと思って(笑)。
――お互いを役者として信頼しあうふたりの仕事人。ここで生まれた永久保存の絆は、これからの日本のエンタテインメントになくてはならないものになるはず。
生田 忘れられないのが、磯村くんと小さい軽トラックの中でふたりで芝居をしていたとき。すごくいい空気がその狭い空間に充満していたんです。なんかその空気を磯村勇斗から感じられたことがうれしかった。
磯村 僕もそのシーンは好きです。ふたりでお酒を飲むシーンもありましたが、生田さんとだと本当に酔っ払っているかのような不思議な感覚になりましたね。
生田 お互いもっと頑張って、違う現場でもいつかまた一緒になれたらいいね。
磯村 頑張りますので、ぜひお願いします!
映画『渇水』
原作/河林満
監督/髙橋正弥
出演/生田斗真、磯村勇斗、門脇麦ほか
※6月2日全国公開
https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/
生田斗真(いくたとうま)
1984年10月7日生まれ、北海道出身。’97年俳優デビュー。ドラマ「ウロボロス〜この愛こそ、正義。〜」「俺の話は長い」、映画『人間失格』『予告犯』『湯道』など多くの作品で主演。7月から主演ドラマ「警部補ダイマジン」(テレビ朝日系)が放送予定。
磯村勇斗(いそむらはやと)
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。2014年俳優デビュー。映画『PLAN 75』『さかなのこ』『異動辞令は音楽隊!』『前科者』でヨコハマ映画祭助演男優賞受賞。現在、映画『最後まで行く』が公開中のほか、『波紋』が5月26日に公開。