ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
意識を変えることができた。
この連載もついに最終回です。旅好きの私が、旅のエピソードとともにそのときどきの思いを綴る予定だったのが、コロナ禍になり、旅に出ること自体が難しくなってしまいました。連載していた約1年半は目まぐるしく環境が変化した時期でもありました。仕事を通して新しい出会いがたくさんあり、心の旅をしてきたように感じています。
仕事で忙しくなる前の私を「第1章」とすると、この数年が「第2章」。そして、今新たな「第3章」が始まるような気がしています。細かな記憶がないくらい、怒涛の第2章でしたが、感覚的には第1章の地続きにありました。魅力的な作品に多く参加させてもらい、充実しているのに、時間が足りず、丁寧に準備できないことが苦しかった。何度も臨界点を超えてきました。
がむしゃらに、人一倍努力をしないと私は表に立つ資格はないと考えていました。食事制限をし睡眠時間を削り、トレーニングを続けてきました。体は悲鳴を上げているのに、強い意志があれば乗り越えられると思っていた。でも、限界に追い込むやり方は永遠に続けることはできません。持続可能な働き方って? ずっと模索し続けました。でもなかなか答えが見つかりませんでした。ところがつい最近、ふと出口を見つけたのです。きっかけはピラティスでした。
ピラティスは戦争で負傷した兵士のリハビリから開発されたエクササイズなので、どんな年齢でも誰にでもできます。論理的で、どこに作用するかを意識しながら体を動かすので頭を使います。マンツーマンで先生につき、体の細部に意識を向けます。「えー! こんなところの筋肉が?」という発見の連続に、幸せホルモンのセロトニンがどんどん分泌されているような感覚です。
体は、放っておけばどんどん自堕落なほうに向かっていってしまいます。でも、意識を向けてコントロールすれば変わります。従順なワンちゃんにしつけをするように、自分の体を知ってコントロールする楽しさ。体と心は繋がっていますから、体と対話できたときには心も自然と安定します。忙しさは変わらなくても、自分の意識が変わっていきました。
考えてみたら、これまでの私は、体の声をきかずに痛めつけるばかりだったかもしれません。体って、自分が唯一コントロールできるものなんですよね。心も他人もお金も自分ではどうにもなりません。でも、体ならば、自分で変えていくことができます。痩せることを目的として過酷なトレーニングをするのではなく、体を優しく調整していくことが結果的に太らない体を作ることになる。ピラティスにはそういう作用があると思います。まだ少しずつですが、自分を本当の意味でいたわることができるようになりました。
大事なのは「今」。目の前のことに丁寧に向き合い、そこで幸福を感じられれば、ずっと幸福でいられます。もちろんこれからもアップダウンはあるでしょう。学びに終わりはありません。日々充足を感じながら、これからも変化を楽しんでいこうと思います。ありがとうございました。また、いつかどこかでお会いできますように。
Marika’s Memories/ありがとう、スリランカ
松本まりか(まつもとまりか)
ドラマ「ホリデイラブ」の井筒里奈役で一躍注目を集める。映画『ぜんぶ、ボクのせい』が公開中。映画『夜、鳥たちが啼く』が12月9日公開予定。2023年に放送予定の大河ドラマ「どうする家康」に出演予定。