ひとり旅は自分をリセットさせてくれるかけがえのない時間。これまでの旅の経験から、考えたことや感じたこと、学んできたことを綴る連載『ひとり旅×松本まりか=THINK CLEARLY』。
年明けあたりから、自分が少し変わってきたのを感じています。大きなきっかけとなったのは「松本まりかクリスマス24時間生テレビ~24時間で恋愛ドラマは完成できるのか!?~」(AbemaTV)でした。24時間の内にドラマを撮影、編集し、最後に完成作を披露、撮影中の様子もすべて生で配信するという、鈴木おさむさん企画のチャレンジングな番組です。
私は、そのドラマのなかで、23〜37歳の主人公を演じました。年代ごとに6つのエピソードがあり、田中圭くんや小池徹平くん、野村周平くんら彼氏役や友達役の俳優さんをゲストに迎えて芝居をします。24時間以内にドラマを完成させるには、数分の遅れも命取り。つまり、全カット一発OKの演技をしなければ間に合いません。時間との戦い、失敗できないというプレッシャー、なかには初めて共演する俳優さんもいらっしゃいました。準備期間を入れると36時間不眠状態。最後までテンションを保ち、セリフを言えるのか。心を動かすお芝居ができるだろうか。
この撮影に入る前の私は、正直、精魂尽き果てていました。素晴しい作品にたくさん参加させていただいているのに、自分の力不足を痛感する日々。演じる者として、人としても自信を失いかけていました。
「生テレビ」の配信はクリスマスイブの夜から25日。家族や恋人と過ごしたかった共演者やスタッフさんは大勢いらしたでしょう。私がダメだったら、この企画に参加してくださった方、全員の思いを台無しにしてしまいます。そのためには自分の持ちうる力をすべて出し尽くすしかない。
そして迎えた本番……。奇跡が次々に起こりました。何度練習して、一度も成功しなかった長台詞を1回で言うことができました。また、共演者の方と、想像を超えたお芝居のケミストリーが次々と生まれていきました。
「この企画を成功させたい」という思いが、関係者全員の気持ちをひとつにしていました。極限状態にありながら、現場で奔走するスタッフさん方の目がキラキラ輝いていたのです。私はあの幸せな光景を忘れることができません。
頑張れば、必ずそれ以上のギフトがある。
今の時代、「頑張る」という言葉はあまり歓迎されないところがあります。でも、私自身は「頑張れば、神様は必ずそれ以上のギフトをくれる」という経験を幾度もしてきました。自分の限界を突破するほど、皆さんと一緒に思いっきり頑張れたから、それ以上の達成感、充足感を得ることができました。あんなクリスマスプレゼントはないというくらい、私にとっては一生ものの、素晴しいギフトでした。
外からは中堅俳優と見られているかもしれませんが、自分のなかでは、純粋に演技をすることだけに集中していた10代と変わらない意識でいました。でも、今回、とてつもなく大きな看板を背負わせていただいたことで、ようやくプロの気構えを持つことができたように思います。ほかの達成感や多幸感を別の現場でも得たい。そうできるようにもっと頑張りたい!
自分のレベルがほんの一段上がったように感じます。ネクストステージに上がるための旅だったのかもしれません。番組はアーカイブに残っていますので、観ていただけたらうれしいです。
Marika’s Memories/大切な仲間
松本まりか(まつもとまりか)
女優。ドラマ『ホリデイラブ』の井筒里奈役で一躍注目を集める。Amazon Primeにて配信中の『雨に叫べば』にて主演を務める。短編映画『MIRRORLIAR FILES Season2』が順次公開中。土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウスー帰ってきたん怪ー』が、4月より放送予定。
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