トップモデルとして世界を舞台に活躍する冨永愛さん。環境や社会問題に関心が高く、早くから社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。地球と人と未来のために少し実践する、冨永さんのサステナブルなチョイスについてお話を伺いました。
知ることから始まり、考えて、“ちょっといいコト”を実践してみる
日本人離れした完璧なボディバランス、唯一無二の存在感で、常に世界の第一線で活躍し続ける冨永愛さんは私たちの憧れ。トレーニングをする様子、食事へのこだわり、ランウェイを歩く姿など彼女のSNSを見ていると、特別なことではなく日々の積み重ねこそが、未来のなりたい自分への一番の近道なのだとわかる。
「2019年にスコットランドの浜に打ち上げられたマッコウクジラは、胃の中に100kgもプラスティックが溜まっていたんだって…」――冨永さんは自然環境への警告、ファッション業界が抱える問題など、自身が感じとった地球のメッセージも積極的にSNSで発信。社会のため、未来のために、今私たちが行動・選択すべき毎日の“ちょっといいコト”を教えてくれる。
「ファッション業界は世界で2番目に地球環境に負荷をかけている産業。その事実は現在、広く知られるようになりました。私たちがそれを“知った”ということに大きな意味がある。まずは知ることから始まり、そしてそれを考えて、実際に行動へと移してみる。ファッション業界は、私がモデルを始めたころと今とを比べるともう180度変化し、SDGsが浸透しています。当時は“多様性”という言葉もなかったし、今では“エクスクルーシブ”から“インクルーシブ”へと変化。ファッションは時代をリードするものだから、真っ先に変わるべきところから変わってきています」
冨永さんは2011年からジョイセフのアンバサダーに就任。翌年にはタンザニアを訪問し、現地の女性たちと交流。東日本大震災以降は被災地を複数回にわたり視察して、被災女性の現状について発信し続けた。
「百聞は一見にしかずで、ニュースで聞くだけなのと、実際に自分で見て聞くのとでは、雲泥の差があることがよくわかりました。アフリカの現状も日本の被災地の現状も…もちろんテレビのニュースで見るとショッキングなことも多いのですが、実際にはその100倍も衝撃的なことを目にしました。でも一方、アフリカの方たちが大変な状況で、みんな悲観して生きているかといったら、全然そうではない。むしろ私たちよりも活動的にハッピーに生きているんですよね。そんな姿を見て『自分も頑張らなきゃな』と逆に元気をもらったり。何かの選択や決断をするとき、無意識ではありますが必ずその経験が心のどこかにあった気がします。それを知らなかったころの自分とは違う決断をしているし、人に対する想いも変化している。まずは知ることが第一歩で、大事なことですけれども、実際に経験するとまた全然違ってきますよね」
10%、20%のエシカルな選択が未来の地球を変える力に
昨年出版した本『冨永愛 美の法則』の売り上げの一部をジョイセフに寄付、コロナ禍で影響を受けている女性への支援も積極的に行った。
「私には仕事も住む家も毎日の食べ物もある。この時点で、ものすごく恵まれているということ。恵まれている自分が、誰かのために何かをするのは当たり前。この考え方は、海外の人たちの生きる姿勢から学びました」
冨永さんが日々の生活において実践している、未来のための“ちょっといいコト”とは?
「たまにスーパーに行くとプラスティックにあふれていて、自分の無力さを感じるときもあります。でも、それを“感じる”ことがとっても正しいことでもある。なぜなら『私にできることは何だろう?』と考えるきっかけになるから。いろんな問題にあふれている現代社会に私たちは生きているから、10%でも20%でも、自分ができることをやればいい。例えば、マイバッグから始めて、次はマイボトルも持つようにするなど。それをみんなが実践すれば、世の中はすごく変わると思うから。あなたのする“10%の行動”を大切な誰かに伝えれば、次にその人が同じように考えて行動する…気付きの輪を広げていくようなイメージで、地球の問題を自分たちの問題として改善していきたいですよね」
ECOLOGICAL FASHION LIST
今回の撮影で冨永さんが着用した洋服は、すべてエシカルなファッションブランド。配慮された素材や工程で作られた、人と地球環境に優しいおしゃれな服を選択して。
- ALANUI
ニコロとカルロッタ・オッディの兄妹が立ち上げた、イタリアを拠点とするファッションブランド「アラヌイ」。最高級の素材と職人技によって、現代の“消費する服”とは真逆の考え方で服を創作する。優れた職人技でのみ実現可能な色、刺しゅうなどの組み合わせが特徴。冨永さんが着用したニットは、リサイクルカシミアを使用したアイコンとなるアイテム。継続的に取り組んでいる環境問題の一環として、ハイエンドなリサイクルカシミアとウールを導入。 - TOM WOOD
サステナブル先進国であるノルウェー発のファッションブランド「トム ウッド」。2021年春夏シーズンから始まったコンセプト「10 by Tom Wood」は、ワードローブに必要な10型のみをコンパクトに展開。使用する素材もデッドストックのイタリアンウールやオーガニックコットンを用い、年齢や性別を問わず楽しめるサステナブルでジェンダーフリーなコレクションに。ジュエリーにも紛争地で採集されていないダイヤモンドやエシカル素材のジルコニアを採用。 - RAG & BONE
「ラグ & ボーン」は2002年にアメリカでスタートしたブランド。’17年より、アメリカ国内の直営店にて不要になったデニムを回収する「The Denim Recycling Project」をスタート。回収したデニムを綿に解体し、建築資材やクッション材などの繊維へとリサイクルするエコフレンドリーな施策を実施。’18年より日本国内の直営店でも期間限定で行っている。増え続けるゴミの山からデニムを減らすことで地球を少しだけクリーンにする、地球を守る行動の第一歩に。 - VEJA
2004年にフランス・パリで生まれたフェアトレードのスニーカーブランド「ヴェジャ」。ブラジル北部で育てられたオーガニックコットンや世界で唯一ゴムの木が自生するアマゾン中心部のナチュラルラバーを採用し、環境に配慮したものづくりを行う。また中間業者を挟まず余計な生産もせず、生産者や農家に妥当な対価を確保するなど、徹底的な姿勢を貫く。メーガン妃をはじめ、その理念に共感した多くのセレブリティが愛用しているブランド。 - WOLFORD
1950年にオーストリアのブレゲンツで創設した「ウォルフォード」。環境配慮と持続可能性の基準を満たす素材を独自開発するなど、サステナビリティを追求。2015年に繊維業界における環境、労働、消費者の3つの視点で持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与されるブルーサイン認証を取得。新しい生活と経済のあり方を考えながら、社会的課題解決を実践。’25年までに製品の50%をC2C(欧米発の環境認証)にすることを目標にしている。
冨永愛(とみながあい)
17歳でNYコレクションにてデビューし一躍話題となる。以後、世界の第一線でトップモデルとして活躍。モデルのほか、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティ、女優などさまざまな分野に活躍の場を広げる。公益財団法人 ジョイセフアンバサダー、エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー(消費者庁)、ITOCHU SDGs STUDIOエバンジェリストを務める。