日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第41回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください！
その41『気づけませんでした』
理不尽なことで言いがかりをつけられたり、クレームまがいの事を言われたり･･･大人になれば大なり小なり誰しも経験すると思う。特に女性であるがゆえに言い返されないだろうとか、強くは出てこないだろうと軽く見られかねない。
怒りに怒りで返す必要はないが、毅然とした態度で対応しなくてはと気をつけていきたい｡ 最近はあらぬところから矢が飛んできやすいご時世でもあるし･･･。ちなみに水商売のアルバイト時代、はじめましてのお客に｢なんかむかつくんだけど｣とケンカを売られたことがある。「はじめまして」と言っただけでこの仕打ち。開き直って「あー、申し訳ありません、我慢して下さいぃ」と手を握ったことがある。相手はひるんだ。時給のためとはいえ、生きるのはこんなにも大変なことかとみぞおちが痛くなったのを覚えているぞ。
理不尽にはどう対処したらいいか。そこで「気づけませんでした」とという台詞をしのぐ手段の一つとして挙げておこう｡ 気づけなかったのだから、ごめんなさい、次気をつけます、え？ まだ何か？ あーそれも気づけませんでした･･･と、気づくことが出来なかったという結論だけで相手の理不尽を何となくかわせる。勘が悪いだの人の気持ちが分からないのかなどの責めを受けるかもしれないが、それも気をつけます、スミマセンの繰り返しでいい。こちらは同じ言葉とニュアンスで対応するマシンになる。すると、相手も責め甲斐がなくなり情報も得られなくなり、つまらなく感じるだろう。それでも食らいつく狼藉者には「会話、録音していますが･･･」で締めくくる。
気づく、というのは意識していないと出来ない。注意を払っているのはあくまで仕事や使命だからであり、理不尽な者の機嫌をとるためではない。どんな形でも関係性や立場などの問題で謝るのは嫌かもしれないが、気づけませんでしたスミマセンはいくら言ってもタダと割り切ろう｡ 体力と精神力温存のためにも、「ここまでは踏み込まれても対応しよう」というラインを設けておくと結果的に消耗は減る｡ 気づけませんでした･･･を上手く使い、心身をガードしていこうじゃないか。
壇蜜の【今更言葉で、イマをサラッと】をもっと読む。
