女芸人 紺野ぶるまさんによる女観察エッセイ「奥歯に女が詰まってる」。GINGER世代のぶるまさんが、独自の視点で、世の女たちの生き様を観察します。
第23回 適当に喋る女
初対面の女子同士の会話で、よく出て来るワードというものがある。
そのうちの一つが、「ないものねだり」だ。
意識してみると、驚くほどこのワードが出てくるので検証してみて欲しい。
社交辞令や気を遣う相手、会話を終わらせたい時にこんなに便利な七文字はないのだろう。特に初めて行く美容室では必ずと言っていいほど登場する。
美容師「髪の毛多くて羨ましいです」
客「え〜剛毛で強そうにみられるから嫌ですよ」
美容師「ま、ないものねだりですよね〜」
美容師にそう言われたら、「そろそろシャンプーなんだな」と察することができる。
しかし経験上、人気のある美容師さんほど、この「ないものねだり」に決して頼らない。
こちらがそれとなくこぼした髪の悩みに対して対処法や芯を食った内容でそこから会話を広げていく。
その一方で、アシスタントの方や若い美容師さんほど、この言葉を乱用する傾向にあるように思える。便利なようでいて、実は「言っときゃいい感」も少し否めず、時に適当な印象も与えてしまうのではないだろうか。
つまり「ないものねだり」がどちらかともなく発せられたら、自分も相手もその会話が退屈な証拠と言ってもいい。
髪質の話しかり、見た目の話はこのゾーンに入りやすい。特に身長の話では確実だ。
A「身長何センチですか?」
B「168センチです」
A「え〜いいな、私も大きくなりたかったな」
B「小さいほうが女の子らしくていいじゃないですか」
A「ま、ないものねだりですよね」
この時の低身長の女の「ないものねだり」ほど信用ならないものはない。
目の奥では確実に「ちっちゃな私」に万歳しているのが伺える。
日常において「ないものねだりですよね」と切り出す女ほど、「あるものだらけ」の自信家の場合が多い。
会話をする上で、無難な言葉のようだけど、実は危険要素がたくさん詰まっている「ないものねだり」。
それと同時に距離を保ちたい相手には持ってこいのワードなのかもしれない。
最後に、
会話が上手な人とかけまして
人気の美容師さんと解きます。
その心はどちらも、
だいたいオチついている(落ち着いている)でしょう。
今日も女たちに幸せが訪れますように。