小説から漫画までジャンルを問わず、本好きとして知られる女優の多部未華子さん。読者からの本選びの相談や質問に応えて、オススメ本をご紹介します。
vol.24 読んでジワジワと心に響く詩集を探しています
《読者からのリクエスト》
最近、声に出して詩を読みたいというか。メディテーションするかわりに、朗読で心を整えたいと思っています。何度も読み返したくなる詩集があれば、ぜひ教えてください。
茨木さんの言葉がリアルだからこそ、現代に生きる私も心を揺さぶられる
もう何年も前ですが、ある詩集に参加させていただいたことがありました。そもそも、それまでほとんど手を伸ばすことがなかった私の詩集や詩人のイメージは、“抽象的に素敵な言葉で良いことを綴る作品や人”というものでした。
要するに、これまで私のなかで、心がぎゅっとしたり、少し苦しくなるような詩に出会ったりすることがなく、あまり自分自身の心に留まっていなかったのです。
そんな私が、参加させていただいた詩集こそが茨木のり子さんのもので、その時初めて、茨木さんの存在を知りました。それまでは、正直なところ全く知らなかったんです。代表作と言える“わたしが一番きれいだったとき”は、私自身が生きている今の日本とは全く違った戦時下の日本で生きていた茨木さんだからこそ綴れる詩で、当時、とても心に残ったのを覚えています。
戦時下で生きる1人の女性の苦しみや悲しみや切なさを、どストレートに伝えてくるひとつひとつの言葉には心が締め付けられました。こんなに苦しくなるような詩ってあるのだなと。
詩とは綺麗な言葉をただただ並べただけなのではと思っていた、失礼な私の考え方を覆された詩でした。
しばらく茨木さんの詩から遠のいていたのですが、この連載をきっかけにまた、詩集をのんびり読んでみました。他にもとても有名な“自分の感受性くらい”など、改めて読んでみると、本当にかっこいい詩ばかりで、驚きました。
それは、初めて茨木さんを知った時の感覚よりもっと深く胸を打たれたものでしたし、「あれ! 以前はどうして、女の強さや儚はかなさ、切なさをあまり感じなかったんだろう!?」とまで思いました。けれど何故そう思ったのかは分かりません。年齢によって変わったものなのか、環境の変化からくるものなのか・・・。
時代背景を考えると、一人の女性としての生き方や恋愛をしている時の感情、添い遂げた人との尊い日々など、茨木さんが歩んできた道がとてもリアル
で、だからこそ、当時を全く知らない私でも心揺さぶられるのだなと思いました。
今回読んだ中では特に“部分”と“一人のひと”がとてもお気に入りです。ぜひ手に取り、ひとつひとつを味わって読んでみてください。
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