日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第19回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その19『構いません』
「構いません」という言葉を言われると、許されている安心感も覚えるが、どこか「ちょっと距離があるなぁ」と感じてしまう。カマワヌという鎌と輪っかの絵に「ぬ」の文字が印刷された暗号めいた手拭いは愛用しているのだが。構いません、問題ありません、大丈夫です・・・「~していただいても」の後に続く言葉としてはよく使われるが、言われる方も距離を感じ、言う方も少し身構え、「使っても良いのかな」と一呼吸置いて切り出すことが予想されるのは気のせいだろうか。
構わない、というのは差し支えない、気にしないという意味で使われる。「お茶でいいですか?」「構いません」「メモをとってもいいですか?」「構いません」・・・など、言われると「あれ、そこまでウェルカム寄りではないOKなのかしら」と心配になる場面もある。考えすぎかもしれないが、とある会場の控え室で「ここでお食事されても構いませんよ」と言われたときに、お昼前で食べ物を持参していたため、許可にホッとしつつも「いつもは原則禁止だったりして・・・」と予測してしまう自分がいた。
面接や試験、説明会など、催す側と受ける側の立場の違いがはっきりしているようなかしこまった場所で使われる「構いません」はほどよき緊張感や秩序を生み出すが、そこまで緊迫していない場合はもう少し柔らかい表現でもいいかと思われる。そこで「どうぞ」をお勧めしたい。「どうぞ召し上がれ」「どうぞおくつろぎ下さい」「どうぞお試しを」と言われると、許可に甘えたくはならないだろうか。
ちなみに「どうぞ」と「どうか」の区別はご存じだろうか。調べたところどうぞは自分の気持ちを丁寧にお願いしたり提示するときの言葉であり、どうかは困難な状況は分かってはいるが、そこを何とかお願いするという意味がある。
「どうか・・・どうかお召し上がり下さい!!」なんて言われたら、食欲が無い先方に目的のため(食べないと弱ってしまうとか?)、前向きにでもネガティブにでも何とか食べてもらうような切羽詰まった状況を想像してしまいそうだ。