『GINGER』の連載「KARINA’S GARDEN」のアーカイブを順番に振り返りながら、“あのころ”と“今”、ときには“これから”を語る「香里奈のひとりごと」。写真好きの香里奈が、連載用に撮り下ろしてきた思い出のショットも紹介します。
ちょっと濃い。そしてちょっと甘い。“残る”味
さて、何のことでしょう(笑)? これは――“名古屋めし”の特長です。
世の中で一番好きなご飯は? と聞かれたら、名古屋人である私は迷うことなく“名古屋めし”を選ぶでしょう。 理由はもちろん「美味しいから」に尽きます。そして「名古屋めしをひとことで言うと? 」と問われたら・・・の答えが「濃くて甘くて残る味」ということ。
名古屋めしを代表する、味噌カツや味噌煮込みうどん。名古屋の味は、味噌ベース。特有の濃さと甘さは、名古屋人が愛する赤味噌の個性ですね。
2011年7月号の私の連載ページは、GINGERのファッション撮影@名古屋のオフショットで構成していました。味噌煮込みうどんのお店前で撮影させていただいたり、撮影後にみんなで手羽先を食べに行ったり。
この回の本文にもこんな文章を綴っていました。
「ひつまぶし」「手羽先」「味噌煮込みうどん」
この3つは、地元に帰ると必ず食べる大好物。
それ以外にも、味噌カツ、名古屋コーチン、きしめん、天むす・・・。
スイーツでいうと、ういろう、小倉トースト・・・。
世の中に美味しいものはたくさんあるけれど、
やっぱり“名古屋めし”を食べているときに一番幸せを感じる。
このとき、私はそのまま名古屋に残って、数日間オフをいただきました。
そして、またまた大好きな蓬莱軒(あつた蓬莱軒)のひつまぶしを食べに行ったので、自分で撮影する連載オフショットにも掲載。名古屋に帰るたびに、本当によく訪ねるので、この連載にも必然的に登場回数が多くなるわけです(笑)。
庶民的なごはんが多い名古屋めしのなかで、ひつまぶしはお値段も高いし、お店はいつも行列なので並ばないと食べられないし、並んで食べる達成感もあって、やはり別格の存在。
多くの名古屋めしのお店が東京にも進出しているけれど、特に蓬莱軒は名古屋市にしかお店がないので、“ここでしか食べられない!”という有り難味も大きいかもしれません。
名古屋めしって、濃さと甘さと、その見かけもあって、「あー食べた!」という満足感につながる味。だからこそ忘れられない味で、また食べたくなる味なのです。
名古屋だから生まれるカルチャー
名古屋の人って地元愛が強い人が多い。私もそのひとり。
「名古屋には名古屋独自の文化があるよね」って、県外の人からもよくいわれます。
大都会ではないし、田舎でもない。他の都市、大阪や東京に行かなくても、何でもひと通り揃うぐらいのほどよいサイズ感。この街でことが足りるから、ここで生きていく楽しさや心地よさがあって、その気持ちが名古屋らしい文化を育んできたと思う。
東京のように地方出身の人々がたくさんいるという印象とはちょっと違って、生粋の名古屋人が比較的多いから、人の種類もそんなにバラけていないというか(笑)。そういう、連帯感みたいなものも感じます。
実は、自動販売機のホットも、マンガ喫茶も名古屋発祥といわれている。地下街がこんなに発達しているのも、名古屋的な文化といえそう。
名古屋って普通に“暮らしやすい街”だから、ザ・観光地ではないのかもしれないけれど。それでもたくさんの人が訪れてくれるということは、やはりに何か魅力を感じてもらっているのかな。もっとたくさんの方に来てもらいたいから、食以外の魅力もしっかりアピールしていくことが課題かも。私も頑張りますね(笑)。
ずっと続いている、続いていく友情
中学や高校が一緒だったり、他校でもその頃に出会った女子友達と、今もずっと付き合いが続いています。私が東京にベースを移してからも、途切れることなく続いてきた友情。
たくさんの時間を共有してきたし、共通の思い出もたくさんある。大人になってからも「あのときさ・・・」という話がすぐに通じるし、とにかく20年来だからお互いの性格もよくわかっていて、言いたいことをちゃんと言い合える関係です。
むしろ、大人になってからのほうが「そういうところがダメなんだよ」などと愛情をもって伝え合う仲になったと思うし、「え、また?」みたいなことがあっても「しかたないな」と、いい意味で終わることができる。もちろん、私も彼女たちから苦言を呈されることもあります。もたもたしていると「はよして~(はやくしてよ~)」とか言われたり(笑)。
誰がリーダーということもなく、自分の得意なことをそれぞれがやる。長い付き合いのなかで、そんな心地よい形が出来上がってきたのだと思う。
人との関係も、街も、時間をかけて少しずつ進歩して、大切にしようという気持ちがあれば、望むべき形になっていくのだと思う。帰るたびにパワーと癒しを与えてくれる名古屋は、私にいろいろなことを教えてくれるのです。