『GINGER』の連載「KARINA’S GARDEN」のアーカイブを順番に振り返りながら、“あのころ”と“今”、ときには“これから”を語る「香里奈のひとりごと」。写真好きの香里奈が、連載用に撮り下ろしてきた思い出のショットも紹介します。
手に職がある、って憧れる
レタッチという言葉、かつては写真の仕事に携わる人にしかわからなかったと思うけれど、今はもう意外と一般的に知られているのではないかな。写真を加工したり修整したりして、思い描くイメージに近づける作業なんだけど、これを体験したのが2010年7月号の連載でした。
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GINGER 2010年7月号より
私がこの仕事をしているのは、モノを創るのが好きだから。なので、カメラだけでなく、撮影時のライティングのこととか、撮影した写真の仕上がりまでのプロセスにもすごく興味があって。
ということもあってこの連載の回は、プロのレタッチャーさんのもとを訪ねて、自分が撮影した青空の写真をレタッチするノウハウを教えてもらったのでした。8年前だからスマートフォンはまだ今ほど普及していなくて、今みたいに写メしてアプリで簡単に加工するなんてことができなかった時代。
だからレタッチルームにお邪魔してmacのモニターに向かいながら、空の色を変えたり、雲を消したり描き足したりして、こんなこともできるんだーと大興奮(笑)。
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香里奈が撮影したオリジナル写真。
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夕方のイメージに加工 by 香里奈
まず、色を変えるだけで、写真の雰囲気がガラリと変わってしまうことが面白かった! しかも作業する人のちょっとしたサジ加減、トーンカーブがほんの少し違うだけで、イメージも変わるわけで。
つまりそれって、レタッチする人にしかできない“作品”になるんだなぁって思った。しかもこだわり始めると、どこまでもこだわれるから、終わりがない作業ともいえるし。レタッチって“修正”ではなくて、“デザイン”であり“アート”だなと実感。面白かったし、自分だけのオリジナルが作れるということが魅力的で、とにかく楽しかった。
これが今、ある部分は気軽にスマホでできてしまう時代になったことが、すごい。でも写真の加工が身近になったからこそ、プロのレタッチャーさんの技術の素晴らしさがよりわかるし、プロが作り出すものの魅力が際立っているんだと思う。
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青空にハートを浮かべてみた by 香里奈
この写真、当時は「ハートに変形できた~♪」なんてよろこんでいたんだけれど。・・・もっと雲っぽい形のハート型にするとか、今だったらもっと違うことができたのに・・・って、素人ながら思う(笑)。
2月に発売された『G 香里奈』の制作中に、編集作業を覗きにいく機会があったんだけど。V(ビデオ)の編集を目の前でみて「わぁ、すごい!」って、思わず言葉が出てしまったほど。
ここのシーンはこんなことできますか?という私のリクエストに「はい、わかりました~」と答えた途端に、ちゃちゃちゃーと作業してくれて。尺の調整とか、ここはスローにしてこのあたりは早回しで!とか、あっという間にできてしまうわけ。
それから、このあたりからハートビート(心臓の鼓動)を入れることはできますか? なんて突然お願いしても、「はい、こんな感じですか?」ってすぐに音を入れてくれたり。とにかく、あれこれできること自体が、カッコいい~と思ってしまった(笑)。
あまりにもカッコいいから、自分でできたらな・・・なんてちょっと妄想したけれど。もしそこまでの技術やスキルがあったら、私、転職しちゃうかもしれない(笑)。そんなこと考えてしまうぐらいに、深くて、楽しい世界なのでした。
自分で誌面作りもしたみた!
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GINGER 2018年10月号
プロのレタッチャーさんの指導を受けてヤル気が出たのか、その3号あとの連載では、自分でメインカットの加工に挑戦しました。“合成”という機能を教えてもらったので、青空を背景にして何枚かの写真をコラージュ。夏休みに女子旅でハワイに遊びに行った報告も兼ねて、想い出のアルバムふう(笑)。
モノクロームにして一部だけカラーで残してみたり、セピア色に変えたり、一枚ずつ加工して。それなりに時間もかかった記憶があるけれど、作業が楽しかったから苦にならなかった。
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このキリヌキは上手くいったな・・・と自画自賛。
今こうして改めて見ると、デジタルだけど、手作りっぽさ満載のアナログ感があって面白い。写真の配置とか、今また自分で作業するとしたら、こうは作らないだろうから。このアナログっぽさも含めて、想い出深いな(笑)。
あらためて振り返ると、写真とレタッチの面白さを再認識。またちょっと勉強してみたいな、と思ったのでした。
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本誌より/香里奈が撮影したハワイの空。上の誌面の右ページ背景に使用したカット。