『GINGER』の連載「KARINA’S GARDEN」は、2009年3月の創刊号からスタートした人気企画。8年8カ月という月日のなかで、取り上げるテーマも少しずつ変化してきました。連載初期は東京や地方、ときに海外の街を散策しながら、香里奈自身が感じた想いを語るエッセイでした。今も続いている、自分で撮影した写真で日常を紹介するパートは、連載スタート時から続いています。 “あのころ”と“今”で変わったこと、そして変わらないことは? そんな比較をしてみたら面白いかもしれないね、という香里奈さんとのおしゃべりがこのWEB連載につながりました。話が尽きるまで続けていく予定ですので、どうぞお楽しみに。
タイトルは「香里奈のひとりごと」ということで、香里奈自身の言葉で綴っていく連載になりますが、今回は記念すべき第1回目ということで、GINGERweb編集長と本誌連載についての振り返りトークでお届けします。
編集長 : 初期のころは、KARINA’S GARDENというタイトルのほかに、“写真で咲かせる日々の花”といサブタイトルが付いていたんですよね。これって、香里奈さんが考えたサブでしたよね?
香里奈 : ですね(笑)。写真を撮るのが好きで、当時は今よりもたくさん写真を撮りためていて。写真をわーっと並べたら、きっとお花畑みたいにいっぱいだろうな…と思ったのと、あとは写真を撮ること自体が楽しいので、毎日に花を咲かせるようなワクワクした気持ちでシャッターを切る、みたいな意味も込めました。
編集長 : 意外とロマンチストですよね。
香里奈 : あははは(と大笑いして)、魚座ですから。
編集長 : 今こうして、過去の連載ページを見返すとどんな思いが?
香里奈 : そうですね、あらためて自分が創刊号から今もGINGERに出ていることが有難いことだなと思うし、連載が続いていることもすごいことだなって思うし。この初期のころの連載は、ファッションページとは違ってパーソナルな面を見せられたので、いつもと違うマインドで臨めて楽しかったし。何だか、アルバムを見るような懐かしさがありますね。
編集長 : ええ、私もこの連載でご一緒にあちらこちらに行ったな、と感慨深くなりましたよ。(編集長は当時の連載担当です)
香里奈さんはデジタルカメラを何台か持っていて、カメラ選びにもこだわりがありましたよね。この記念すべき連載1回目のページでは、デジカメで撮った写真をパソコンで整理していたら、ついつい夢中になってしまい、気が付いたら何時間も経っていた・・・という記述が。しかも写真を見て感傷的になったのか「思わずウルッときそうになった」って書いてありますね。
香里奈 : ホントだ(笑)。このころ(8年前)は、デジカメで写真を撮るほうがメインだったけど、スマホで撮る写真の画質がよくなってからはスマホのほうが多くなったかな。かつては、あそこに行って写真を撮りたいからデジカメを持っていこうというかんじで、“写真を撮ろう”と思って写真を撮っていたというか。だから、そうでないときはデジカメを持っていなかったりして、あ、写真撮れないな、みたいなこともあって。逆に今は、ふと思い立ったときにスマホで簡単にキレイに撮れるから、日常の記録みたい気軽に撮っている。
編集長 : 気軽に撮るということは、写真の数もより多くなったわけですね。
香里奈 : そういう意味では、今も写真はたくさん撮ってはいるけど――。デジカメのときって、これ撮りたいっていう目的があって、「よし、撮るぞ!」みたいに気合いを入れて撮っていたから、重みがあったというか。今は「これ、いいじゃん」って思ったら即スマホで撮れるから、写真が身近になったことはいいことだけど。じゃあ、どちらがいいのか、というと考えちゃうよね。
写真で“記録”を残すのはいいけど、ちゃんと“記憶”に残すことも大切だなって、年々さらに思うようになった。レンズ越しの景色だけじゃなくて、自分の目に焼き付けるってことが。最近は、写真も残したいけど、撮影する時間よりも、ちゃんと景色を目で見る時間を大事にしたいなと思ってる。
編集長 : それは、なんですかね。心の余裕が生まれたんですかね?
香里奈 : いやなんか・・・33歳になって、まだ人生長いんだけど(笑)、以前に比べれば短くなっているわけでしょ。これからの人生で、あと何回これを見ることができるんだろうとか、あと何回ぐらい両親と一緒にこの場所に来れるんだろう…とか考えると、“ああ、ちゃんと感じておこう”って思ったんだよね。20代のころは、いつでも、どこへでも、何度でも行けるって思っていたけど、現実的になってきた(笑)。
連載vol.1 香里奈撮影のオフショットから
連載1回目の文章の中に――
(撮った写真を見返すと)
「そこにカメラを向けた理由」が
ちゃんとあって、それはまるで、
自分の心を映す鏡みたいだな、って思ったんだ。
という彼女の言葉を見つけました。
写真が語りかけてくること。被写体と向き合ったときの自分、自分を取り巻いていた空気、音、匂い、そこからさらに広がる回想。
それは、写真を撮ることで完結するのではなく、その瞬間をきちんと“感じたか”で奥行きが出てくるんですね。
そんなふうに、写真を撮ることとの新しい距離感を見つけた香里奈さん。次回からは、連載企画でかつて訪ねた場所、見たものをたどりながら、“今”の香里奈を語っていきます。