1983年公開の伝説的映画『竜二』が、43年の時を経て『RYUJI 竜二』として新たによみがえる。主人公・竜二を演じる柳楽優弥さんと、竜二を慕う舎弟・直を演じる萩原利久さんは、本作を単なるアウトロー映画ではなく、「時代の変化のなかでもがく人間の物語」と語る。オリジナルへの敬意を抱きながらも、目指したのは“再現”ではなく“再創造”。撮影を通じて自然と築かれた兄弟のような絆、現場で感じた互いの魅力、そして今この時代だからこそ描く意味とは。伝説の名作に挑んだふたりに話を聞いた。
現代にも通じる普遍的な主人公像

——おふたりの視点から見て、竜二はどんな人物だと思いましたか?
柳楽優弥さん(以下、敬称略) 表面的にはすごく強い男に見えるかもしれません。暴力的な世界にいて、兄弟分がいて、家族がいて、一見すると自分を貫いている人に見える。でも実際は、人に合わせてしまう部分があるんじゃないかなと思います。兄弟分や家族など、自分よりも他者を優先して考えてしまう。もちろん、それがエゴなのかもしれないですけど。
それに、竜二は時代の変化に対する戸惑いのようなものも抱えている気がするんです。今の僕たちも、AIの登場だったり社会の変化だったりに対して、「自分はちゃんとついていけているのか」と感じることがあるじゃないですか。竜二も同じように、自分のいる世界の変化のなかで葛藤している。
だから裏社会を舞台にした作品ではあるんですけど、本質的にはすごく普遍的な悩みを描いた作品なんだと思います。竜二はまさに“悩める男”で、とても人間らしい人物です。
——裏社会の人間だからといって特別な悩みを抱えているわけではなくて、感じていること自体は私たちも共感できる。
柳楽 そうですね。時代が変わっていくなかで、自分はその歪みのなかにいる。ついていけていない気もするし、でも現実と理想の間でもがいている。置かれている環境は違っても、その感覚には共感できる部分がありました。だからこそ、自分ともどこか通じるものを感じるキャラクターでした。
萩原利久さん(以下、敬称略) 僕も、竜二という人物についていろいろ考えたんですけど、今のお話を聞いてすごく納得しました。
竜二は、その時代やその世界の男を象徴している存在でもあると思うんです。でも同時に、実は誰よりも現代人っぽい側面も持っている気がするんですよね。当事者だからこそ、これまで当たり前だった価値観に違和感を抱く。しかも、その当たり前を変えるというのは本当に大変なことです。大きなエネルギーも決断も必要になる。
そんななかで、自分の違和感や信念を誰かに押し付けるのではなく、自分自身で引き受けて行動しようとする。その姿勢はすごく強いし、人としてカッコいいなと思いました。
たとえば、違う時代を生きる竜二も見てみたいと思うくらい、現代の価値観から見ても共感できる部分が多いんです。もちろん時代背景は違いますが、「何かがおかしい」と感じながらも、自分で責任を持って変えようとする姿勢だったり、自分の選択から逃げないところだったり。そういう部分には今の時代を生きる人もシンパシーを感じると思います。
竜二という人物について考えれば考えるほど、この作品を今届ける意味が見えてくる。観客の皆さんがどう受け取るのか、僕自身もすごく楽しみです。


——演じた役柄について、特に魅力的だと感じた部分や、演じるうえで大事にしていたことを教えてください。
柳楽 いろんな取材を受けながら話していると、竜二ってすごく“映画的な主人公”なんだなとも感じていて。今日利久くんと話していて、最終的にたどり着いたのが「感謝と礼儀」だったんです。すごくシンプルな答えなんですけど、もしかしたらこの作品は一周回ってそこに行き着く物語なのかもしれないなって。それに気付いたときに、すごく深い映画なんだなと改めて思いました。でも正直、撮影中からそこまで言語化できていたわけではないんです(笑)。
萩原 撮影中は目の前のシーンに必死でしたね(笑)。
柳楽 むしろ作品を撮り終えて、こうして取材で話すなかで自分たちの理解が深まっていく感覚がある。言葉にしなければいけないからこそ、作品から何を感じていたのかが後から整理されていくというか。そういう意味でも、すごく考えさせられる作品でした。
萩原 僕が演じた舎弟の直に関しては、役割がすごく明確だった気がしています。特に竜二とひろしと3人でいるシーンでは、直がどういるかで空気感や温度感が変わるんです。直は思ったことを素直に口にするし、もともとのテンションも高い人物なので、その場の色を作る一角を担っている。だから普段のお芝居以上に、エネルギーのコントロールは意識していました。体感でいうと、1.5倍くらいいつもより大きく振ることを心掛けていました。
——直という人物を支える軸はどこにあったのでしょうか。
萩原 竜二さんへの忠誠心です。直にとっては、竜二さんという存在が絶対なんです。そこさえブレなければ、直は直でいられると思っていました。逆にそこが弱くなってしまうと、ただ勢いがあるだけの人物になってしまう。だから竜二さんがその場にいるかどうかは関係なく、常に頭のなかには竜二さんという存在を置いていました。
——伝説と称されるオリジナル版はご覧になりましたか? また、リメイクにあたって意識したことはありますか?
萩原 実は今回の作品のクランクイン前に、オリジナル版を観るか観ないかですごく悩みました。事前に資料としていただいていたんですが、マネージャーさんともかなり話し合ったんです。
リメイク作品ではあるけれど、単純にコピーするわけではない。そう考えたときに、今回は脚本と現場から受け取ったものを信じて、自分なりに挑戦してみたいと思いました。なので、作品が公開されて、お客さんのもとに届いた後、最後にオリジナルを観ようと思っています。
柳楽 いいアプローチだよね。この作品は、そもそも再現できる映画ではないと思うんです。世界観やルールが明確にあって、それをいろんな形で再現できるような作品とは少し違う。
この作品には、80年代に生まれた作品だからこその運命的な空気や、奇跡的な雰囲気みたいなものがありますよね。だから、そこを完璧に再現しようとしすぎると、逆に違うものになってしまう気がしていました。
——リスペクトはありつつも、再現にこだわりすぎなかった。
柳楽 もし今この作品をリメイクするのであれば、「なぜ今やるのか」という理由が必要だと思ったんです。作品は、その時代だからこそ生まれるものでもあるじゃないですか。偶然や時代性、当時のキャストや社会の空気も含めて成立している。
だから今回は、オリジナルを追いかけることよりも、「2020年代の今、この作品を作る意味は何か」を探したかったんです。その意味で、今回は今回の強みを見つけられたらいいなというスタンスで撮影に臨んでいました。

——作中では血のつながりを超えた家族のような関係性が描かれていましたが、おふたり自身はどのようにその関係性を築いていったのでしょうか?
柳楽 年齢的には僕のほうが少し歳上ということもあって、撮影が始まってからは自然とあの3人のバランスになっていった印象があります。役柄としてもそうですけど、特別に何かを作ろうとしたというよりは、現場で自然にあの関係性や空気感に馴染んでいった感覚がありました。
萩原 僕もそう思います。「どのタイミングで関係性ができたのか」と聞かれると、実は明確な瞬間が思い浮かばないんです。現場で一緒に過ごしながら、本当に自然に作られていった関係でした。
——現場では、役柄のように兄貴分として引っ張ったり、逆に頼ったりするような場面はありましたか?
柳楽 僕が誰かを引っ張ろうという意識はあまりなかったです。ただ、監督を含めてシーンについて話し合うべき空気があれば、それは大事にしたいと思っていましたし、それぞれが主体性を持って自由に取り組める現場がいいなというスタンスではいました。
萩原 でも僕自身は、柳楽さんについていってましたよ!(笑) 作中を超えて、柳楽さんは人としても俳優としても大先輩ですし、本当に学ぶことが多かった。尊敬できる方なので、一緒に現場にいるだけでも刺激がありました。柳楽さんが役とどう向き合うのか、現場でどう立っているのかを間近で見られるので、「なんとか食らいついていきたい」という一心でした。そういう意味では、本当にナチュラルに“舎弟”のように、一生懸命追いかけていましたね(笑)。

——共演をとおして知ったお互いの印象や、新たに発見した一面はありましたか?
柳楽 利久くんはもともと「頭がいいんだろうな」という印象がありました。でもそれが理屈っぽさになるわけではなくて、俳優としてすごく魅力的な形で表れている。実際に現場に入ってみても、作品についてしっかり考えているし、映画の話や役について話していると、どんどん関係が深まっていくタイプの人だなと感じました。
本当に人柄がステキです。もちろん俳優としても素晴らしいんですけど、その魅力の根底には人柄がある気がしていて。だから今回共演できて最高でしたし、これから30代になっていく姿も、ファン視点で見ちゃうな!(笑)
萩原 うれしいです! 柳楽さんはご自身では「何もしていない」とおっしゃるんですが、まずこうしてフラットにコミュニケーションを取ってくださること自体が、後輩世代からすると本当にありがたいんです。
お芝居の話をするときも、先輩・後輩というより、ひとりの俳優として同じ目線で向き合ってくださる。だから現場でも変に構えずに、自分が思ったことや感じたことを自然に話せるんです。
——柳楽さんの空気づくりも印象的だったと。
萩原 そうですね。いろんな世代の役者が集まる現場って、どう距離を取ればいいのか悩むこともあるんですが、柳楽さんがいてくださると自然とみんなが作品に集中できる空気になる。僕はそれがすごくステキだなと思っていました。
監督をはじめとしたチーム全体で作っている現場ではありますけど、そういう空気づくりの部分で柳楽さんに引っ張っていただいたことは本当に大きかったです。現場を重ねるたびに、「なんてステキな人なんだろう」と感じていました。
【10月30日より全国公開中】映画『RYUJI 竜二』

出演/柳楽優弥
川栄李奈 萩原利久 JUNON(BE:FIRST)
田中美里 RYUKI(MAZZEL) 千原ジュニア
三宅健 伊藤英明
原作/金子正次「竜二」
監督/水田伸生
配給/カルチュア・パブリッシャーズ
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柳楽優弥(やぎらゆうや)
1990年3月26日生まれ、東京都出身。映画『誰も知らない』(04)で自身初のオーディションを受けた際、是枝裕和監督に才能を見出され、主役に抜擢。同作で日本人初となる第57回カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を獲得する。近年の出演作として、映画『さかなのこ』(22)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(23)、ドラマ「ライオンの隠れ家」(24)、Disney+「ガンニバル」シリーズ(22、25)、Netflix 「九条の大罪」 (26)などがある。映画『九条の大罪』が2027年1月8日に公開予定。
萩原利久(はぎわらりく)
1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。2008年にデビュー。ドラマ「美しい彼」(21/MBS)で注目を浴び、以降、映画・ドラマに多数出演。近年の主な出演作に、映画『劇場版美しい彼〜eternal〜』、『ミステリと言う勿れ』(ともに23)、『朽ちないサクラ』(24)、『キングダム』シリーズ、『世界征服やめた』、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(ともに25)、ドラマ「めぐる未来」(24)、「リラの花咲くけものみち」(25)、「ダウンタイム」(26)など。現在、毎週月曜21時〜放送中のドラマ「救命病棟24時」に出演している。
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