本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
ついにやる気がそこをついた女

先日新ネタを作るライブがあった。
「あった」というか、4月頃に自分からやりたいと申し出て開催させてもらったのだ。
去年もそのようなライブを二回ほどやらせていただき、確か2本ずつ新ネタを作った。(これは芸人としてありえないことなのだが)わたしは基本年間で2本しかネタを作らない。
なのでかなり偉業であった。
そしてその計4本とも賞レースの決勝やテレビで披露することになったのだから、今年はもっと頑張るぞ、と意気込んだのだ。
しかし蓋を開けてみたらまるでネタが浮かんでこないのだ。
ライブをやる目的や、ここからなりたい自分を何度も思い浮かべては机に向かうが頭が重い。
お客さんには変なものを見せれないと、同期の芸人と会ってネタを見てもらったりするがまるでやる気が出ない。梅雨のせいだろうか。
ネタを書くのは簡単ではないが、スラスラかけるときが稀にある。そのときのネタはやはりとても面白い。もう一生あの瞬間はこない気がして一日中暗くなった。
そんな折、SNSを通して女子中学生からこんな質問をもらった。
「学校の勉強を頑張れません。やる気スイッチをどうやって押してますか?」といったようなものだった。
25も下の女の子にわたしは得意気に「古文や数学、やる意味なんて考えたらやれないよね〜」なんて答えてる途中で中学の3年間やったバドミントンのことを思い出した。
週に六日、外を走り、シャトルを追い続けた。正直途中飽きていた。多感な時期だったしめちゃくちゃ辞めたかった。ただ仲間は好きだったし、願書のことなど考えると辞める勇気がなかった。今のこの体が動かない感じ、そうだ、日曜日の校庭を20周してる途中によく似てる。小雨の中、前髪を濡らしながらよく走ったなあと懐かしかった。やる気スイッチなんて皆無のまま私は都大会ベスト8まで辿り着いた。顧問の目標は全国大会だったのでまるで届いてはないが、40を手前にしていまだにあの時の戦歴は自慢であるし、事務所のプロフィールにかけるのはありがたい。
ネタを書こうと立ち上がりパソコンと向き合う。やっぱりやる気は出ないが、遠いどこかの自分にいつか感謝されることを想像すると少し体が軽くなった。
もちろんこのネタがなにになるのかは今はわからない。
そしてライブが終わると私は羽が生えたかのようにビールを飲み干し財布の中のお金を全て使い体調不良で丸一日寝込み、再来週のライブの新ネタのことを考える(4月の時点でこんなことになると思わず、もう一本ライブを入れてしまっていたのだ)。
もちろん何も思い浮かばないが、絶望はしていない。何になるかわからないものも、なにかになるかもしれないという可能性がわたしのやる気スイッチを押してくれているのだと思う。
最後に
梅雨の時期とかけまして
古いパソコンと解きます
その心はどちらも
立ち上がるまでに時間がかかるでしょう。

