本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】
地獄に落ちたくなる女

ネットフリックスで今話題の「地獄に落ちるわよ」。1話みたらそれはそれは面白くて一気見してしまった。
強烈なキャラクターで世を風靡した占い師の生涯を元にフィクションを交えながら描かれたもので、私たちが当時テレビで観たり、週刊誌で読んだ本人像としっかりリンクさせながら進んでいくストーリーだ。
読んでもらえそうな分量の範囲で、いくつか好きだった部分を上げていきたい。
1:役者陣がすごい
特に主演は本人を知ってる分「うわそっくり」と思う部分と、「実在する人物をもとに描かれたあくまでフィクション」として楽しめる塩梅が絶妙なのである。
セリフではなく、目で悪女を演じるシーンが多くて毎回美しかった。
観終わった後にネットで当時の本人との体型の違いや特殊メイクで見せる印象年齢についていろいろ言われていると聞いて驚いた。個人的に全く気にならなったが、炎上も見越しての仕掛けなのかと思うほど素晴らしかった。
2:とにかく波乱万丈すぎる
幼少期の貧しく苦労した経験や、男性に騙され身も心もボロボロになる様子は意外性もあり、悪女とわかっていても嫌いになりきれない構成になっている。
ああ、彼女なりの理由があるんだななんて納得させられてしまうのだ。
3:悪女の優しさに既視感がある
どうして、いい人に優しくされるより、悪女がちょっと気を遣ってくれるだけで私たちはグッときてしまうんだろう。劇中で悪女がお茶を出してくれたりご飯を出してくれるだけで「なんだいい人じゃん」と簡単に信用してしまった。日常にはあんなわかりやすい悪役はいないのだが、ちょっときつめの先輩や上司が評価してくれるとめちゃくちゃ嬉しくて、気づくと嫌われることが極端に怖くなって、好かれにいこうとしてしまう、ようなことはある。
それでいて悪女は話を盛るのも上手いから、どこまで本当かもわからない話で周りを翻弄する力もすごい。
4:最後の最後はよくは描かれていない
これはあくまでフィクションだが、決して肯定はされていない最後の描かれ方が心地いいと思った。
富や家族は残ったがおそらく穏やかではないのだろうという印象だった。悪事に対しての代償はちゃんとあると納得させてくれて見やすかった。
彼女の底なし沼のような欲望に同じ人間として全く共感しないと言ったら嘘になるのかもしれない。
あの商売の才能に憧れるのは確かである。なぜ自分はこんなに貧相な思考なんだとげんなりする瞬間もある。占いにいき、「何か新しい商売を始めなさい」と言われ、ニヒルに笑い、まだ誰も手を出してないような新しいビジネスをあれよあれよと成功させる人生があったんじゃないか、なんて資金もコネもないのに漠然と考える。が、それはネットフリックスのなかだけのお話。
私たちはただ普通に生き、働いた分だけの対価をもらう。それは驚くほど安いこともある。それでも人に優しく、お茶を出そうがご飯を出そうがさして驚かれないような人柄であることが賢明な生き方なんだと、ホッとさせられる感覚を現実に持ち帰らせてくれた。そんなフィクションだった。
最後に
ついつい人が頼ってしまうものとかけまして
普段からいい人と解きます
その心はどちらも占い(裏ない)でしょう。
紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』などがある。
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