さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
第48回「スプリング・ハズ・カム」

普段は(皆さんご存知)電動アシスト付きママチャリを駆使して、半径500メートルくらいの生活圏から全く出ない私。
しかし、昨年から、山手線に乗って少し遠方での鍼治療(めちゃくちゃ効く)に週に1〜2回のペースで通っている。
毎日の通勤・通学で満員電車に乗って大変な思いをしている方たちには誠に申し訳ないのだが、18歳からL.A.に移り住んで帰国後に作詞家になった私は、大人になってから電車を定期的に利用した経験がなく、高校生のとき以来のこの山手線移動がものすごく楽しい。
比較的空いている時間帯なのでいつも座れるし、私の住む街から鍼の治療院までに、私の当時の通学区間が含まれているので、すっかり忘れたと思っていた高校時代の懐かしい思い出が蘇る蘇る、蘇りまくる。
昔はみんな電車の中で漫画雑誌や小説や新聞を読んでいたものだが、最近は紙媒体のものを読んでいる人は滅多にいない。私以外の乗客はほぼほぼスマホを見ている。だからこそ、私は思う存分車窓からの景色を見たり、遠慮なく人間観察をさせてもらっている(職業病)。
山手線から見える東京の街は、この数十年で著しい変化を遂げた。驚きとともに、妙に感傷的な気持ちになる。
また、普段の私の生活圏ではあまり出会えない老若男女いろんな人が乗っていて、実に興味深い。そういう人たちのファッションを見たり、職業を推測したりするのもやめられない。
にしても、優先席に座っているまだ若くて元気そうな人たちがみんな、寝たり寝たふりをしていることにモヤッ。彼らは目的の駅に着いた途端、パチリと目を開け、キビキビと電車を降りていく。なんだかなあ。
最近私が作詞した曲の中にやたらと電車や改札やホームが出てくるのは間違いなくこの定期的な電車利用が反映されている。
さて、10年くらい前に「Spring has come」というタイトルの歌詞を書いた。
同じ電車で同じ学校に通う男子に片思いをしている女子が、卒業直前に彼との淡い思い出を振り返りながら、もうすぐ会えなくなるのが悲しい、大嫌いな制服だったのにこの制服をもうすぐ着なくなると思うとそれも悲しい、こんな気持ちにさせるなんて、春はなんで意地悪なんだろう…みたいな歌詞(興味のある方はぜひ聴いてください)。
どの面をぶら下げて、こんなキュンキュンな歌詞を書いたのだろうと自分でも思うが、寒さが和らいだここ最近、電車に乗っていると常にこの曲が勝手に脳内再生される。なんならイヤホンをつけて実際に聴いたりもする。普段自分の作詞曲(しかも何年も前に書いた)を自ら聴くことなど皆無なのに。わざわざ電車で聴くなんて初めての経験。
そして、昨日、相変わらず電車の中でこの曲を聴いていてふと気づいてしまった。
高校生の頃から、恋愛なんて成就したら必ず終わるものだと思っていた節のある私。今振り返ると、遠い昔から片思いが大好物だったんだなあ、と。
両思いより片思い。揺るがない特技、片思い。
電車に乗って自分が作詞した曲を聴きながら学生時代の自分の恋愛に思いを馳せているなんて、ものすごく恥ずかしくて人にいえない(書いてるけど)。
これはもう絶対に春のせい。やはり春は…意地悪なのである。
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小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、中島美嘉、小泉今日子など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。

