同期として同じ時代を走り抜け、それぞれの場所で第一線に立ち続けてきた西野亮廣さんとMEGUMIさん。3月27日(金)公開の『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』では、久しぶりのタッグを組んでいる。タレント、芸人、そしてクリエイターとして――肩書きを超えて「作ること」に向き合い続けてきたからふたりだからこそ、互いの背中が見えている。同期のふたりによる、率直で熱のこもった対談をお届け。
“待つ”ことを肯定する最新作

西野亮廣さん(以下・敬称略) 今回は、ルビッチと新たな相棒になる異世界ネコのモフというキャラクターの掛け合いが結構多かったんですよね。前作よりもコメディタッチで、ちょっとした間とかニュアンスで成立するやり取りが多くて。だから、まず「ツッコミがうまい人じゃないと成立しない」というのが大前提でした。それに加えて、母性というか、保護者感がある人が絶対いいなと思ったときに、もう「MEGUMIちゃんしかいないな」と(笑)。それで「お願いします」と直接連絡したよね。
MEGUMIさん(以下・敬称略) 嬉しかったですよ。もともと絵本も持っていましたし、子どもに読み聞かせもしていたし。うちの子どもが西野くんの大ファンで、前作も観ていたので率直に「やりたいな」と思いましたね。
西野 でも、どれくらい出るかって、ちゃんと説明してなかったよね。
MEGUMI そうなの(笑)。最初は、いわゆるカメオ出演みたいな感じで、「(脚本で)1ページくらい出るのかな?」って思ってたんですよ。本を読んだら……めっちゃ出演シーンあるじゃん!って(笑)。
西野 さっき気づいたんですよね、そういえば伝えてなかったなって(笑)。
MEGUMI でも結果的に、すごく嬉しかったです。おっしゃってくれた母性感だったり、ずっとバラエティでやってきたツッコミだったり、自分のアイデンティティが発揮しやすい役をもらえたなって感じました。それに、西野くんとは付き合いが長いじゃないですか。デビュー当時から一緒なので、こうやってまた再会できたのも感慨深かったですね。久しぶりにご一緒できるうえに、この作品のテーマがすごくいいなと思ったんです。
西野 この作品は、別れ、そして“待って再会する”という物語で、掘り下げれば掘り下げるほど、僕の個人的な感情に行き着くんです。でも同時に、“待つ”という行為は、多くの人の人生のテーマでもあるなと思ったんです。今、誰かを待っている人、あるいは誰かを待たせている人へのエールになればいいなと思って、この作品を作りました。
MEGUMI “待つ”って、人が一番苦手なことかもしれないですよね。不安になるし、投げ出したくもなる。でも、その先に美しさや結果がある。それを、西野くん自身の経験とともに、アニメという形で見せてくれたことは、私にとっても大きな学びでした。
そして、親子で観られる作品というのも素敵だと思います。この作品を観た子どもはすぐには気づかないかもしれないけど、大人になったときに「待つってこういうことだったな」って、どこかで思い出してくれたらいい。親としても、「待つ」という選択を肯定してもらえたような気持ちになるし、きっといろんな世代に“しみる”作品になっていると思います。
信頼関係から生まれたアドリブシーン

MEGUMI モフとルビッチのやりとりは、実はアドリブも多かったんです。
西野 絵を作りながら、やっぱり声を当ててみないと分からないところがあって、「ここはお願いします」というシーンが何箇所かありました。たとえばガーッと走っているときに何を叫ぶかは、その場のノリでしかない部分もある。監督も僕も、正直、モフが走ってるときに何を叫んだら一番面白いのか、分かってなかったので。
MEGUMI 録りながら、当たりを探る感じでしたよね。
西野 そうそう。で、結局分かったのが、めちゃくちゃ慌てて走ってるときほど、行間を埋めるくらい喋った方が面白いっていう(笑)。「ぎゃー!」とかじゃなくて、「めっちゃ喋ってんな」みたいな、状況を解説してるくらいが、結果的に一番気持ちよかった。
MEGUMI 前作では、こういう作り方はあんまりしてなかったんだよね。
西野 そう。これは、芸人さんとかバラエティ畑の人が得意な領域なんだと思います。正直、「このシーン面白くしてもらっていいですか?」って、めちゃくちゃ乱暴な発注じゃないですか(笑)。それを成立させられるかどうかは、人による。用意されたセリフを正確に再現するプロもいれば、もう一歩踏み込んでクリエイティブに参加してもらう人もいる。今回は、後者の比重がかなり大きかったと思います。
MEGUMI 確かに、「ここどうする?」って、ちょっと考える時間もあったよね。
西野 あった。ツッコミって本当に難しいんですよ。やったことない人がやると、どうしても上滑りしちゃう。「なんでだよ!」って一言でも、演技だと成立しにくい。スポーツをやってない人が、いきなりユニフォーム着ても似合わないのと同じで。こればっかりは経験だと思いますし、MEGUMIちゃんはすごくマッチしてくれました。
MEGUMI 走るシーンは、2、3テイクやりましたよね。正直、めちゃくちゃ叫んでフラフラ(笑)。ガッて集中して、録ったことを覚えています。
製作総指揮・声優キャストとしての目線で

西野 キャストとしての目線で、僕ってどう見えてましたか?
MEGUMI すごく明確ですよね。原作者でもあり企画者でもあるから、当然ビジョンははっきりしているんだけど、「こうしろ」という絶対的な決めつけはない。「MEGUMIちゃんのやり取りでやってください」っていう軸はありつつ、「こういうのも良くないですか?」って、ちゃんと見えているうえで遊ばせてくれる。そのバランスが本当に絶妙ですごくやりやすかったです。
西野 それはアドリブをお願いした部分も多かったから。
MEGUMI 私自身アドリブは大好きなんですけど、実はすごく難しい。自己満足になってもダメだし、その場だけ盛り上がってもダメ。今回は、西野くんと私がずっとバラエティをやってきたからこそ作れた空気感やアドリブだったと思います。しかも、「ここアドリブでいきましょう」って最初から決まっていたわけじゃなくて、その日に「やってみようか」「おもろいね」って決まる感じ。それって、アニメーション作品だと結構勇気がいる判断だと思うんですよ。
西野 バラエティ感が強くなりすぎるリスクもありますしね。
MEGUMI そうそう。これは西野くんのアイデンティティだからこそできるけど、やりすぎたらどうなんだろう、って迷いも絶対あったと思う。でも、そこで「やろう!」って決断する、その意思決定のクイックさと潔さが、カッコいいなって思いました。
西野 製作総指揮としての目線で言うと、MEGUMIちゃんは本当にバランス感覚が抜群なんです。収録の順番的に、ルビッチの声はもう先に録り終わっていて、そこはもう動かせない。その状態で「このアクションに声を当ててください」っていう、かなり難しい状況だったんですよね。「このボールをどうにかゴールに入れてください」みたいな(笑)。でも、そこで成立させられるのが、MEGUMIちゃんのすごさで。たとえば「がっかりした」っていうセリフがあるんですけど、あれって、昔から知ってる人に言われたら一番刺さる言葉じゃないですか。「グサッと刺さる言い方でお願いします」って言ったら、本当にグサッとくる言い方をしてくれた。
MEGUMI&西野 (笑)。
西野 モフって、バラエティ的な顔もあれば、母の顔もあって、厳しいことも言う。その切り替えを、「ここください」って言うと、パンパンパンって出してくれる。1年目の頃からバラエティがうまかったし、ドンとしてるし、やっぱりうまいなと思いました。
クリエイター・プロデューサーとして活躍する同志

MEGUMI 同期だからこそ、先生の活躍ぶりは見てますよ。
西野 こちらこそですよ! 自分もちまちまと何かを作ったりはしているので、物作りの大変さは分かるんです。映画を一本作るだけでも、裏ではお金を集めなきゃいけないし、数字で結果を出さなきゃいけない。タレントだけやっていると、視聴率が悪くても「誰のせいか分からない」で済む部分もあるけど、指揮を取る立場になると、結果が振るわなかったときに全部自分に返ってくる。その立場でずっとやり続けて、しかも結果を出しているのは、本当にスゴいと思います。
MEGUMI 嬉しい! ありがとうございます。
西野 すごく覚えてることがあって、昔『はねトび(はねるのトびら)』にゲストで来てくれたときに、裏でフリーペーパーを作ってるって聞いて、「儲からないのに、そんな面倒なことやってるの?」って思ったことがあったんです。でもきっとそこからスタートして、企画を立てて、映画を作って、バラエティも作って……「こんな人、いたっけ?」って思うくらい。どこで、どう化けたのか分からないくらい(笑)。
MEGUMI (笑)。結局、ずっとやり続けてたんですよね。小さい作品でも、作ること自体が好きで、積み重ねてきたものが、やっと人の目に届いた。それだけなんだと思います。
西野 本当にスゴいと思う!
MEGUMI 私は、西野くんが傷ついてきたのを知ってるから。芸人のなかで「クリエイターとしてやる」って人がほとんどいない時代に、それをやるって、芸人だからこそ外野からいろいろ言われやすいし、「なんやお前」って言われたら、また笑いで返さなきゃいけない。それでもやり続けて、今はこんな大きな作品を作って、ベルリン国際映画祭にも行って、たくさんの人に影響を与えている。
西野くんを見て、「自分もやってみよう」って動き出した芸人さんもたくさんいるし、パイオニアだと思います。メインの仕事をやりながら、どうしても他のこともやりたくなる衝動が止まらなかった、っていう意味では、ちょっと似てるのかもしれないですね。
西野 確かに。
MEGUMI だから私は、常にチラチラ見てます(笑)。励みになるし、「頑張ってんな」って思える存在。そんな人、なかなかいないから、人生のなかでかけがえのない人になってますね。
西野 嬉しいな。ありがとうございます。
MEGUMI 今回、指揮者として現場に立っている姿を初めて見て、すごく柔らかく、みんなを包み込みながら引っ張っているのが印象的でした。傷ついてきたのに、それでも走り続けている。その姿を見てると、お母さんとしては……。
MEGUMI&西野 (笑)。
MEGUMI 「ちゃんと食べてる?」って言いたくなるくらい心配だけど、でも本当に、偉いなって思います。
ものづくりにおける次への一手

西野 MEGUMIちゃんが今考えていることやこれから挑戦したいことが聞きたい!
MEGUMI この作品についても言えることだけど、“西野くんにしか作れないもの”だよね。私は、自分のアイデンティティを掘り下げて、掘り下げて、掘り下げていくと、宇宙につながると思っていて。めちゃくちゃ個人的なことを、ちゃんと作品に落とし込む。それはポン・ジュノもアルフレッド・ヒッチコックも言っていることだけど。
西野 なるほど。
MEGUMI 私は実写をやっているので、“合作”にすごく意味を感じています。他の国と一緒に作品を作ることって、私にとってはプチ外交みたいな感覚なんですよ。映画祭に行くと、「ここでは絶対戦争は起きないな」と思う。今準備しているのは、日本とスペインの合作です。まだ誰もやっていない組み合わせなので、スペイン人と日本人、それぞれのアイデンティティをミックスした作品を作って、映画祭で“ホームラン”を打ちたい。それが今の大きな目標ですね。
西野 面白い!
MEGUMI 先生はどうなんですか?
西野 実は僕、次は美術館を作ろうと思ってるんです。
MEGUMI 本当すごいよね、止まらないじゃない。
西野 そもそも建物が好きなんですよ。体験する場所が好きで、面白い建物を作りたいし、歩き回れる空間が好き。そう考えると、面白い美術館を作りたいなって。構想はすでにあって、せっかく日本に拠点があるなら、人がすでに流れている場所に一度コンテンツを置いてみたいと思ってるんです。
MEGUMI 人が集まる場所…観光地ってこと?
西野 そう! これまでは強いコンテンツを作って、武道館とか幕張メッセでやる、ってことをしてきましたけど、観光地に自分の拠点を置いたら、何が起きるのかを見てみたい。あとは、ニューヨークと美術館の中に住む二拠点生活をしたい。
MEGUMI 最高じゃん!
西野 自分のやる気に頼るより、環境を変えたほうが面白いものが生まれるんじゃないかなって思っていて。近所にコンビニがないだけでも、考え方って変わるじゃないですか。もし、美術館の中に住んだら、どんな発想になるのか。それを実験してみたいんですよ。
MEGUMI ほんと、ファンタジーですよね。少年のまま大人になった感じがして。昔は学級委員長みたいなイメージだったのに、どんどん解放されて、赤ちゃん返りしてるみたい(笑)。でも、そうやって“やりたい”を信じて生きているのが素晴らしいと思います。
【3月27日公開!】『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』

キャスト/永瀬ゆずな 窪田正孝 / MEGUMI
小芝風花 吉原光夫 土屋アンナ 山寺宏一 ほか
製作総指揮・原作・脚本/西野亮廣
原案/「チックタック 〜約束の時計台〜」にしのあきひろ著(幻冬舎)
監督/廣田裕介
アニメーション制作/STUDIO4℃
配給/東宝 CHIMNEY TOWN
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西野亮廣(にしのあきひろ)
1980年生まれ、兵庫県出身。芸人・童話作家。著書として、絵本に「Dr.インクの星空キネマ」「えんとつ町のプペル」「チックタック ~約束の時計台~」など、小説に「グッド・ コマーシャル」、ビジネス書に「革命のファンファーレ」「新世界」「ゴミ人間」「夢と金」などがあり、全作ベストセラーとなる。2020年に公開の『映画 えんとつ町のプペル』では原作・脚本・製作総指揮を務め、大ヒットを記録、海外でも高く評価される。原作・脚本・製作総指揮を務めたコマ撮り短編映画『ボトルジョージ』(2024)は、米アカデミー賞®︎のショートリスト入りを果たし、世界中の映画賞を数々受賞。 ブロードウェイで、ミュージカル『CHIMNEY TOWN』の制作を進める他、2025年にデンゼル・ワシントン主演の舞台「OTHELLO(オセロ)」の共同プロデューサーを務め、同作はブロードウェイ3週連続1位に輝く。2025年夏には製作費4.5億円のミュージカル「えんとつ町のプペル」を上演し、開幕前に3万席を完売させた。最新著書『北極星 僕たちはどう働くか』が発売したばかり。
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MEGUMI(めぐみ)
1981年9月25日生まれ、岡山県出身。『ひとよ』(19)と『台風家族』(19)で第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。主な出演作は、『余命十年』(22)、『愛にイナズマ』(23)、「東京タワー」(24)、『映画 おいハンサム!!』(24)、『劇場版 それでも俺は、妻としたい』(25)、『蔵のある街』(25)、『港のひかり』(25)など。公開待機作に『名無し』(26)がある。プロデューサーとしても活躍し、Netflixリアリティシリーズ「ラヴ上等」では企画・プロデュースを務め、世界的大ヒットを記録。『FUJIKO』では自身初となる長編映画の企画・プロデュースを手掛ける。
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