令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】
羽があるから羽ばたいてしまう

今年に入り、ふたつの連ドラを最終話まで書き終えました。どちらもまだ決定稿へ向けた改稿作業はありますが、ひと段落です。初稿の執筆がいちばん苦しいので、ちょびっと肩の荷が下りました◎♪♡(^^)ワーイ★★
まだ情報解禁されていないので中身については多くを語れませんが、どちらも昨年春ごろから本格的に企画が始動し、夏ごろから脚本に入り、怒涛の連ドラ2作並走執筆2025下半期てんやわんや、という感じでした。書き始めたときは、年内にどっちも初稿揃えたいなぁ! なんて思ってましたが、さすがに無理でした。でもひとつは1月上旬に、もうひとつも2月中旬に全話初稿を揃えられた。えらい。その最中で映画やさらに先の連ドラの企画・執筆もしていた。こんなに濃密に書いて書いて書いた半年間は初めてだった。とにかく書いた。お疲れさまでした。
ありがたいことに仕事は途切れないのですが、心身ともにズタボロだったのでひとまず羽を伸ばすことにしました。ゆっくりすることを「羽を伸ばす」「羽を休める」って言うのめちゃくちゃかわいいですよね。まるで天使。わたしたちは天使。ありがとうかわいい日本語。天使も疲れると羽が凝ったりするんですかね。この絶望的な首や肩のように。
一週間くらい休む! という心意気でいたのですが、複数の企画を並行していると打ち合わせが入らない一週間はどうやってもつくれず。なんとか3月上旬から中旬にかけて、断続的に5日間お休みをつくれました。パソコンを開かない日々を過ごしたのはかなり久しぶりだった。コロナのときもインフルのときも食中毒のときも2日寝たら熱は下がったのでお家でパソコン開いてた。去年の夏におばあちゃんが亡くなったときも、翌日帰省したけどお通夜まで一日空いたので地元のスタバで仕事してた。ごめんねおばあちゃん。あのとき1話の初稿を書いていたドラマ、最後まで書ききったよ。天国でも配信してくれるよう知り合いの天使に打診しとくね。
半年間で連ドラふたつ並行、プラスα。この期間で書いた脚本を映像になったときの尺に起こして計算したら丸一日ぶんくらいになった。そんなに書いたんだーとも思ったし、こんなに書いたのに一日で見終えちゃう量なんだーとも思った。虚しくなるだけなので無意味な計算は今後控えようと思った。
こんな愚行スケジュール、もう一生しません。脳みそがぐにゃぐにゃになる。怖いのが、やってる間は大丈夫な気がしちゃうことです。大丈夫です!書けます!できます! って言って、ほんとに無理してやれちゃうんだけど、なんでもないふとした瞬間にブワッッッッ(流涙)ッッッ(食欲減退)ッッッッッ(不眠)ッッッッ! ってなりました。無理ですってLINEしよう……休みたいって電話しよう……そう思うだけ思って、思うだけなんですね。そうやってまた働いてしまう。
脚本を書けることがとにかくありがたい。すごく幸せなことです。いま自分が脚本を書ける状態にある以上、書き続けることが関わったすべての人たちへの恩返しだと思う。書けるから書く。書かせてもらえる限り、全力で書く。
信頼しているプロデューサーたちと「絶対当てたいね」という話ができてよかった。「わかる人にわかればいい」「数字より大事なものがある」、それもそうだけど、商業作品をつくる以上は絶対に成果を出したい。関わったすべてのスタッフやキャストに「関わってよかった」と思ってほしい。“数字”は大事だ。『silent』の配信の再生回数記録を更新したいと言ったら冷笑されたことがある。「あの記録は無理ですよ~」と。自身の作品なのである意味褒められたことにもなるが、腹が立った。すべての記録を塗り替える気概でやらなきゃダメだろ! と本気で思っている。冷笑された人との企画は飛んだ。逆に「やりましょ! 記録塗り替えよう!」と言ってくれたスタッフとは順調に企画が進んでいる。そういうことなんだと思う。
羽がある以上、羽ばたき続けるしかない。疲れたからとやめてしまい、一度地上に落っこちたとして。その後、また飛び立てる保証はどこにもない。そういう世界で戦っているという自覚を持ち続けないといけない。
休んでいる気になっているだけで実質休んでいない、という状況になっていた気がします。
2月の下旬、とある作品のシナハンのため泊りがけで遠出したのですが、「これは旅行。つまりお休み」と脳みそに言い聞かせてしまった。シナハンは、お仕事。そんでもって東京に戻ったその日も本打ちがあった。開始時間に間に合うように計算して帰りの新幹線のチケットを取っていたとき、さすがにこういう日は断れよ……と自分でも思って、ブワッッッッッ。シナハンはできる。観光しなければ間に合う。そう思ってしまった。お気づきかもしれないが、前述した「3月上旬から中旬にかけて、断続的に5日間お休みをつくれました」。つまりこれは、週休二日程度休んだという意味である。しっかり守ろう、労働基準法。感覚のバグ。
そんなわけで。昨年から今年にかけてがんばったぶん、今年から来年にかけていろいろと世に出ます。たぶん。たぶん、なのは、この世界では突然企画が消滅する事案が多発するからです。こわいです。企画、ぽんぽん飛びます。それはもう簡単に。あの子たちはいつかどこかで日の目を浴びるのだろうか。一句詠みます。
企画たち 走り出したら 飛ばないで
地に足着けててよ。ぴよぴよ羽ばたかないでよ。いったいどこの天使の仕業なんでしょう。素行の悪い天使がいるようです。羽なんかあるから良くないんだね? そんなもんあるから飛んじゃうんだもんね? お姉さんがその羽もぎって一生飛べない身体にしてやろうか?◎♪♡(^^)コノヤロウ★★
このエッセイ原稿の締切数日前。↑ここまで書いた状態で占いに行った。占い師さんによると、わたしが人間と上手くいかないのは「魂が天使だから」らしい。天使が人間の肉体に入ってしまった状態なんだそう。「ほぉ~ん。へぇ~」と相槌をうちながら、内心は「エッセイで天使の羽をもぎるオチ書いちゃったんだけど!」とソワソワした。
遠い昔はマリアさまの周りをふよふよ飛んでいたんだそう。随分と良いポジションの天使。「マリアさまって赤ちゃん抱っこしてるでしょ。そういう要素を感じるの」と言われた。独身子なしなんですけど………と思いつつふと気が付いた。「あ、元助産師です」。占い師さんがロックオ~ン♪みたいな顔してた。それだ~って。占いおもしろ。「天使とか羽のモチーフの何かを持ってると御守りになるかもよ。全然高いのじゃなくていいの。(着けてるネックレスをいじって)これもね、すっごく安いの。フフフ」とのことで、なんだか信用できた。ミッフィーの仲間に天使ちゃんがいるので、ちっちゃなマスコットを鞄に忍ばせることにした。安物なんですけどね。フフフ。
なんかいろいろ話したけど、ひとまず「羽がボロボロだから自分をもっと労わってね」ってことらしい。なるほど。他人(他天使)の羽をもぎってる場合じゃなさそうだ。
生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」、’24年7月期の連続ドラマ「海のはじまり」全話脚本を担当。

