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MYSELFウェルネス

2024.07.23

プチ・トラウマを“チカラ”に変える。そのための心の持ち方は…

“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。前回に続き、プチ・トラウマのお話。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.18】

誰もが「小さな傷つき体験」を抱えている

島田恭子の自分学

前回の連載では、私たちの誰もがもつ”小さな”傷つき体験を、”プチ・トラウマ”と名付けて解説しました。いわゆるトラウマ、といわれて思い浮かべる、自分の身に起こった衝撃的な出来事や深く心が傷つくような体験とまでいかなくとも、ちょっと陰口を叩かれたことや、きょうだい間の扱いの違いに傷ついたような記憶です。

私たちは先日、1,000人の日本女性を対象に、プチ・トラウマのアンケートを行いました。すると実に過半数:527人(52.7%)の方が、「自分には小さな傷つき体験がある」と明確に意識しておられることが分かりました。

日本人あるあるプチ・トラウマ

その方々に、どんなプチ・トラウマがあったかをお尋ねしました。簡単に分類してみると…

  • 虫や特定の物に対する物理的なもの
  • 外見や性的なもの
  • 天災や死に対する遭遇
  • 子ども時代の家庭での育てられ方
  • 学校での出来事
  • 大人になってからの仕事にまつわるもの
  • パートナーや嫁姑関係で起こったこと

といった感じです。

島田恭子の自分学

そんななか、私たちが注目したのは、これらのプチ・トラウマの影響についてです。一過性のものもあれば、折に触れて何度も思い出し、あとあと尾を引くものまでありました。

一過性であれば、その後何度か思い出すくらいでそのうち忘れていくのでしょうが、多くの方が”プチ”とはいえ、自分の身に起こった危機に、悩み苦しみ、その後少なからず引きずっている様子を報告してくれました。あくまでも、直接に生命を脅かすような危機的状況ではない(≒「プチ」トラウマ)、というカギカッコ付きの定義はあったものの、自己肯定感の低さや、外出しづらくなったなど、その後、全般的な生きづらさに繋がった場合もあるようです。

また特徴的だったのは、生きづらさを抱えながらも、「この経験が役に立った」とか「同じことが起こらないよう予防するようになった」と、前向きなコメントもみられたこと。そのような方々は比較的メンタルが良好であるという特徴も持っていました。

これらの結果は有名な、ある心理学の研究を思い起こさせます。ナチスによる強制収容所での迫害経験をもつユダヤ人女性のなかで、戦後生き延びたその後を追跡し、メンタルの良い人たちに共通しているものは何か、を調べた調査です。それは物質的豊かさでも、体の健康でもなく、

(1)今の自分の現実を、客観的にとらえられるか
(2)「なんとかなる」と物事を楽観的に受け入れられるか
(3)「自分がした経験も、何かの意味がある」と思えるか

という3つの特徴でした。

島田恭子の自分学

ちょっとむずかしい言葉ですが、この3つ

(1)把握可能感(comprehensibility)
(2)処理可能感(manageability)
(3)有意味感(meaningfulness)

を合わせて首尾一貫感覚――SOC (Sense of Coherence)といいます。

私たちが危機や逆境に際し、まわりの助けを借りながらなんとか困難に立ち向かい生き抜いていくときの、ストレス対処力、レジリエンス、といった考え方にも近いものですね。この「困難やその現実を、受け止め、受け入れ、活かしていこう」というステージに行けるかどうかで、プチ・トラウマのその後が変わってくる可能性がありそうです。

この研究を引用するときにいつも思い出すのが、長い間うつ病を患っていたある若い女性です。彼女が長い苦しみのトンネルから抜け、ようやく元気を取り戻したときに、私に言った言葉を今でも覚えています。

「自分が病気だった、ということを今、ようやく客観的に受け止めることができる。そしてこれからも時々凹んだり気落ちするだろうけど、なんとか前に進んで生き延びていける、という根拠のない自信がある。そして将来カウンセラーになって、同じように心の病に苦しむ女性に寄り添う仕事がしたいと思っている」

3つの要素がすべて入った象徴的なコメントでした。

心の痛みを味方につける?外傷後成長という考え方

島田恭子の自分学

こうして考えると、プチ・トラウマの影響は、必ずしも悪いものばかりではなさそうですね。いろいろとつらい経験をした後、もちろん大変な思いやその後の悪影響に苦しみながらも、人間として成長していくことを、心的外傷後成長(PTG:Post-Traumatic Growth)といいます。

前述の、「あの時の経験がその後役に立った」とか「同じことが起こらないよう予防するようになった」というのもそうでしょう。

このような「プチ・トラウマの効用」ともいえる人間的成長には、次の5つがあります。

  • 他者との関係(例:つらい経験をすることで、まわりに思いやりや優しい気持ちを持てるようになった)
  • 新たな可能性(例:つらい経験をすることで、それまで考えもしなかった、新しい道や出会いができた)
  • 人間としての強さ(例:つらい経験をすることで、案外自分は強いんだ、と再認識できた)
  • 精神性(例:つらい経験をすることで、自然の力や人間を超えた力に畏敬の念を抱くようになった)
  • 人生に対する感謝(例:つらい経験をすることで、当たり前の日常や小さなことにも感謝できるようになった)

昔から「災い転じて福となす」ということわざがありますね。

これ以上の悲劇はなさそう、というほどの逆境やつらい出来事であっても、それが何らかの力になるんだ、という考え方には、それに苦しんでいる人々にとって、強い希望の光になり得ます。

誰の人生にも、晴れの日ばかりでなく、雨の日が必ずあります。泣きたくなるような雨も、それが植物にとって、私たちにとって、命の恵みをもたらすのだから、プチ・トラウマをいつか力にして、たくましくしなやかに、人生を進んでいけるといいですよね。

参考文献、引用
「健康の謎を解く: ストレス対処と健康保持のメカニズム」Aaron Antonovsky 2001、有信堂高文社
Oshiro, R., Soejima, T., Kita, S., Benson, K., Kibi, S., Hiraki, K., Kamibeppu, K., & Taku, K.
Reliability and validity of the Japanese version of the Short Form of the Expanded version of the Posttraumatic Growth Inventory (PTGI-X-SF-J): A cross-sectional study. International Journal of Environmental Research and Public Health. 20, 5965, 2023.

島田恭子(しまだきょうこ)
予防医学者・保健学博士。医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。(社)ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/

TEXT=島田恭子

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