“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。今回は、自律神経にまつわるお話。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.15】
今回のテーマ:自律神経を自分で調節する方法
前回は、私たちの体の大切な機能である自律神経について学びました。とくに大事な”緑の神経(腹側迷走神経複合体)”というのがありましたね。
何かが起こったとき。――攻撃的になるのでも、ちーんと殻に閉じこもるのでもない。自分でなんとか心を落ち着け、手の届くサポートを求められる。そんな行動に繋げるための大切な機能です。
私たちが常日頃、がんばったり、リラックスしたりと、適度なバランスをとりながら、まわりと心地よい関係を保ち、豊かな社会生活をするために、この緑の神経の役割は特に重要。この神経が土台となってうまく調節しているからこそ、やる気をみなぎらせる”交感神経”や、ゆったりリラックスに必要な”副交感神経”も、バランスよくうまく働くことが知られています。
こんなスペシャルな神経ですから、ぜひ大切に育ててうまく活用したいですよね。
今回はこの緑の神経がうまく働くように、今日から自分でできる2つのことを、ご紹介します。
1. カラダが喜ぶことをしよう
サイコソマティック(心理身体的)という言葉があります。私たちの心と体は同じ人間のなかにありますから、強く影響を及ぼし合っているんです。それを仲介するものの1つが緑の神経です。
だからこの神経をうまく使って体が喜ぶことをしてあげると、そのままそれが心を喜ばせることにつながります。同時に体にとって喜ぶことをすることが、緑の神経を活性化することにも繋がります。まさに好循環ですね。
最近話題のマインドフルネスや瞑想、ヨガ、はたまたセルフプレジャーなども、たくさんの効用があるといわれていますが、今回は特に、緑の神経を自己調節させることに焦点を充てたエクササイズを1つ、ご紹介します。
- 1. 気持ちよくあお向けになりましょう
- 2. 右手と左手の指を組んで後頭部の後ろに置きます
- 3. 手で頭の重みを心地よく感じましょう
- 4. 頭は動かさず固定して目だけを動かして右を見ます
- 5. 少なくとも60秒くらい見続けましょう。自律神経系が整い始めます
- 6. 目を戻してまっすぐ前を見ます
- 7. 今度は左を同じように見ます
- 8. ため息、あくび、つばを飲み込む、などの反射が起きるまで見続けてみましょう
- 9. 静かに目を戻しまっすぐ前を見て終了です
とてもシンプルな方法ですが、このエクササイズが目の周りにある緑の神経を活性化させているんです。折に触れて行ってみてください。
2. ステキな人と交流しよう
緑の神経を調整するのに実は一番有効なのは、「心身のバランスが取れていて、社会的な交流ができる方と関わること」です。
何かに困ったとき、気の置けない人に寄り添ってもらい、あたたかい安心な気持ちが広がったことはありませんか。あなたにもしそんな方がいらしたら、どうぞその方を大事にしてください。そしてその方とのあたたかな交流を通して、お互い緑の神経をうまく機能させるイメージをお持ちになってください。
今そんな方がいらっしゃらない方はぜひ、これからの出会いやこれまでの交友関係に、そんな基準を入れてみることをお勧めします。
刺激的でワクワクする仲間もいいものですが、心にあたたかい灯を与えてくれる、穏やかで落ち着いた関係は必ずや、私たちの心と体に安寧をもたらしてくれるでしょう。
参考文献
『カラダのためのポリヴェーガル理論 迷走神経から不安・うつ・トラウマ・自閉症を癒すセルフ・エクササイズ』 スタンレー・ローゼンバーグ著 春秋社(2021)
島田恭子(しまだきょうこ)
医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。東京大学大学院でこころの予防医学を学び、保健学博士となる。(社)ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/