なんだか調子が悪い…それはもしかしたら、日々のストレスで体のバランスが崩れているせいかも。そこで役に立つのが、心と体を内側から整える「漢方」。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を「わたし漢方」の水沼未雅さんがナビゲート。
秋に見られる時季特有の不調、秋うつ。暑い夏が終わり、寒い冬へと向かうこの季節は精神の不安定さに悩む方が増えます。
前回の記事では、体質ごとの特徴や漢方によるアプローチのポイントを解説しました。今回は、どのような体質の方にもおすすめしたい“生活習慣の改善”にスポットを当てて解説していきたいと思います。
やはりなんといっても大切な生活習慣の見直し。不規則な生活は体調改善のブレーキになってしまいます。わかっていてもなかなか直せなかったり、自分でも気づかないうちに癖になってしまっているゆらぎの原因がないかどうか、一緒にみていきましょう!
“幸せホルモン”は足りていますか?
秋に不足しやすい“幸せホルモン”であるセロトニン。
セロトニンは、ノルアドレナリンとドーパミンの働きをコントロールして、私たちの心のバランスを保ってくれます。
まず、これを不足させないようにする生活習慣を目指しましょう。
・起床時にカーテンを開けて朝日を浴びる
・朝にウォーキングなどの軽い運動をする
夜ふかしや朝寝坊が続くと、体内時計がうまく働かなくなってしまい、心身ともに不調を抱えやすくなってしまいます。セロトニンの生成には日光の力が不可欠なので、就寝・起床時間をきちんと決めて規則正しい生活を送ることが大切です。
・ストレスを溜め込まない
・リラックスできる時間をつくる
親子やペットとのふれあい、マッサージ、入浴…など、自分に合った「癒やしのアプローチもセロトニンの生成にとても効果的です。慢性的なストレスを感じているという方は、元となるストレスを減らす工夫や環境づくりを心がけていきましょう。
頑張りすぎてしまいがちな方は「気」を消耗しやすい傾向にあります。「気づかないうちに無理をしていないか?」と客観的に自分を見つめ直す時間をゆっくりと取る余裕も大切ですね。
食生活を見直そう
食欲の秋といわれるように、秋は美味しい食べ物が多い季節。
私たちは食事から栄養やエネルギーを得て、身体をつくっています。特に旬の食材は美味しいだけでなく、その時期に自然から与えられる恵みを最も吸収しています。新鮮で栄養価がとても高いため、免疫力やバランスの整った身体をつくるうえでとても相性が良いといえます。
この時季の食材はビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富で、夏に溜まった疲れを回復したり、厳しい冬に向けて身体をつくる働きがあります。果物には身体のほてりを鎮める効果も期待できます。
秋は、冬に向かって気温がだんだんと下がり始め、空気が乾燥してきます。「燥邪」の影響を受けやすい季節なので、呼吸器の機能を担っている五臓のひとつである「肺」が弱りやすくなります。滋養強壮に効く食べ物を積極的に摂るようにしましょう。
おすすめ食材は次の通り。
●気を巡らせる食材
・ジャスミン茶
・カモミール茶
・シソ
・香草 など
●セロトニン(幸せホルモン)の生成を手助けする
・大豆製品
・乳製品
・牛レバーや鶏肉などの肉類
・マグロやカツオなどの魚類
・バナナ
・ごま など
●体に潤いを与える
・れんこん
・梨
・ぶどう など
●季節の食材
・さつまいも
・里芋
・ぶなしめじ
・ごぼう
・長芋 など
逆に、以下のような食習慣がある人は要注意。
●辛いもの、刺激物をよく食べる
食べすぎると体の乾燥をすすめる原因になってしまいます。食べる量には注意しましょう。
●炭水化物を極端に食べない
セロトニンの生成がうまくいかなくなってしまいます。たしかに炭水化物を抜くと、糖質の摂取量が抑えられるのでダイエットには効果的かもしれませんが、エネルギー源である炭水化物を全く食べないというのは長い目で見るとやはり良いとはいえません。栄養バランスの整った食事を心がけましょう。
●食べすぎ・飲みすぎ
食べ物が美味しくてついつい食べてしまう、という側面もありますが、この時季の体は寒い冬に備えて栄養を蓄えようと働きます。丈夫な体をつくることは大切ですが、過剰な摂取は体に悪い影響を与えてしまいます。
秋うつになると、食欲がなくなるケースもありますが、ストレスのせいで過食が目立つという方も多く見られます。肥満は生活習慣病を引き起こす大きな原因になるので、適切な量と栄養バランスを心がけましょう。
冬になると気温が下がるので、寒さによる不調である「寒邪」の影響が出やすくなり、五臓では「腎」が弱りやすくなります。冬の寒さに負けない身体をつくるために、今しっかり立て直しておくことが必要です。
いかがでしたか?
秋に「肺」や「気」が弱りやすいといっても、多くの方は「肺」だけ「気」だけが弱っているというわけではありません。身体のどこかに不調が出るということは、複合的に影響して身体のバランスが崩れているといえます。
秋は食欲の秋だけではなく、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋…など、楽しみが盛りだくさんな季節。身近にある秋を感じて素敵な毎日を過ごせるように、自分に合った養生法を見つけていきましょう。
水沼未雅(みずぬまみか)
わたし漢方創業者・薬剤師。京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
わたし漢方
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