どこか悪いわけではないのに、なんだか調子が悪い…。それは、もしかしたら日々の忙しさやストレスで、体のバランスが崩れているせいかもしれません。そんな忙しい現代女性におすすめしたいのが「漢方」。漢方薬や食材などを使って私たちの心と体を内側から整えることで、未病の段階で大きく力を発揮してくれます。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を、『わたし漢方』監修のもとご紹介します。
急に暖かくなって来ましたが、本格的な春を前に早くも花粉の訪れを感じている方が増えてきているようです。今や日本人の四人に一人が悩んでいるという、花粉症。毎年お悩みの方も多いのではないでしょうか?
とくに今年は飛散時期も早かったために、すでに症状に悩んでいる方も多いようです。ピークは今月と言われていますが、飛散量は例年を上回ると予測されています。
症状を改善していくひとつの手段として用いられることもある“漢方”。今回は、花粉症の症状に対して漢方をどのように取り入れていけば良いのかを解説していきたいと思います。
花粉症とは?
花粉症は、スギやヒノキに代表される植物の花粉が原因となるアレルギー症状のことです。原因となる花粉が⾶ぶ時季にだけ症状が出る季節的なアレルギー症状なのが大きな特徴であり、ダニやハウスダスト、ペットの⽑などを原因とする通年性のアレルギー症状とは区別されています。
花粉症は⽣命に関わる病気というわけではありませんが、症状がひどくなると日常生活に支障をきたすこともあり、大変辛いものです。さらに、⼀度発症すると簡単には治りにくいため、毎年シーズンになると同じように悩まされ続けることになります。
代表的な症状には、以下のようなものがあります。
【⿐】くしゃみ、⿐⽔、⿐づまり、むずむず感 など
【⽬】痒み、涙、充⾎ など
【喉】痒み、痛み、イガイガ巻、咳、痰 など
【その他】⽪膚の痒み、頭重感、熱っぽさ など
症状の現れ⽅や重さは人により異なります。もともと喘息やアトピー体質の⽅は、症状が悪化する場合もあります。さらに、花粉症がきっかけとなり別の不調を引き起こすことも。
たとえば、ひどい⿐づまりのせいで眠りが浅くなってしまうというのは多く見られるケースといえます。ほかにも、肌荒れやストレスの増加に繋がり、精神的にも気持ちが沈んでしまう原因になります。花粉症を一次症状とすると、その先に待っているのがこのような二次症状です。
花粉症ってどうして起こるの?
私たちの体の免疫は花粉を異物と認識すると、ヒスタミンなどの化学物質を分泌し、花粉を体外に出そうと働きます。
⿐⽔やくしゃみ、涙などを出すことで、⼊ってきた花粉を洗い流したり、侵⼊を防御したりして、体を守ろうとしてくれているのです。
どんな対策をすればいい?
症状を軽くするためには、体内に⼊ってくる花粉を少しでも減らす必要があります。
〈例〉
・マスクをして、花粉を吸い込む量を減らす
・眼鏡をして、目の粘膜を刺激する花粉から防御する
・うがいで、鼻から喉に送られる花粉を洗い流す
・空気清浄機の使用
・洗濯物は部屋干し
・花粉が付きやすいウールなどの服を避け、綿や化学繊維の服を着る
・部屋の換気は、窓を小さく開け短時間で、大量の花粉が入らないように
・こまめな掃除 など
とは言うものの、どれだけ努⼒をしていてもすべての花粉を取り除くのは難しく、家族やパートナーが持ち込んでしまうケースもありますよね。
西洋医学の一般的な治療は、抗アレルギー薬やステロイド剤などを用い、辛い症状を緩和するためのものが主です。多くの人がイメージするのは、この方法ではないでしょうか? ほかには、アレルギーの原因となる物質を少しずつ体に入れてアレルギーを起こしにくくする減感作療法なども行われています。
では、漢方医学においては、具体的にどのように花粉症対策をしていくのでしょうか?
漢方でできる対策とは?
1. 症状と体質に合ったアプローチを
さまざまな対策方法がある中で、漢方が手助けしてくれるのは大きく分けてふたつ。
ひとつは、花粉症の諸症状の緩和。
そしてもうひとつは、アレルギーの起きやすい体質そのものの改善。
まずは、症状に対して漢方ができる対策をご紹介していきます。
そこで重要なポイントとなってくるのが、症状の「寒」と「熱」の考え方です。
●「寒」タイプの特徴
寒タイプの症状は、体の冷えや水分代謝の悪さが原因となって起こります。比較的、花粉症の初期に出やすいのが特徴といえます。
・水っぽい透明な鼻水
・お風呂などで体が温まると楽になる鼻づまり
・くしゃみが出やすい
このような症状は、代表的な寒タイプの症状です。
寒タイプのような症状にお悩みの方には、水分代謝の改善と冷えを取り除いてくれる効果のある漢方がおすすめです。
花粉症の漢方薬といえば、「小青竜湯」の名前を聞いたことのある方も多いかもしれませんが、これは水の停滞と冷えに対して効果のあるものなので、寒タイプのような症状に対してよく使われます。
●「熱」タイプの特徴
熱タイプの症状は、体に溜まった余分な熱による炎症が原因となって起こります。時間の経過や初期の花粉症が慢性化するとともに見られがちなのが特徴です。
・ネバつきのある黄色い鼻水
・鼻水の出ない鼻づまり
・頭痛や重さを感じる
・にきびや喉の炎症
このような症状は、代表的な熱タイプの特徴です。
熱タイプのような症状にお悩みの方には、炎症を冷ましてくれる漢方がおすすめです。
原因となる体の不調が違えば出る症状は違います。自分の体質や症状はどちらに当てはまり、どのような対策を行うべきなのか見極めて対策していくことがとても大切です。
症状の改善は花粉症の時季でも日々の生活を営むうえで必要ですが、もうひとつ大切なのが、アレルギーの出やすい体質そのものの改善です。
私たちの体には、花粉などの外敵から身を守るためのバリア機能があります。けれど、普段から元気のない体のバリア機能は上手く働いてはくれません。
たとえば、体のエネルギーである気が不足した気虚体質。疲れや倦怠感が目立ち、胃腸が弱い傾向にある人が多いです。このような体質の方は、まずは睡眠や栄養がしっかりとれる身体づくりを⽬指し、エネルギーを取り戻すことから始めていきます。
花粉症の症状が強い時季は、⾟い症状に合わせた漢⽅薬を選ぶ。症状が落ち着いている時期は、免疫を整えて体を丈夫にするための漢⽅薬を選ぶ。
このように、花粉シーズン以外の時季も活用し、うまく漢方を使い分けることで気になる症状の出にくい体に整えていきます。
2. “薬膳”の考えを取り入れてみよう
私たちは食べ物からも後天的なエネルギーを受け取っています。薬膳、と聞くと「なんだか難しそう…」と思われがちですが、普段使っているような食材でも簡単に取り入れることができます。
前提として、刺激物や甘いもの、味の濃いもの、加工品、脂肪や動物性たんぱく質の取りすぎは血を汚す原因になるため、食べる量を調整するのがおすすめです。炎症や粘膜の充血の悪化につながるので和食・野菜中心の栄養バランスの取れた食生活を意識しましょう。
では、具体的にどのような食材がおすすめなのでしょうか? 気になる症状ごとに紹介していきたいと思います。
●冷え性
長ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、葛 など
●喉の腫れ、咳、黄色い鼻水、熱っぽさ、目の充血
薄荷、菊花、ドクダミ など
●気管支が弱い
銀杏、ゆり根、蓮根 など
ほかにも、手軽に取れる甜茶、じゃばら、プロポリス、ルイボス、ネトル、エルダーフラワーなどを食養生にプラスしてお試しいただくのもおすすめです。
いかがでしたか?
花粉というのは自然現象であり、それ自体をなくすことはできません。だからと言って、「毎年のことだから…」と諦められる人は多くありませんよね。
共通して言える大切なことは、自分に合った対策をすることです。自分の体質と改善していきたい症状を知っていくことがとても大切なのです。
飛散のピークを迎える前に、自分にあったアプローチから花粉症を改善していきましょう。
水沼未雅(みずぬまみか)
京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
わたし漢方
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